第十七話:リントvsロロノワ
時間は少し遡る。
ティル達は海岸の方に向かい探索しようとした時、リントの聴覚が何かを捉えたらしく、瞬く間に目の前か消える姿にアイナとセリカは驚いた。
「僕たちも急ぎましょう」
急ぐリオにティルはうなづいた。
「はいっ」
そして、リントはアイナとセリカが探していた女の子を負傷したものの、女の子は泣きはらし彼女が抱きしめる負傷した男の子の姿に、どんな関係なのかよく分からなかったが彼女が異常に怖がっていることは分かった。
「君はレーネスちゃんで合っているかい?」
「え……はい? どうして私の名前を」
会ったばかりの少年がどうして自分の名前を知っているのかと不思議がる。レーネス本人だということを確認をとり、リントは優しく語りかける。
「そっか、喜びたいとこだけど、その子を治療させないとな」
「……はい!」
リントはレーネスに話しかけようとした瞬間、目に見えないような速さで痩せ型の男が襲いかかる。
いきなり鋭利に尖ったナイフで斬りかかれたリントは咄嗟の反射神経で応戦する。
普通の人間ならばバッサリと切り刻まれていただろうがリントもまた並外れた運動神経で回避した。
「おわ〜、危ねえだろ」
「へえ〜、僕のナイフを見切れるなんて 面白いな」
いきなり現れて邪魔をされることよりも、自分の技を見切ったことに面白そうにロロノワは口元を歪めた。
その表情を間近で見たリントは口元を引きつかせた。
「おい、どこか笑うところ合ったか?」
「ふふ、楽しくてしょうがないのさ 大抵の人間は僕が楽しむ間も無く血塗れになって倒れちゃうからね でも君は僕を楽しませてくれそうだ」
ロロノワは武器を握り返した時、男達は話しかける。
「ロロノワさん、俺たちは何をすれば」
「うん? ああ、そうだね 俺はこの子と遊んでいるからお前らはあの子達を」
男達はロロノワの指示を受け、リントの隙を待つことにした。多勢に無勢にリントは冷や汗をたらす。
(いや、これはヤバイな 二人から離れるわけには…… だがこの男は生半可で相手にできない)
リントに悠長に考える間も与えてはくれずロロノワは切りかかってきた。
「それじゃ始めようか 楽しい楽しい殺し合いを」
一段と早くなるロロノワの攻撃に流石のリントも焦る。
(おいおい さっきまでの遊びだったのかよ)
男達はリントはロロノワの戦いに見惚れた。
「おい、あいつロロノワさんの攻撃を受けても立っているぞ」
「すげえな」
一人の男が他の仲間達に声をあげる。
「おい! ぼう〜と突っ立ていたら俺たちが切り刻まれるぞ」
「おお?! それはおっかねえ」
男達は二人が対戦しているすきに近寄った。その様子を横目でみたリントは焦りを募らせた。
(まずっ)
一瞬の気を取られたリントにギリギリと鍔迫り合いをしながらロロノワは口元を歪めた。
「おや、集中が途切れましたね いけませんね 私から目を離したら」
「ふん そのセリフ可愛い女の子限定で行って欲しいな」
もう少しでレーネスに男達の魔の手が忍び寄ろうとしていたその時だった。
「風よ、かの者たちを吹き飛ばせ!」
凛とした少女の声が男達を風圧で吹き飛ばした。周りにも影響があり、リントとロロノワにもその余波を受けた。
「おわっと?!」
リントは耐え忍び、ロロノワは後方に下がった。林の方から新たに現れたのは五人の人影である。攻撃したのは四人の前に出た少女だった。
女の子は腰に手を当てた。
「ふ〜、悪そうな奴ら みんな吹っ飛ばしてやったわ」
吹っ飛ばれた男達は思わぬ不意打ちを受けてしまい気を失っているのかあちこちに散らばって倒れていた。
「リント、大丈夫ですか?」
ノアの魔法で怪我をしてないか心配そうに声をかけるティルに少し呆然としていたリントは返事をする。
「いや、大丈夫だが 流石に男達を全員吹っ飛ばすとは思わなかった」
リントの茫然とした物言いにティルは苦笑する。ティル達は先に行ったリントのもとにやっとたどり着いた。
そして姉妹はレーネスの姿を見て叫んだ。
「レーネス!!」
「アイナ姉さん、セリカ姉さん!」
レーネスは二人の姿を認め、不安と恐怖から解き放たれ、安堵して気が抜けた瞬間気を失った。
「レーネス!」
気絶した妹に姉達は慌てふためく。ティルは落ち着かせようと話しかける。
「きっとお姉さん達に会えて緊張が解けたんでしょう 休めるところに移動しましょ」
「ええ、そうね」
ティルの落ち着いた声に二人は少し冷静さを取り戻した。




