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家を追放された魔法薬師は、薬獣や妖精に囲まれて秘密の薬草園で第二の人生を謳歌する(旧題:再婚したいと乞われましても困ります。どうか愛する人とお幸せに!)  作者: 江本マシメサ
二部・第三章 奇跡の力を揮う者?

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エピローグ

 ヒーディはあのあと騎士に拘束され、連行されたという。

 悪質な詐欺を働いた者は罰金金貨百枚に加え、懲役十年が言い渡されるという。

 ヒーディがどうなったかは、知りたくもないし調べるつもりもなかった。

 ココロト商会は悪事を根こそぎ暴かれて倒産。ヒーディの叔父である商会長は主犯として刑の執行を待つばかりとなっているそうだ。

 ココロト商会は謝肉祭を国一番の催しにすることを目標としていたようで、ライバルとなる商会を蹴落としたり、裏金で権利を買い取ったりと、好き勝手していたようだ。

 幸いにも、謝肉祭は国が運営を担うこととなり、来年以降も継続して開催されるという。

 ただ、春雷風邪の流行にココロト商会の人身売買、偽聖女騒動など、悪いイメージがついているため、別の名前に変えるという。

 隣国との肉の取り引きも、引き継ぐ商会を決めたので、継続して関係が続くようだ。

 ただ、王都近郊での牧草畑は廃止するという。これ以上王都に牧草花粉が飛散しないよう、根っこから焼かれたようだ。

 かなり広い範囲で作っていたため、襲撃を受けたかのような焼け野原が広がっているという。

 新しく作物を育てようという計画が立ち上がっているようだが、事業として手を上げる組織はなかったらしい。

 それも無理はない。

 牧草花粉が思いがけない悪影響を及ぼしたため、他の作物も同じような事態が起こるかもしれない、と二の足を踏んでいるだろう。

 そんな中で、エルツ様が特許を持つ魔法ビニル素材と呼ばれるもので温室を作らないか、という提案をしたらしい。

 魔法ビニルというのはガラスでできた温室と同じような効果を持ちながら、製作費が安く作れるという利点があるらしい。

 魔法ビニルの温室であれば、花粉が拡散することはない。安心して農業ができるわけだ。

 結局その事業は国が買い取り、もともと牧草刈りをしていた下町の人達を雇って始まったようだ。

 皆、エルツ様に感謝しているという。


 イーゼンブルク公爵家の屋敷も大きな変化があった。

 療養していた人達が治療費を返すため、屋敷の修繕を進めてくれるようになったのだ。

 荒れ果てていた庭は庭師の指揮できれいに整えられ、ヒビが入っていた屋敷の壁も直したのちにペンキが塗られた。

 屋敷の中も掃除がピカピカに行き届き、以前の姿を取り戻しつつある。

 トリスはメイドとして働くようになり、収入が増えたと喜んでいた。それ以外の下町の女性も、数名メイドとして採用している。

 人を新しく雇い入れないといけない、と思っていたのだが、いい人材がすでにいたのだ。

 そんなイーゼンブルク公爵家の屋敷は、引き続き診療所としての役割を果たすこととなった。

 魔法医がいないと魔法薬を調合できないので、エルツ様に紹介してもらった。

 二十二歳と年若い女性の魔法医である。

 エルツ様が直々にイーゼンブルク公爵家の専属魔法医になりたいと望んだのだが、それは丁重にお断りさせてもらった。

 戻ってきた魔法薬師達もよく働き、活き活きとした様子を見せている。

 皆、昔のイーゼンブルク公爵家に戻った、と喜んでいた。


 心配事などなくなった日のとある午後。

 私はエルツ様と一緒に街をぶらぶら歩いていた。

 喫茶店に行った帰りで初夏の王都を探検しようと、しばし散歩を楽しんでいたのだ。

「季節はすっかり夏だな」

「本当に」

 今日は日差しがやわらかく、心地よい風も吹いていた。

 絵に描いたような、理想的な初夏の気候である。

 そんなひとときを堪能していたのだが、突然記者が押しかけてきたので驚く。

 エルツ様はマントで私の姿を隠してくれた。

「何者だ?」

「セグ出版社の記者です。お二人に質問があるのですが、よろしいでしょうか?」

「よろしくない」

 エルツ様は冷たく言葉を返し、私の肩を抱いてスタスタと歩いていたが、記者が背後から叫んだ。

「お二人がご夫婦ということは、本当なのでしょうか!?」

 ぎくり、とわかりやすいくらいの反応をしてしまったように思える。

 思わず歩みを止めてしまったため、記者に追いつかれてしまった。

「やはり、本当なのですね?」

 いったいどこでバレてしまったのか、と額に冷や汗を掻きながら思う。

 夫婦だとアピールするような行動などは取っていないはず。

 そう思いながら振り返ってみたところ、私達は二人揃って役所に離婚承諾書を提出に行っていたことを思い出す。

 それを目撃した者の誰かがリークしたのかもしれない。

「ヴィンダールスト大公、婿入りとのことですが、どうしてそのような決意を?」

「なぜ、私的なことを話さなければならない。それに話が広がったら困るだろうが」

 そう言うエルツ様の表情は困っているようには思えなかった。

「では、イーゼンブルク公爵、ヴィンダールスト大公を婿に迎えた理由は?」

「うるさい」

 エルツ様はそんな言葉を残し、転移魔法を展開させる。

 向かった先は隠者の隠れ家エルミタージュ

 ここ最近、エルツ様も自由に行き来できるよう設定したのだ。

「ビー、とんでもない目に遭ったな」

「……」

 エルツ様は言葉のわりに、ぜんぜんとんでもない目に遭ったようには見えない。

「あの、記者にリークしたのはエルツ様ではないですよね?」

「断じて私ではない。うっかり露見するようなことがあれば、致し方ないとは思っていたが」

 つまりあわよくば公表できたら、と考えていたわけである。

「ビーは迷惑だったか?」

「いえ、逆にエルツ様が迷惑なのでは? と思っただけです」

「迷惑なわけあるか」

「だったら、別に問題ありません」

「そうか。よかった」

 エルツ様は甘い笑みを浮かべ、私の手を優しく握ってくれる。

「期間限定ではあるが、夫として、よろしく頼む」

「もちろんです、エルツ様。私も期間限定の妻として、できることをいたします」

 隠者の隠れ家エルミタージュの木漏れ日が差し込む木の下で、エルツ様は私の頬にキスをした。それは小鳥が木の実をそっとついばむような、ささやかなものだった。

 それでも私にとっては刺激が強い。

「やはり、頬に口づけで正解だったようだな」

「ご配慮、ありがとうございます」

「いいや、段階は大事だからな」

 これ以上、どんな世界が待っているのか。私にはわからない。

 けれどもエルツ様とだったら怖くもないだろう。

 そんな自信があったのだった。


 隠者の隠れ家エルミタージュではリス妖精がテキパキ働き、グリちゃんが運搬を行い、アライグマ妖精の姉妹が無邪気な様子で調合を助け、モモが私の侍女を務め、綿埃妖精が楽しそうに跳ね回っている。

 そんなこの地を優しく守るセイブルが、今日も住人達を見守っていた。

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