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魔法世界の少年ティルの物語 ~魔力ゼロで元魔王な少年は第二の人生を気ままに生きていきます  作者: yume
第三章:モルジア諸島編・魔性の歌姫と海の底に棲まう者
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第三話:天然


「こんにちは、カルアさん」


「こんにちは、リオちゃん 今日も可愛いわね」


 カルアはわきわきと指の運動しながら、無意識に後退するリオに迫っていたがーー


「よ、久しぶりだな カルアちゃん」


 いきなり目の前に現れた少年にカルアは目を見開く。


「あら? リントちゃんじゃない、久しぶり」


「え、二人とも知り合い何ですか?」


 そのことにリオは驚いた。


「まあ、ギルドに通っていれば顔見知りぐらいになるな」


「あら、その中でもリントちゃんは将来有望株だから目をかけているのよ」


 うふふとカルアは他意はなかったのだが、その言葉はリオには重くのしかかっていた。


(将来有望株…)



 それを察したのかリオの名前を出した。


「もちろんリオちゃんも、後ティルちゃんもね、全然見込みがないというわけではないわ 私の眼に狂いはないわ」


 鼻息荒くまくし立てる自分の兄を見かねた妹のミルカが制止に入る。


「兄さん、それぐらいにして」


「ミルカさん」


「こんにちは、ティルさん」


「こんにちは」


 ミルカはティルに挨拶をしたがその隣を見て目を細めた。少女は口元に笑みを準備しながら彼女に臨戦対戦を整えていた。


「こんにちは、ミルカさん 今日もいたのね」


「……こんにちは、ノアさん ええ、仕事ですので」


「あまり仕事ばかりですと体を壊すわよ」


「お気遣いありがとうございます 健康管理は気をつけているので」


「もう、相変わらず可愛くないわね、顔は可愛いのに」


「褒めても何も出ませんよ」


 ティルは喧嘩口調だが、二人が話し合っているのを見て微笑ましく見ていた。


「二人は仲がいいですね」


「どこがよ」


「どこがですか?」


 同じタイミングでティルの方向を見るのも一緒で、それが気に食わなかったのかお互いにそっぽを向けた。


(あれ……僕何かまずいこと言った?)


 どうしたものかと動揺していると声をかけられる。


「はは、朝から両手に花とは隅に置けないな」


「よっ、また会ったな」


「あ、マッケンさん こんにちは」


 そこにはギルド『騎士の鉄拳』の団長のヴィストリカ・マッケンがいた。カルアはマッケンに気づいた。


「あら? マッケンちゃん いらっしゃい」


「よっ、カルア」


「あの!」


 その後、ヴィストリカに声をかけたのはリントだった。


「先日は助けていただいてありがとうございました」


 見覚えのある少年にヴィストリカは誰かを思い出す。


「おお!あの時の坊主かっ この前のデュエル最高だったぜ なあ今度俺と対戦しないか?」


「え、あはは 流石にギルドの団長と戦うほど力はないですよ」


「ちょっとだけだって お前だったら本気で闘り合えそうだし」


 ズイズイと団長のペースに乗せられたリントが困っていると、いきなりグイと耳を引っ張られたヴィストリカは悲鳴を上げる。


「いててっ?!」


「ギルドの模範になる者が何を言っているんですか?」


 そこには眉間にシワを寄せた副団長のクラリッサ・メルがいた。


「それに私的な戦闘は厳禁ですってあれほど口を酸っぱくいってますよね」


「ウヴ?!わかったっ 分かったら耳を離してくれ!」


 その瞬間耳を離すと掴まれた部分は赤くなっていた。


「いてーな、もう少し優しくしろよ」


「大丈夫ですか? マッケンさん」


 ティルは心配そうに伺う。


「お前は優しいな」


 それなのにとヴィストリカが何か言いたげな目線をクラリッサに送ると彼は口元を引きつらせるのを見た仲間が抑え込む。


 そして彼以外にもいやそれ以上に機嫌を損ねたものがいた。


 マッケンはティルの頭を鷲わしと撫でていると低い声音が届いた。


「やけに仲がいいのですね マッケンさん」


「うん、何だ お前もやりたいのか?」


 ジト目で睨むミルカにヴィストリカは何気なく聞いたのだが、予想外の反応が返ってきた。


「え、それは……ティルさんに失礼ですので」


「ほ〜、なあ、ティル」


「はい?」


「ミルカ嬢ちゃんに頭を撫でさせてやってくれないか?」


「え、別にいいですけど」


 ティルは頭を差し出した。


 この団長……何を言い出すんだとミルカは一睨みすれば大抵は竦み上がる視線なのだが、生憎心臓が生えている団長には通用しなかった。


 いつまでもティルを待たせているわけにはいかないと思い、恐る恐るティルの頭を撫でた。


 サラリとした髪の毛の触り心地はに思わず手が動いた。


「ふふ、くすぐったいですね」


 ティルは他人から髪を触られる感触にくすぐったそうに笑った。そのことにミルカはハッとした。


「すみませんっ 綺麗な髪でしたので思わず……」


「そうですか? ミルカさんの方が綺麗だと思いますけど」


 その言葉を真正面から聞いたミルカのほおが赤らむ。


「そうでしょうか?」


「はい」


 ティルは普通に思ったことを答えたのだが、ミルカは下に俯いた。その姿を見た一同に衝撃が走る。


「お前って、天然だな」


「え、何のことですか?」


「本当に鈍いんだから」 


 隣にいる少女からも言われた。


「……ノア? どうしたんですか?」


 よく分からないティルは首を傾げて、ふとノアの顔を見るとほっぺたを膨らませ口を窄めていた。


・ヴィストリカ・マッケン

ギルド「騎士の鉄拳」の団長。豪快な性格がクラリッサの悩みの種。

・クラリッサ・メル

ギルド「騎士の鉄拳」の副団長。暴走しがちな団長のストッパー。キレると怖い。


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