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家を追放された魔法薬師は、薬獣や妖精に囲まれて秘密の薬草園で第二の人生を謳歌する(旧題:再婚したいと乞われましても困ります。どうか愛する人とお幸せに!)  作者: 江本マシメサ
二部・第一章 イーゼンブルク公爵として

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これまでのお話と、これからのお話

 代々、魔法薬師の技術を受け継ぎ、人々のために魔法薬を煎じてきたイーゼンブルク公爵家の分家に生まれた私、ベアトリス・フォン・イーゼンブルクは、次期公爵である従兄のオイゲンと結婚し、せっせと魔法薬を作る生活をしていた。

 そんな暮らしに変化があったのは、半年くらい前だったか。

 北風が厳しく吹く十一月のある日、私は夫であるオイゲンから離縁状を叩きつけられたのだ。

 オイゲンには愛人ヒーディがいて、彼女が妊娠したらしい。

 彼女との間にできた子を将来のイーゼンブルク公爵にしたいようで、妻である私が不要となったようだ。

 もともとオイゲンとは白い結婚である。一夜を共にしたことは一度もない。

 私は彼を愛しておらず、ただただ尊敬するお祖父様のために結婚したようなものだった。

 お祖父様が亡くなった今、彼と夫婦で居続ける理由はない。

 私は何もかも手放し、メイドが用意した鞄ひとつで家を出たのだ。

 魔法薬師としての立場も、帰る家も、何もかも失ってしまったと思っていたのに、私と一緒についてこようとする薬獣やくじゅう達がいた。

 アライグマ妖精の姉妹であるムク、モコ、モフに幻獣である鷹獅子グリフォンのグリちゃん――彼女達は私を慕い、ついてきてくれた。

 それだけではなかった。

 お祖父様は私に隠者の隠れ家エルミタージュと呼ばれる、森の中にある家と薬草園を遺してくれていたのだ。

 隠者の隠れ家エルミタージュには家猫妖精のセイブルや、綿埃妖精、リス妖精達がいて、とても賑やかだった。

 豊かな自然にたくさんの薬草、のんびりしていて静かな環境を私は気に入った。

 ここを拠点とし、ささやかな暮らしをしよう。そして、身分や家柄に関係なく、たくさんの人達が魔法薬を手にできるような薬局を開くことが私の新しい夢となったのだ。

 まずは魔法薬を売って、薬局を開くためのお金を稼がなければ。

 魔法薬を売るために街に出ると、思いがけない人物と出会う。

 エルツ・フォン・ヴィンダールスト。

 彼はクリスタル・エルフであり、筆頭王室典医貴族である。

 腰まで届くような美しい髪に、ナイフのような長い耳、研ぎ澄まされたような美貌のお方だ。

 彼は私と個人的なやりとりをしていた、常連さんでもあった。

 そんなエルツ様から思いがけない提案を受ける。それは、専属魔法薬師にならないか、というものだった。

 友人に魔法薬を販売した結果、再度私を利用しようと目論むオイゲンが押しかけ、迷惑をかけたばかりだった。

 エルツ様相手であれば、安全に取り引きができるだろう。そう判断し、二つ返事で了承した。

 それからというもの、私はエルツ様の元で働くこととなる。

 エルツ様は患者のために身を粉にしながら働くようなお方で、自分のことなど後回しにし、食事や睡眠時間すら削っていたようだ。

 その結果、魔法薬師である私に体調不良を訴え続けていたわけである。

 エルツ様の専属薬師となったからには、生活習慣を見直してもらわなければ。そう決意し、私はエルツ様を支え続けた。

 そんな毎日を過ごす中でお祖父様が遺した謎に気づいてしまう。

 なんでもお祖父様は私とエルツ様を結婚させたかったらしい。けれどもそれを取りやめ、オイゲンと結婚させた。

 その理由について調査すると、とんでもないことが明らかとなる。

 オイゲンは伯母が不貞をして作った子どもで、イーゼンブルク公爵家の血を受け継いでいなかったのだ。

 お祖父様は私とオイゲンを結婚させて、イーゼンブルク公爵家の血を次代へ受け継がせようと考えていたのだろう。

 ただ、それについては罪悪感があったのか、遺言状では私に対して好きなように生きるといい、という言葉を遺してくれた。

 その後、オイゲンが暴走した結果、彼がイーゼンブルク公爵家の血を受け継いでいないことが衆目の前で明らかとなる。

 その後、私は国王陛下の許可のもと、イーゼンブルク公爵として認められたのだ。

 それも喜ばしいことばかりではない。

 イーゼンブルク公爵と共に引く継ぐのは、オイゲンやヒーディが荒らした屋敷と多額の借金もだった。

 どうやら彼らは、私と離婚したあと盛大な婚約パーティーを開催したり、豪勢な結婚式をしたり、一ヶ月にもわたる新婚旅行で豪遊したり、と贅沢三昧な暮らしをしていたようだ。その結果、あっという間にイーゼンブルク公爵家の財産は尽きた。

 お金がなくなった時点で慎ましい暮らしをすればいいのに、彼らは借金をしてまでも贅沢な暮らしを続けていたという。

 今日も今日とて、イーゼンブルク公爵家の屋敷には借金取りが押しかけているようだ。

 その様子を、家猫妖精であるセイブルが池に映して見せてくれた。

『おい、ベアトリス、あいつら、飽きもせずに屋敷に押しかけているようだ』

「まあ」

 強面の五人組がこん棒などの武器を手に、屋敷の中に押し入っている様子が映し出される。

「おい、こら! 出てきやがれ!」

「ベアトリス・フォン・イーゼンブルク!! お前が新しい当主だから、責任を取れ!!」

「ここにいるのはわかっているんだ!!」

 セイブルは私を見ながら楽しげな様子で言う。

『おいおい、あいつら、お前の居場所がわかっているらしいぞ? 大丈夫なのか?』

「見つけられるのならば、どうぞ探してください、とでも返しましょうか」

 かくれんぼには自信があった。なぜならば、私が今いる場所は、隠者の隠れ家エルミタージュ

 ここには封印が施してあり、管理者である私が許可した者でないと踏み入れることができないのだ。

 豊かな自然が広がるこの場所で、私は今、暮らしている。

 イーゼンブルク公爵となった今でも、生活に大きな違いないのだ。

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