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家を追放された魔法薬師は、薬獣や妖精に囲まれて秘密の薬草園で第二の人生を謳歌する(旧題:再婚したいと乞われましても困ります。どうか愛する人とお幸せに!)  作者: 江本マシメサ
二部・第一章 イーゼンブルク公爵として

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ギルドにて

 その後、私はエルツ様と共にギルドに向かった。

 以前、下町での魔法薬販売について教えてくれた、熊獣人の受付係が対応してくれる。

 彼は私よりも先に、エルツ様に反応した。

「これはこれは、クリスタル・エルフのヴィンダールスト大公閣下ではありませんか! 今日はいかがなさったのですか?」

「用事があるのは彼女だ」

 ここで熊獣人の受付係は私の存在に気づく。

「ああ、先日やってきた、魔法薬を下町で売ろうとしていたお嬢さんか。魔法薬は売れたか?」

「いいえ、まったく」

 熊獣人の受付係は苦笑いを返す。私もつられて笑ってしまった。

「今日はどえらい大物とやってきて、どうしたんだ?」

「人探しを依頼したくってやってまいりました」

「そうかい。だったらここの魔法陣に触れて、魔力印を出してくれるか?」

「承知しました」

 魔力印というのは血から読み取った魔力を魔法省で登録し、そこに名前や身分などを記録させたものである。銀行省やギルド、図書館などさまざまな場所に魔力印を読み取る魔法陣があって、複雑な手続きがなくとも公共機関のサービスを受けることができる仕組みなのだ。

 魔法陣に手をかざすと、文字が浮かび上がってきた。

 その情報を見た熊獣人の受付係はギョッとする。

「イーゼンブルク公爵だって!? お嬢さん、とんでもなく偉いお貴族様だったのか!?」

 女性公爵は珍しい上に、イーゼンブルク公爵になってから公式行事に参加していない。そのためわからなかったのも無理はないだろう。

 熊獣人の受付係は背筋をピンと伸ばしたあと、深々と頭を下げた。

「イーゼンブルク公爵閣下、気づかずに申し訳ありませんでした」

「いえいえ、どうかお気になさらず」

 なんて言葉を返したのに、エルツ様は受付のテーブルにとん! と勢いよく手を突き、熊獣人の受付係に物申す。

「イーゼンブルク公爵に無礼な態度を取った謝罪の気持ちは、もちろん見せてくれるだろう?」

「あ――も、もちろんです! 報酬を三割、当方のギルドで負担いたします!」

「いえ、そんな、大丈夫です」

「いいえ! イーゼンブルク公爵閣下とは今後も付き合いを続けたいと思った所存で、今回はこのようなサービスをさせていただけたらな、と思います!!」

 遠慮したのだが、それでもやりたいと言うので、今回は甘えさせていただく。

「では、ここに書いた十二名を探していただきたいなと」

「はい、承知しました!」

 無事、依頼を受け付けてもらったので、ホッと胸をなで下ろす。

 ギルドから出たあと、一言だけ言わせてもらった。

「エルツ様、受付係の方が気の毒でした」

「そうであったか?」

 しれっと言葉を返してくれる。

「ただ、ああいうことも必要なのでしょうね」

「わかっていたか」

「はい」

 イーゼンブルク公爵として居続けるには、権威を示しておかなければならない。

 一度でも侮られたら、イーゼンブルク公爵の名までも愚弄されてしまうのだ。

「イーゼンブルク公爵の名を継承するということは、私だけの人生を歩むこととは事情が異なるのですね」

「そうだ」

 私には経験が圧倒的に足りない。

 けれども幸いにも、私の傍にはエルツ様がいる。エルツ様の言動を見て、私は一族の当主にふさわしい振る舞いを身につけないといけないのだ。

「まあ、ビーを侮る者がいたら、真っ先に私が潰すがな」

「そのような事態にならないよう、頑張ります」

 虎の威を借る狐になってはいけない。私自身が強くなる必要があるのだ。

 まだまだひよっこ公爵だが、頑張るしかない。

「ひとまず、これからはお嬢さんなんて呼ばれる前に、名乗りたいと思います」

「それも時と場合によるがな」

 たしかに、先ほどの熊獣人の受付係のようにイーゼンブルク公爵と知って敬意を示してくれる相手ならいいのだが、そういう人ばかりとは言えない世の中だろう。

 逆に、イーゼンブルク公爵の名が私を危機的状況へ陥れる可能性もある。

「イーゼンブルク公爵と聞いてお金になると思われて、誘拐でもされたらゾッとします」

「たしかに、そういう危ない思考をする者には名乗らないほうがよいだろう」

「難しいですね」

「ああ」

 まあ何はともあれ、ギルドで庭師達の捜索を依頼できた。

 まだまだ問題は山積みだが、少しずつ解決したい。

「ビー、歩き回って疲れただろう。少し喫茶店で休憩でもするか?」

「いいのですか?」

「もちろんだ」

 家でお茶を飲むのも好きだが、たまには外でお茶を飲むのもいいだろう。

 お菓子も職人が作った物のほうがおいしいに決まっている。

「どこか行きつけの店などあるか?」

「いえ、その、非常に言いにくいのですが、あまり外でお茶を飲んだことがなくて」

 あまりと控えめに言ったが、実のところぜんぜん知らない。

 私の人生は魔法薬についての勉強と調合の繰り返しだったので、外で優雅にお茶をする暇などなかったのだ。

「そうか。ならば私が知っている店へ行こう」

「以前行った、地下のお店ですか?」

「あの店ではなく、もっといい店だ」

 いいお店と聞いて期待が高まる。エルツ様と一緒に喫茶店を目指したのだった。  

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