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ネビュラが・・・

 料理の方が順調に進んでいる一方で、ウェイター係も含めた装飾係のクラスメイトはどんなデザインの壁にしようか悩んでいた。 異文化交流をモットーにしているだけに、下手に描くことが出来ないのだ。


「うーん。 これをこっち側に描くとここが意味なくなっちゃうし・・・」

「あれ!? 誰だよ! ここにこんなの描いたのは!」


 と言った具合に作業が難航していた。


「みんな思い思いに描いてるから、方向性がてんでバラバラだね。」

「面白がってる場合じゃない。 このままじゃ収拾がつかなくなる。 なんとかひとつのテーマに絞らないと。」


 このやり取りをしているのは率先して指揮を取っている訳でもない刃真里と岬である。 2人は絵心が無いと言うことで除名された代わりに、飾りつけの方で尽力を出すことにしている。 今は折り紙でアーチを作っていた。


「私もそれなら料理の方に行けばよかった。」

「料理は出来るのかい?」

「・・・サラダなら・・・」

「料理とも言えなくはないね。」


 結果論から言えば、役には立てそうにないという結果になった。 岬ははぁと溜め息をつきつつも、せっせとアーチを作っていた。 隣で作っている刃真里と比例しても素早い動きである。


「手先は器用なんだね浅倉さんは。」

「茶道部で指は鍛えてる。 あとは元々こう言った細かい作業は好きだから。」


 会話をしながらもアーチを作るのは忘れない岬。 しかし何故か岬は絵を描ついている方に目が向いていた。


「向こうが気になるのかい?」

「絵心はないから描きには行かないよ?」

「手の器用さは絵を描くのとは違うからね。」


 お互いに自分の長所と短所は分かっているので、でしゃばったりはしない。

 そんな中でも何故か岬は周りを見渡していた。 特にアーチを作るのに支障は無いのだが、注意力が散漫になっているような気がする刃真里は、そんな岬に声をかけた。


「そんなに教室を見渡してどうしたのさ? 誰かを探してる?」

「いや、そう言う訳じゃ・・・」

「でもずっとキョロキョロしてる。 この教室にいない人物について気になっているんじゃないの?」


 刃真里の男も女もオトせそうな整った顔を見せられて、岬はなにも言い返すことが出来ず、ぐっと口をつむった後、諦めたかのように口を開いた。


「ネビュラがいないなって思っただけ。 ネビュラも私達と同じ製作班の筈でしょ? どこに行ったのかなって。」

「ネビュラは衣装調達担当だから、そんなに多くいる必要はないと思うけど?」

「それでも、どうやって調達するのかは知らないけど、トイレとかにしては長すぎると思わない?」


 どうやら理由は分からないが気になってしょうがないと言った風貌のようだ。 岬自身も何故目で追おうとするのかまでは分からないようだ。


「ネビュラを気になったきっかけってなんなのかな? そこから紐解いていけばなにか分かるかもよ?」

「きっかけ・・・」


 岬は何故ネビュラの事を気になり始めたのかを思い返してみる。 確か最初に見たのは商店街で真面目が岬達よりもネビュラの案内をしていたことに始まるだろう。


 ただ男子ならばそれは性転換した相手だったということで済んだのだが、ネビュラは明らかに女子。 しかも性転換を受けていない海外からの現役女子高生。 いくら自分が見た目が男子高校生だからと言って、モヤモヤが消えることはなかった。


 そして同じクラスに留学してきて、最初に声をかけたのが真面目だったとなれば、気になってしょうが無くなっているのは、否定できなかった。


 岬はそんな話をして、刃真里の様子を伺っていると、刃真里は考えるように腕組みをしていた。


「どう思う? そんなにネビュラの事を見ているって、何かあるのかな?」


 いても立ってもいられなくなった岬は考えている刃真里に急かすように質問をした。 そして刃真里はこう聞き返した。


「浅倉さん。 その思いって、ネビュラが来る前からもあったりした?」


 質問を質問で返された上に、質問の意図が今までの話を聞いていたのかと疑問になるくらいにずれていた。 とはいえ岬は答えない訳も無いので、自分が思うことを話した。


「どうだろう? そこまでは分からない。 けど・・・」

「けど?」

「動向を探るような事はしていないと思う。」


 岬がそう答えると、刃真里はまた考える。 そんなことをしていると、教室の扉が開かれた。


「ミナサン、オマタセイタシマシタ! エノグヤイロエンピツ、オリガミヲカッテキマシタヨ!」


 開けた扉から現れたのは大量に袋を持ったネビュラだった。 どうやら足りなくなった備品を買いに行っていたようだ。


「あ、お疲れ様。 重たかったでしょ? ネビュラちゃんは休んでていいから。」

「イエイエ、ミナサンガガンバッテイルノニ、ワタシダケヤスンデイルワケニハイキマセン。 テツダエルコトハテツダワセテクダサイ。」


 ネビュラの熱意にクラスメイトも、どうしようか悩んでいて、それならと岬達と同じ様に作って欲しいと言われたので、岬達の元へやってきた。


「ヨロシクオネガイイタシマス。」

「それじゃあこうやって折り紙を切ってから輪を作ってくれないかな。」

「ワカリマシタ。」


 そう言いながらネビュラも作業を開始する。 そんな中で岬はネビュラの方をただただ見ていた。


「ドウシタンデスカミサキ。 ワタシノホウヲミテ。」

「・・・別に。」


 不快に思ったわけではないのだろうが、ネビュラは岬の視線に気が付いたのか、岬に声をかけたのだった。


「そういえばネビュラはなにが文化祭で楽しみなんだい?」


 話が続かないと思った刃真里は会話を繋げるためにネビュラに話を振った。


「モチロンゲキヲミルノヲタノシミニシテイマス!」

「劇って、演劇部の劇ってことだよね?」

「ソウデス! シカモコンカイハ、ニホンノヨウシキビヲヒョウゲンスルトイッタ、トテモキョウミノアルゲキニナルラシイデス!」

「もしかしてネビュラがいるから、それに合わせた劇をするようにしたのかな?」

「確かにそれは興味あるかも。」

「そういえば日本舞踏クラブも劇に出るらしいんだよね。 一ノ瀬君も出るのかな?」

「マジメモデルノデスカ? ソレナラナオノコトタノシミデスネ。」


 ネビュラは新たに楽しそうに折り紙を切っているのを岬は見ていたのだが、何故だか少し不機嫌そうに見えた刃真里は、なにかを察してアーチを作るのを2人の見えない位置で行うことにした。


「これは少しだけ振り回される事になるんじゃないかな? 一ノ瀬君。」


 いない本人に対して、少々憐れみを与える刃真里だった。

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