第十八話:ひとまずは
男達を吹っ飛ばしたノアを見て、ロロノワは興味にひかれ面白そうに口を歪めるが、途端に動きを止めた。
「まだまだ楽しみたいところだけど、分が悪そうだね……お前達、すぐ立ち上がるか僕に止めを刺されるのどちらがいい?」
「はいっ!!」
倒れていた男達はロロノワの強迫に勢いよく起き上がる。
「それじゃ僕たちもひとまず引き上がるか、それじゃあね そこの君」
善戦したリントを見詰めながら手を振った。よほど気に入ったらしい。
「また殺りあおうね」
ロロノワの笑みにリントはものすごく嫌そうに眉間にシワを寄せながら愚痴る。
「もう二度とごめんこうむる」
ロロノワ達は立ち去っていくのをティル達はそれを見送った。
「はあ〜、とりあえず一安心ですね」
一息つくリオにティルは不安そうにうなづいた。
「そうだといいんですけどね」
ティル達はひとまず村長宅に赴き事情を話すとすぐに手配をしてくれた。
「いや〜、ご無事で何よりです それより一体何があったのですか」
ミクロ島の村長ロッシュ・モーガンは不安そうに眉をしかめる。その答えにリオは少しずつ説明する。
「僕たちも何がなんだが まずはお二人の妹さんを探すことから始まりりまして」
アイナとセリカは村長に向かい挨拶をした。
「この度はご迷惑をおかけしてすみません」
「いえいえ、何をいいます ご迷惑をかけたのは私の不徳の致すところです まさかこの村に賊が侵入していたとは……警備が甘かったのでしょう 警備のものに探させて捕らえさせます」
「よろしくお願いします」
ティル達は退室し別室に移動した。
その場所にいるのはティルとノアとリントとリオとアイナだけである。セリカはレーネスに付き添った。
「まずは妹さんのレーネスさんが見つかって良かったですが、あの男達がまた出てくる場合があるでしょ」
その言葉にアイナは苦しそうな表情をした。
「そうですわね あの男達はあの子を誘拐しようとしていたみたいですし、しばらくここにいた方が安全かもしれませんね」
「ええ、それとあの負傷していた男の子は心当たりありませんか?」
「あの男の子は初めて見ましたね この島の子かしら?」
「それを知っているのはレーネスさんだけですし、彼女に聞くしかありませんね」
「そうですね」
アイナは退室して、レーネスのもとに向かった。
「とりあえずこのことを二人の先生に伝えた方がいいですね」
リオはルイズとテレサに魔法で手紙を送るために一枚の筒を取り出し、中から鳥が出てきた。
「と、鳥?!」
ティルは驚いた表情をした。
「はい、何か緊急用の事件が起きた時は速達で連絡が取れるようにこの鳥が届けてくれるんです」
「へえ〜、すごいですね」
リオは詳細を書き、ルイズとテレサに送った。
「ひとまずレーネスさんが起きるまで僕たちも少し休みましょう」
「そうだな 俺もクタクタだぜ あの野郎やたら動きが早いしよ」
ティルは苦笑し、リントの働きを労った。
「そんなに凄かったの?」
「まあ、俺ほどじゃないけどな あれは戦いを好むというより、人の血を見るのが好きな変態野郎だな もう二度と会いたくねえ」
「確かに、そうだね」
ティル達は与えられた部屋に休むというより翌日を迎えた。リビングに行くと朝食が用意されていた。
「おはようございます 皆様 昨日はゆっくりと休めましたか」
「はい」
「朝食をご用意いたしましたので」
「ありがとうございます」
「セリカさんとアイナさん、大丈夫でしょうか」
ティル達がご飯を食べるとセリカとアイナがやってきてレーネスが起きたことを知らせた。
まだ意識が定まらない様子だが、昨日よりも顔色も良さそうだった。レーネスは視線を彷徨わせて名前をよんだ。
「姉さん、エドワードさんは…」
「え、エドワードさん?」
知らない名前にアイナは不思議がるがセリカはピンときた。
「もしかして、あの子じゃないかしら」
「ああ、一緒に連れてきた子ね 大丈夫よレーネス その子は」
「治療を受けて眠っているわよ」
その言葉にレーネスはゆっくりと安堵して呼吸が落ち着いた。
「そう、良かった」
「あの男の子が助けてくれたの、あの人たちから…」
レーネスはふと視線をずらすとティル達の存在に気づいた。
「あなた達は?」




