体育祭始まり
体育祭、始まります。
毎回こう言った話を書く時に思うのが、自分の中の話のプロパティがようやく来たと思うんですよね。
放送委員の掛け声と共に一年生から入場を始める。 天気は曇り。 肌寒さが体操服の上からでも感じられるほどだ。
『今年から性別が変わった一年生諸君。 下級生だからと上級生は容赦はしてくれないぞ! 自分の力を発揮する事が大事だぞ!』
その実況を聞きながら真面目達は行進をする。
「こんな感じで始まるんだ。 その辺りは一緒って感じだね。」
「それは学校が上がってもほとんど変わらないのは分かりやすくていい。」
そして一年生全員が入場し終わると、今度は二年生が入ってくる。
『今度は二年生が入場! 先輩として一年生を引っ張っていくのもいいけれど、自分達の先輩とも戦うことを忘れないで欲しいぞ!』
煽りのような実況の中で二年生の列が入ってくる。 自分達とほとんど変わらないのにも関わらず、一年だけ先だというだけでも凄い気迫を感じた。
そして最後は三年生が入場する。
『そして今度は三年生! 最後の体育祭は勝って思い出を残したいところではあると思いますが、後輩たちに受け継ぐ伝統をしっかりと見せつけて下さいよ!』
「あ、あの放送部の人、二年生なんだ。」
実況の内容と喋り方からそう推測した真面目は行進を終えるまで待機していた。 その後にグラウンドに用意されている壇上に、2人の生徒が立った後、勢い良く挙手をする。
『宣誓! 僕達』
『私達は』
『どんな姿になろうとスポーツマンシップに則り』
『全身全霊をかけて戦うことを誓います!』
選手宣誓が行われ、その後に体操を行って、最初の競技へと進んでいく。
『今年からのプログラム変更に伴い、最初は学年対抗の100m徒競走に入ります。 選手の皆さんは改めて入場口へと移動してください。』
そうして始まった体育祭。 特に決められた席などは設けられていないため、生徒達は各々好きな場所で応援をすることになる。 中には日陰に入って待機するものもいるが。
「ん、徒競走ってことは・・・」
そう言えばと真面目は入場口近くまで歩いていく。 選手でごちゃ混ぜにはなっているものの、その中でも見慣れた青のセミロングを見つけた。 向こうも真面目に気が付いたようで、小さくガッツポーズをしていた。 「行ってくるよ」と言われているかのようだったので、真面目は手を振り返したのだった。
「というか改めて思ったけど、こう言う行事の時って普通クラスの席とかは確保するものじゃないのかな?」
「どうせ応援するのに近くに行くからって、席の確保を撤廃してくれたんじゃね? その分上級生や他のクラスの連中と話しやすくしてるんだとかさ。」
真面目の独り言に返しが来たので振り返ると隆起がそこにはいた。 その手には既に携帯食料が握られていた。
「お前がこっちに行く姿が見えたんでな。 追いかけてきたぜ。」
「それはいいんだけど、さすがに食べるの早すぎない?」
「これは小腹が空いてるから食ってるだけだよ。 俺は結構いろんな種目に参加予定だからな。 腹が減っては戦は出来ぬってな。」
隆起は確かに運動神経は良さそうだが、逆に身体を壊すまで種目に出ることは無いだろうと真面目の中で信じていた。
「それにしても知り合いでもいたのか?」
「そんなところだよ。 僕が出る競技はもう少し先だし。」
そう言いながら真面目と隆起は入場口から離れて、選手達が見える位置までやってくる。 そろそろ第一レースが始まるところだった。 観戦を始めようとしたその矢先、後ろから男子の声がした。
「今年の体育祭は走る競技を全部午前中にやるみたいだね。」
「全学年対抗リレーって、例年だと終わり際だったんでしょ? なんで今年はお昼前なんだろうね?」
「あれじゃない? ほら、午後から雨が降るから・・・」
「そっか、その配慮か。 なんか、しっかり考えてくれているのが分かるようだね。」
「涼しいしその後に片付けじゃないから、リレーに全力出せるもんね。 絶対勝ってきてよ?」
「誰に向かって言ってるの? 絶対取ってきてやるんだから!」
今回の体育祭の試みと対抗リレーへの熱い想いが真面目達にも伝わってきた。
「こりゃ今年の生徒会長はお手柄なんじゃね?」
「そうかもね。 絶対意図してやってはないだろうけど。」
「そうなのか?」
『それでは徒競走も終わり、続いての競技に入りたいと思います。 続いては玉入れ競技となりますので、玉入れに参加します生徒は入場口までお越しください。』
「あ、僕が出る競技だ。」
「玉入れって室内競技じゃないんだな。」
「体育館でやるとちょっと天井が低いからね。 行ってくるよ。」
「別クラスだから強くは応援できないが、頑張ってこいよ。」
そう言われながら真面目は入場口へと入る。 そして学年で分かれているので、まずは3年生の競技が始まる。
回数もやっており手慣れている感じで、集めては投げて、集めては投げてを繰り返している。 そして既にクラス内での役割分担が出来ているのか、集める係と投げる係はほぼ固定されている。
「あの先輩バスケ部なんだよね。 纏まった玉を綺麗なフォームで投げるから、ほとんど取りこぼしてないよ。」
隣で見ていたクラスメイトが真面目とそうやり取りを交わす。 敵でなかったことを密かに安堵している真面目であった。
そして二年生の部も終わり、いよいよ一年生の部になる。 ここで真面目達のクラスは一度円陣を組んだ。
「作戦は?」
『集めるよりも数投げる!』
「拾う玉は?」
『多くても5つ!』
「背の低い人は?」
『無理せず背の高い人に渡す!』
「勝つことは目的じゃない。」
『団結することが勝利へ導く!』
そう円陣の中でみんなで声を掛け合い、団結力を上げる。 そして競技が始まった。
作戦通りに5つをまとめてから投げ入れることを専念する。 他のクラスは集めてから投げる作戦の場所が多い。 その分真面目達がいるクラスは数は少ないものの確実に玉は入っている。
『さあ一年生の戦いは各クラスが作戦を立てて挑んでおりますが、果たしてどのクラスの作戦がこの戦いを制するのか!?』
実況も盛り上がっているなかで、真面目も貢献に勤しんでいた。 しゃがんではかごにいれて、しゃがんではかごにいれてを真面目も頑張っていた。
『さあホイッスルがここでなって終了! 選手の人達はその場で座ってください!』
そうして玉入れの競技は数を数える時間に変わる。 そして真面目達が最後の2組になるまでになっており
『一年生の部の玉入れ競技を制したのはB組! B組がこの試合を取りました!』
実況席が盛り上がって来たところで次の競技のための準備に入る。 そんな時にふとどこからか視線を感じた真面目だったのだが、そのときは特に気にすることは無かったのだった。




