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文化祭当日 オープニングセレモニー

 文化祭の開会式が体育館で始まるのだが、壇上に立ったのは校長ではなく真面目達が全くと言っていいほど見たことの無い人物だった。


「私が今回の文化祭の開会式を務めさせていただくことになった山田です。 皆さん本日のために様々な準備をされてきたと思います。 しかし文化祭と言って、浮かれすぎるのも良くはないです。 州点高校の生徒として、そして明日来られる来賓、保護者の方々に迷惑にならないようにすることが、1人の人間としての役目であることを心に留めておいて欲しい。 私からは以上になります。」


 山田と呼ばれた職員はそのまま壇上から降りていく。 そしてそれに入れ替わりで別の教員が壇上に上がる。


 そこからは文化祭の時の注意点などが主になるのだが、このタイミングで真面目を含めた数名が、体育館の端によるように列から離れていった。


 そこから更に真面目は舞台裏に入る。 その時に同時に紗羅と合流する。


「緊張してないようだな。」

「そっちもね。」


 挨拶代わりの言葉を交わしあうと、体育館の舞台裏には既に二ノ宮と皇が2人の衣装を持って準備をしていた。


「さあ、着替えの時間だよ。」

「あまり時間もありませんので、すぐに上着を脱いで羽織ってください。」

「あ、羽織るだけでいいんですね。」

「初舞台とはいえ初心者ですので、あまり着飾ったものでなくても構わないでしょう。」


 そう言われながら真面目と紗羅は着物を羽織らされる。 真面目が思ったことは、着物って本当に重いんだなと羽織っただけで感じたのだった。


「そろそろ終わりそうかな。 それじゃあ私は先に説明をしに行ってきます。」

「それでは一ノ瀬君は私と一緒に琴を準備しましょうか。」

「分かりました。」


 そうして真面目と皇は、琴を下ろすための台座を片手に持ち、琴を持ち上げて、ゆっくりと壇上へと上がっていくのだった。


 ―――――――――――――――――――


『先駆者の方々が抜けた我々日本舞踊クラブは私と皇先輩の2人のみだったのが、今では2人新たに入ってきたことにより4人になり、その2人もこの初舞台のためにみっちりと練習をしてきました。 至らぬところもございますでしょうが、そこはご愛嬌とさせていだたきたい。 では準備が整ったようなので、しばしご閲覧していってください。』


 壇上で説明をしていた二ノ宮が舞台袖へと行くと、それに入れ替わるように紗羅が壇上に上がる。


 それを見ていた岬とたまたま隣になった隆起は壇上を見ながらなにが始まるのかと待っていた。


「踊るのは花形の方じゃないんだな。」


 隆起がそんな風な感想を述べた。


「私も踊るのは一ノ瀬君だと思っていたんだけど。」

「なんか理由があるんかな。 あの先輩もなんか意味ありげだったし。」


 隆起と岬が考察をし始めていると、琴の音色が体育館に反響するように広がっていく。 琴から聞こえるのは簡単なリズムの音の羅列。 正直なことを言えば、岬も隆起も音楽自体は聞くことがメインなため細かなことは分からない。 だが真面目がこの日のために部活動に顔を出して頑張っているのは岬は知っていた。


 琴の音色が変わり、踊りもその音に合わせて変化した。


「この部分、ちゃんと出来るようになったんだ。」

「あれ? 浅倉は聞いたことあったのか? 真面目の琴の練習。」


 岬が聞いたことがあると言った口ぶりをしたので、隆起は岬に質問をする。


「茶道部の部室は、日本舞踊クラブが借りてる教室に近い。 琴の音色が聞こえてくることも当然と言えば当然。」

「でも真面目が弾いているとは限らなかったんじゃないか?」

「経験者と初心者が扱うのでは訳が違う。 音のズレ方や音色の出し方でどっちが弾いていたかは分かる。」

「茶道部ってそんなに暇なのか?」

「あくまでもお茶を起てて作法を習うのが目的だから。 そんなに騒がしくもしないし。」


 そんな会話をしつつも日本舞踊クラブの踊りは佳境に入り、琴の音色が変わり、最後の決めポーズを決めたところで日本舞踊クラブのオープニングセレモニーは終了したのだった。


 そこからは文化祭らしく漫才だったり歌や躍りを見せていく。 そんな中で真面目が列に戻って来たのだった。


「あ、お帰り。」

「ただいま。 どうだった? 変なところ無かった?」

「素人じゃ変だってことは分かる訳じゃないから、まあ悪くなかったぜ。」


 真面目の質問を返したのは隆起だった。


「まあ後は楽しもうぜ。 仕事は一旦は無くなるんだろ?」

「生徒会の仕事はこの後から少しだけ有るけどね。」

「文化祭、楽しめる?」

「今日はこれ以上は無理かもね。」


 来賓が来ないとは言え、全校生徒を見るとなると、警備人数は必要になってくる。 明らかに教員のみで賄える広さではない。 なので少しでもトラブルを無くすためにも、生徒会も一丸となって警邏にあたるのだ。


「でもよ、それじゃあ生徒会や出展する連中が楽しめなくないか?」

「特に一ノ瀬君は料理のこともあるから、尚更楽しむ時間がないと思う。」

「あっちもこっちも忙しいな真面目。 引っ張りだこでも脚もげるぞ。」


 隆起は冗談交じりに言っているものの、割りと的を得ている辺り、本当にそう思っているのだろう。


 そうしているうちにオープニングセレモニーも終盤に差し掛かっていた。


「そういえば一ノ瀬君は気になってた出し物とかあったの?」

「気になってたって言われても、僕は最初にやったけど着替えとか片付けとかで、なにが出るとかまでは確認してなかったなぁ。 生徒会の申請でも、分かる訳じゃないし。」


 真面目の中で率直な感想を言えば、岬と隆起はやれやれと言った具合で首を横に振ったのだった。


 そして開会式も終わり、それぞれの教室へと生徒が出ていくのを、真面目を始めとした生徒会メンバーが誘導をしていた。


「一ノ瀬庶務。 今日は1年の教室棟周りを巡回して貰う。 だが今日は来賓は来られないためそこまでかしこまった警邏を行わなくても構わない。 生徒会と言うことを忘れなければ、存分に文化祭を楽しんでいって構わないからな。」


 生徒会長直々の言葉を受けた真面目は、これが上に立つものの部下を思いやる気持ちなのだと実感し、了承をするのだった。

 そして出展準備が終わった教室のスピーカーから、放送部であろう人達からのアナウンスが流れ込んできた。


『それではまもなく、文化祭を開始いたします! 本日は楽しんでいきましょう!』

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