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部活見学

「本日の午後からは部活動説明会がある。 学校の方針としていかなる理由があれど夏休みまで部活には所属することが義務になっている。 そして部活動説明会が終わってから1週間は部活動見学も出来る。 しっかりと自分の入る部活を決めて入部届けを出すように。」


 朝のHRにて担任の古寺からクラス全体に部活のかかれたパンフレットが配られる。 岬や真面目もそのパンフレットに目を通していた。


「ふんふん。 へぇ、運動部よりも文化部の方が多いんだ。」

「多様性を感じるような部活もあるね。」

「説明する側も大変そうだ。」


 そんな会話も早々に切り上げて、授業へと勤しむ事にした真面目と岬。 しかし何だかんだで部活動は楽しみではあるのだ。 まだパンフレットを全部は見ていないので、休みの時間にはまた見返してみようと思った真面目であった。


 そして昼食を終えた昼休み。 次は部活動説明会と言うことで、事前にパンフレットを見てある程度自分が見に行ってみたい所には目星を付けておいて、その部活の説明に集中するのだとか。


「浅倉さんはやっぱり茶道部に?」

「うん。 部活としてあるのは珍しいから。 一ノ瀬君は?」

「運動部の方はちょっと難しいかな。 そんなに身体能力が高い訳じゃないし。」


 そんなことを言いつつ昼休みが終わったので、そのままの流れで体育館へと足を運ぶ。 新入生も在校生もごった返しになっている中で、真面目と岬は近くの椅子に座るのだった。 そしていよいよ部活動紹介が始まろうとしていた。 そして壇上に1人の男子生徒が立っていた。


「新入生諸君。 本日は部活動紹介に参加していただき感謝している。 私は生徒会長を務めている「高柳 銘(たかやなぎ めい)」だ。 見て分かる通り、見た目は男子だが元は女子である。 複雑な事情の中でも生徒会長を務めている。 そして部活動に対しても独自の工夫が施されている。 今一度部活動紹介にて確認して貰いたい。 では部員の諸君。 君達に任せよう。」


 そうして舞台袖に去っていった生徒会長を見ながら、最初に現れたのは野球部。 しかしその光景は普通ならば「異常」と言われてもおかしくはないと思う。


 何故なら壇上に現れた野球部員は全員女子だったからだ。 とはいえこの世界の今の理を考えれば不思議ではないが、やはり違和感は感じるだろう。 真面目もその光景に驚いたが


「・・・まぁ女子野球だと思えば・・・」


 そんな具合に自分を納得させていた。


 その後の運動部関係は男女が入り交じる部活もあって、どの部活にするかで色々と迷っていた。


 そしてやってきたのは水泳部。 なんとまだ春風があるこの時期に既に男女共に競泳用水着で登場したのだ。


「みんな! これからの夏は俺達と満喫しないか!?」


 部長と思われる女子が堂々とした仁王立ちで説明をしてくる。 自分の姿を凛々しく見せているようだ。


「暑さに負けずに、私達と泳ぎませんか?」


 今度は学校指定の競泳水着の男子が真面目達に語りかけてくる。 こちらもこちらで目を引かれるような姿をしている。


「気になった新入生は是非水泳部へ!」


 そうして水泳部の部員が舞台袖へ帰っていった。 その後の部活も個性的な紹介をしていき、運動部が終わり次は文化部の人達の紹介になる。 するとなにやら時代劇でも始まるような音楽が流れ始める。 会場が困惑に包まれていると、壇上に傘を持って着物を着た女子生徒が現れる。


「皆さん、本日はこのような場所にお集まりいただ、感謝しております。 我々は「日本舞踊クラブ」。 伝統ある日本舞踊に赴きをおくクラブでございます。 興味を持たれた方は是非とも見学を。」


 そう言って着物を着た人物は舞台袖に帰る。 そしてまた似たような格好の人物が出てくる。 今度は和服のようだ。 その人物は袖から焼き物と茶筅と呼ばれる、抹茶を立てる時に使われる道具が出てきた。


「あ、茶道部の説明かな?」


 真面目が思った通り、お茶を作るような素振りでカチャカチャとお碗を鳴らしていた。


 説明をしたのを最後に舞台袖に帰る。 そして吹奏楽部の説明が終わったところで、全ての部活紹介が終了したようで、この後から部活動見学が出来るようだ。


「一ノ瀬君は見てみる場所決まった?」

「そうだねぇ・・・」


 教室に戻ってきて岬にそんな質問をされる。 岬は既に茶道部に行くことを決定している。 真面目自身も茶道には興味があるが、それよりももっと興味を惹かれるものがいくつかあった。


「まずは水泳部から行ってみようかな?」

「一ノ瀬君。 あの人達が着ていた水着。 あれって競技をするために作られた水着だよね? あんなの着て大丈夫?」


 そう言われた真面目は改めてあの格好について思いだし、自分が着るのを想像してみて、少し渋い顔をした。


「・・・確かにちょっと抵抗が・・・ま、まぁ必ず着るとも限らないし部活に入るかどうかは考えてないから・・・」


 そんな言い訳をしても、もし押し切られたらどうしようと不安になる真面目であった。


 そして放課後になり真面目は、パンフレットに書かれていた場所に足を運ぶ。 水泳部の部室はプール近くの更衣室と一体となっている場所だった。


「ここか・・・」


 近くには誰もいない。 一番乗りか既に誰か招き入れているのか。 とにかく意を決してドアをノックする。 しかし聞こえていないのか向こうからの声がかからない。 仕方がないので恐る恐る扉を開ける。


 中を見てみると説明会にはいなかった部員も何人かいて、なにやら揉め事のようになっていた。


「あーもう。 恥ずかしかったですよ部長。 あの格好はさすがに早すぎますって。」

「なにを言うか! 何事も最初が肝心! あの姿は真意の証! 我々は常に全国に名を上げる部活である! 故にあの格好は誇りが詰まっているのだ!」

「しかしあの格好のせいで部室に誰も来てくれなかったら・・・」

「その時はその時だ! それに今日は初日。 最初から高望みなどはしない。 それだけの本気を受け入れる者に感謝をすればよいのだ。」


 真面目は入るタイミングを見誤ったかと思ったが、ここでなにもしないのも良くないと思ったので、声をかけることにした。


「あのー、すみません。 お取り込み中でしたら日を改めますが・・・」


 そう声をかけると1人の男子生徒が真面目に気が付く。 改めて見るとその男子生徒は壇上で同じ様に部活紹介をしていた人物だった。


「来てくれたのか新入生君。 済まないね騒がしい部室で。」

「あ、いえ。 元気なのはいいことだと思いますよ?」

「礼儀を弁えているな君は。 少し待っていてくれ。 すぐに終わらせるから。」


 そう言うとその人は先程の会話の中に入り、そこから部員全員に頭を叩いて回った後に、説教紛いなことをやり始めた。


「全く、既に終わったことに対して愚痴を言うんじゃない。 成功しようが失敗しようが、それが水泳部の信用信頼部の存続に関わることなら改善すべき点はもっとある。 それにみんなして喧騒していては来てくれた新入生が困惑を極めるだろう。」

「え!? 新入生来てくれたんですか!? それならそうと・・・」

「言ったところでこの喧騒を止めなければならなかっただろう。 実際にそうなっているのだから、なおのことだ。 そして部活中のいがみ合いは極力無しだと教えた筈だろう?」

「そうだなそれは良くないことだ。 止めてくれた事を・・・」

「本来は部長であるあんたの仕事だ! それなのにいつもいつも私がその尻拭いをして・・・本気で感謝をしているのならば、少しは自分の立場を分かった上で・・・」


 そこからは真面目が口に挟むことが出来ない程の叱咤を受けていて、入ろうと思った場所を間違えたのかと同時に、今目の前で説教をしている人の苦労が目に浮かんでくるようだと、真面目は遠い目をしながら見ているしかなかったのだった。

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