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家を追放された魔法薬師は、薬獣や妖精に囲まれて秘密の薬草園で第二の人生を謳歌する(旧題:再婚したいと乞われましても困ります。どうか愛する人とお幸せに!)  作者: 江本マシメサ
二部・第一章 イーゼンブルク公爵として

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喫茶店でひとやすみ

 行き着いた喫茶店は大通りから外れた、ひっそりとした場所にあった。

 煉瓦の壁に蔓薔薇が這うように生えていて、花が盛りで美しい。

 軒先には〝渡り鳥喫茶室〟と書かれてあった。

 中に入ると、老夫婦が迎えてくれた。

「いらっしゃいませ」

 エルツ様は慣れた様子で、「サンルームは空いているだろうか?」と尋ねる。

「ええ、今日は空いておりますよ」

「だったら頼む」

 案内された先は、やわらかな日差しが差し込む小さなサンルームだった。

 レモンやオレンジの小さな樹や、ミントやセージなどの花壇などが置かれた緑溢れる空間だ。

 個室になっているので、のんびり過ごせそうな場所である。

「まあ、素敵」

 思わずそう口にすると、ウエイター係のお婆さんがにっこり微笑んでくれた。

「では、ごゆっくりお過ごしください」

 テーブルにメニュー票が置かれると、ウエイター係のお婆さんはいなくなる。

 完全に、エルツ様と二人きりの空間になった。

「さて、ビー、なんにしようか」

「なんだかわくわくします」

 メニュー票を開くと、豊富な種類の紅茶があるようだった。

 これだけあると迷ってしまう。

「うーーん、ここは本日のオススメ茶にしたほうがいいのでしょうか」

「それがいい。私も以前やってきたときオススメを飲んだのだが、とてもおいしかった」

 エルツ様がそう言うのならば、間違いはないのだろう。

「ここは料理にもこだわっているらしい」

 甘い系のペイストリー系から、しょっぱい系のセイボリー系のメニューがずらりと書かれている。

「これも迷ってしまいますね」

「甘いものとしょっぱいもの、両方頼めばいい。二人で分け合えば食べきれるだろう」

「半分こ、いいですね!」

 そんなわけで私はチーズスコーンを選び、エルツ様は木イチゴのタルトを選んだ。

 ここからウエイターを呼べるものか、と考えていたら、エルツ様がテーブルにあった鐘を鳴らす。そういう仕組みだったのか、と今になって気づいた。

 先ほどのウエイター係のお婆さんがやってくるものだと思っていたのに、想定外のお伺い係がやってきた。

 それは、黄色い羽を持つ小鳥だったのだ。

「あら、まあ」

 小鳥はテーブルに降りると、まさかの行動に出た。

『ご注文をどうぞ! ご注文をどうぞ!』

 どうやらオーダーを取ることができる小鳥らしい。エルツ様は慣れているのか、すらすらと注文していた。

「本日のオススメ茶を二つと、チーズスコーン、木イチゴのタルトを頼む」

『本日のオススメ茶を二つ、チーズスコーン、木イチゴのタルト!』

 小鳥は復唱したのちに、厨房のほうへと飛んでいった。

「すごいですね」

「うちの使い魔よりも流暢に喋る」

 ああいう小鳥がいるので、ここは渡り鳥喫茶室という名前なのかもしれない。

 斬新なお店である。

 しばらく待っていると、ウエイター係のお婆さんが紅茶と食べ物をワゴンに載せて運んできてくれた。先ほどの小鳥は、肩にちょこんと乗っていた。

「お待たせしました」

 紅茶はポットごと運ばれてきて、ティーコジーが被せられる。

「ここの砂時計がすべて落ちたら、飲んでくださいね」

「はい、ありがとうございます」

 チーズスコーンは焼きたてのようで、湯気がほわほわ立っていた。

 木イチゴのタルトには、生クリームが添えてある。どちらもおいしそうだ。

 チーズスコーンは二つあるので、一つはエルツ様に進呈した。

「木イチゴのタルトは一口だけいただけますか?」

「それだけでいいのか?」

「はい」 

 最近、食生活が充実していて、少し太ったとは言えない。

 エルツ様は木イチゴのタルトをフォークで一口取ると、まさかの行動に出る。

「ビー、食べよ」

 そのまま私の口元へと差しだしてきたのだ。まさかの「あ~ん」に困惑してしまう。

「ビー、早く食べないと、生クリームが落ちてしまう」

「う、はい」

 自分で食べられるのだが、ここはご厚意に甘えたほうがよさそうだ。

 恐れ多いと思いつつも、木イチゴのタルトを食べさせてもらう。

 木イチゴは少しだけ酸味があったが、生クリームが味わいをなめらかにしてくれる。タルト生地はサクサクで、とってもおいしい。

「どうだ?」

「最高です」

「よかった」

 いただくのは一口だけと宣言していてよかった。

 ホッとしたのもつかの間のこと。エルツ様が私に使ったフォークでそのまま食べ始めたのでギョッとした。

「あの、フォーク、取り替えてください!!」

「いや、もう食べてしまったが」

「今からでも遅くありません」

「気にするな」

 いやいや、少しは気にしてほしい。「あ~ん」が終わったと思っていたので、完全に油断していたのだ。

 エルツ様が冷静なので、わーわー言っている私が間違っているのではないか、と思ってしまうくらいだった。

 気にしたほうが負けなのだろう。そう思うようにしておいた。

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