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家を追放された魔法薬師は、薬獣や妖精に囲まれて秘密の薬草園で第二の人生を謳歌する(旧題:再婚したいと乞われましても困ります。どうか愛する人とお幸せに!)  作者: 江本マシメサ
二部・第三章 奇跡の力を揮う者?

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魔法薬を作ろう!

 翌日、まだ咳は出るものの、昨日よりは症状がマシになったので、魔法薬作りを開始する。

 調合を手伝ってくれるのは、ムクとモコ、モフ、それから今日は綿埃妖精もやる気を見せていた。

『頑張る~ん』

 気の抜けるようなやる気を示してくれる。

 そのおかげで、リラックスした状態で調合できそうだ。

 エルツ様は謝肉祭の騒動で発生した病気を、春雷風邪と名付けた。

 牧草の花粉は春先に爆発するのと、雨と雷、風を含む春の嵐によって発症することを由来としているらしい。

 そんな春雷風邪を治すための魔法薬の材料は、隠者の隠れ家エルミタージュの庭で採取できるありふれたものであった。

 一つ目は春雷風邪の原因物質である花粉の症状を抑え込む、ポララ草。

 風邪ポーションにはこれが入っていたので、トリスの症状は治ったように思えたのだろう。

 二つ目は春雷風邪による症状、くしゃみや鼻水などに効果がある、ラミン花の根っこ。

 三つ目は喉の炎症や咳を鎮めるレスタの木の樹液。

 他にもいくつかの薬草、薬品などを配合して作るのだ。

 材料を細かく切り、乳鉢で潰し、薬研で砕く。

 絞り汁から薬効を得られるものもあれば、凍らせて効果が発揮されるものもあった。

 それらの作業を、皆が私の手足となるように手伝ってくれる。

 材料を大釜に入れ、精製水を注いだあと、仕上げの呪文を唱える。

「――調合せよフォーミュレイト!!」

 大釜の中が光り輝き、浮かび上がっていた魔方陣がパチンと弾ける。

 春雷風邪の魔法薬は大成功だった。

「みんな、ありがと――げほげほ!」

『早く飲んで!』

『お礼はいいから!』

『グラスはあるよ!』

 モモはモフからグラスを受け取ると、目にも留まらぬ早さで魔法薬を注ぎ入れてくれた。

『ベアトリス様、どうぞでちゅ!』

「あ、ありがとう」

 そして、渡されたそれを飲み干す。

「あ――!」

 喉の痛みがスーーーっと消えていき、頭痛や体の倦怠感などもなくなった。

「効果は抜群です。ありがとうございます」

 魔法薬を完成させることができたのは、皆のおかげだ。心の奥底から感謝する。

「と、ここで喜んでばかりではいられませんね。すぐにエルツ様へ報告に行きましょう。ムクとモコ、モフ、それからモモ、魔法薬の瓶詰めを手伝ってくださいな」

 そう声をかけると、皆『は~い!』と可愛らしく返事をしてくれたのだった。


 瓶詰めした魔法薬を持ってエルツ様の研究室に向かうと、すっかり元気になった私の様子を見たエルツ様が驚いた顔で迎えてくれる。

「春雷風邪の魔法薬が完成したようだな」

「はい」

「さすが、私のビーだ」

 私の、という発言が引っかかったものの、今は気にしている場合ではない。

 完成した魔法薬を重症患者に飲んでもらわなければならないからだ。

「ビーはイーゼンブルク公爵家の屋敷にいる患者に、この魔法薬を渡すようにしてほしい」

「いいのですか?」

「ああ。ビーのことを信じてイーゼンブルク公爵家の屋敷に身を寄せた者達の信頼に、一刻も早く応えるべきだろう」

 王宮病棟にいる国の重鎮達は大丈夫だから、とエルツ様が言ってくれた。

「本当によろしいのですか?」

「ああ。あの者達は大した症状などないくせに、ぎゃあぎゃあと子どものように騒ぐばかりだからな」

「は、はあ……。では、これを届けたのちに、また隠者の隠れ家エルミタージュで魔法薬の調合を行いますので」

 今現在、アライグマ妖精の姉妹やモモ、綿埃妖精が春雷風邪の魔法薬を作っているものの、仕上げは私がいないとできないため、早く戻る必要があるのだ。

 エルツ様は素早く移動できるよう、転移の魔法巻物を託してくれた。


 イーゼンブルク公爵家の屋敷に転移し、春雷風邪の魔法薬を配って回る。

「ああ、ベアトリス様、ありがとうございます」

「苦しかった症状が、こんな一瞬で治まるなんて」

「魔法薬はすばらしい」

 下町の人々は魔法薬を受け入れ、効果を実感してくれた。

「このご恩は必ず返すから」

「今からでも、働いて返せそうだ」

「ありがとう……ありがとう」

 もうすでに、労働で対価を払おうとする者達が続出している。

 ここ数日で体力も落ちているはずなので、しばらくはゆっくり療養してほしい。

 トリスと家族も、魔法薬で元気になった。

「ベアトリス、あんたはすごい人だ……!」

「もったいないお言葉です」

「謙遜するなよ、ベアトリス……って、イーゼンブルク公爵と呼ばなきゃな」

「トリスはお友達ですから、これからもベアトリスと呼んでください」

「友達? あたしが?」

「はい。これからも、いろいろ私に教えてくださいね」

「あ、ああ。あたしでよければ」

 トリスは頬を染め、照れたように言ってくれた。

 ご両親や妹さん、弟さんも元気になったので、一安心というわけだ。


 その後、私は春雷風邪の魔法薬を次々と生産するのと同時に、レシピも考案する。

 イーゼンブルク公爵家の屋敷には庭師や使用人だけでなく、かつて働いていた魔法薬師達も戻ってきたので、彼らに調合を任せることとなったのだ。

 これで春雷風邪を患った人々に魔法薬が行き届くだろう。

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