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第三十三話:ティルが選んだクラス【第二章:完】



 先ほどルイズがティル達が帰ってきたことの報告を終えて、学園長はルイズを労い休むようにと伝えた。


「ご苦労じゃった、今日はゆっくり休むように」


「はい、それでは失礼します」


 ルイズが退室し、ルーカスはようやく一息をついた。


 フッド子爵のした所業の発端からギルドを動かすためには伯爵に秘密裏に連絡をしてリントのフォローをするように頼んだりしていたのだ。



「ふ〜、老骨にしみるわ〜」


 肩をほくじながらトントンと叩いていた時、裏側にあるドアが開いたのに気づいた。


「はあ〜、ようやく終わった」


 現れた人物は欠伸をしていたのでルーカスは労いの言葉をかけた。


「お帰りなさい、お疲れじゃたな」


「……ああ、ふぁ〜眠い ……それで、あの馬鹿息子と親はどうするんだ?」


 言葉にとげがある言い方にルーカスは苦笑する。


「うむ、あの親子が起こした所業は世間にバラしたら一家はおしまいじゃな、首の皮一枚で留めておくことにしようと思う、今頃伯爵が伝えているだろうーー」


「は〜、お優しいことだな 俺なら迷わず、世間にバラして自分たちがどれだけのことをしたのか見せしめにしてしまった方がいいと思うけどな」


 彼の遠慮のない物言いにルーカスもそれもまた一理あると思ったが、自分の考えを述べる。


「それも考えたんじゃが、人の恨みは果てしないからの〜」


 何気ないその一言に彼は押し黙り、そっぽを向いた。


「ーー俺はもう寝る」


 機嫌を損ねてしまったのかとルーカスは頭を抱えそうになったが、彼が立ち止まった。


「お前も少し休め」


 そう言い残して、彼は自室に戻って行った。


 ぶっきらぼうだが彼なりの気遣いの言葉に長年の友であるルーカスは可笑しそうに笑った。


(全く、不器用な方じゃ…)


 ルーカスは仮眠を取るためにそっと嘆息し、自分の寝室に歩いて行った。



 〇〇


 フッド子爵家は土地を買収していたことが世間にバレることもなく、不問となった。しかしもし同じようなことをすれば彼らがした所業を公開することを伝えた。


 フッド一家は反論することもなくこくこくと了承した。ヘンリーはその後、目を覚まして父親から話を聞いた彼は学校でとんと静かになる。悪いことをしたら自分に返ってくる、因果応報とはまさにこのことである。



 〇〇



 それからティルとノアはゆっくりと休みをとり翌日になった。ティルとノアは朝ごはんを食べてお茶を飲んでいた時にリオが現れた。


「昨日はゆっくりと休めましたか?」


「はい、おかげさまで」


 ティルはペコリとお辞儀をした。


「それは、よかった ここにきたのはどのクラスに入るかを決めてもらいたくて……」


「あ、そういえば そうでしたね」


 いろんなことがありすぎて、ティルは忘れていた。それどころじゃなかった方が正しいのだが、リオもそれに同意した。


「それで、今日は最終日の見学に行こうと思っているのですが、今から大丈夫ですか?」


 予定を入れていないティルは一応ノアに聞いた。


「いいかな、ノア?」


「うん、私はいいよ」


 コクリとうなづいたノアにティルはリオに学校に行くために外出用の服に着替えて部屋に戻った。



 そして、ティル達三人は学園に向かいクラスをひと通り体験して、最後はナイトクラスとヴィザードクラスが訓練しているところに向かった。


 前回は先生がいなかったが、二人の先生がいてリオとティル達は挨拶をして見学した。


 ティルは気になっていたリントのことをリオに聞いた。


「そういえば、リントは大丈夫ですか?」


「リントさんはもう大丈夫みたいですよ、ほらあそこにーー」


 リオの目線の先には元気よく対戦しているリントがいた。その姿にティルは呆気に取られた。


「あれ? リントって、体調はもう大丈夫なんですか? 何日も閉じ込められていたって言ってましたが……」


「はい、昨日の夜学園に帰ってきてヒーラー科の専門の先生に見ていただいたみたいで問題はないとのことです」


 そのことにティルは驚いた。


「すごい体力ですね」


「お父さんが獣人族の血のおかげかもしれませんね」


「なるほど……」


 ティルは納得していると、リントと目があい気づいてくれた。


「あれ、ティルじゃん」


 嬉しそうな声をかけられたら、ティルも嬉しくなった。


「リント、もう勝負は終わったの?」


「ああ、終わったぜ」


 リントと対戦した相手の顔を見てティルは驚いた。


「君は……」


 そこには昨日壮絶な戦いを繰り広げたオウガがいた。ティルの驚く表情にリントが説明した。実はオウガの沙汰もヘンリー一家と同じようにこれ以上悪いことをしなければ同じく不問となったことを教えてくれた。


「そうだったんですか…」


「お前、確か」


 見覚えのあるティルの顔にオウガは訝しむ。


「僕は……」


 リントはオウガにティルの紹介をする。


「こいつは俺を助けてくれた友達のティルだ オウガ」


 リントの呼びかけにオウガは目を見開く。


「……そうか、俺がいうのもなんだが………先日は色々と迷惑をかけた」


 まさか謝れると思ってなかったので、最初の印象よりも口調が柔らかくなったことにティルは驚いた。それよりも気になった事があってーー



「っへ……あ はいってーーそのほっぺはどうしたんですか?」


 オウガの頬が赤くなっていたことにティルは驚く。昨日はそんな怪我はなかったはずだがとティルは昨日のことを思い出す。


「あの後、お袋に会いに言って話したらぶん殴られた」


 ヘンリーに加担していた事がバレて病室で、看護師に止められるまでしこたま殴られたらしい。



「そういえばお前の母さん、病床にいるんじゃなかったっけ……?」


 ティル達が会う前にリントもオウガの頬のことを聞いて事情を話した。


「え、そうなんですか?」


 ティルは驚き、リントは不思議そうに首を傾げた。それにオウガは淡々と答えた。


「ああ、怒りが沸点に達すると見境がなくなる……曲がった事が嫌いだからな……俺は母親のためと思いながらも、自分のことしか考えてなかった」


 苦悶するオウガにリントは肩をポンとのせた。


「まあ〜いいんじゃねえか、まあ結果的にいい方向にいったんだから」


 リントがされた仕打ちは決して生易しいものではない。けどそれでもリントは優しい言葉をかけてくれる。


「本当にお人好しだな……」


 オウガにとってそれはぶっきらぼうな彼なりの感謝だった。


 ティルはオウガのことをよく知らないが先日あった時よりも表情の変化が大きいことが伺えた。それがいいものだと思いたい。


 リントはティルにどうしてきたのかを聞いた。


「それで今日はどうしたんだ?」


「今日は見学の最終日なので、どこにしようか思ってたのですが……」


 ーーすでに決めているらしいティルの選択をしたクラスにリントは気になり聞き出した。


「へえ〜、それじゃあ 決まったのか」


「はい、色々と見て回って、僕はーー冒険科に入ろうと思います」




「………うえ?」



 青天の霹靂ーーまさか自分のクラスに入ってくれるとは思ってなかったリオは間の抜けた声を出した。それに加えて彼、リントもまた驚きの一言を放つ。


「ふ〜ん 冒険科か、ティルが入るなら面白そうだしーー俺も入ろうかな」


 リントの予想外の言葉にリオと同じように今度はティルが驚きの表情をしたのを見たノアは思わず笑った、その日の青空はとても綺麗なほど眩しかった。



読んでいただいてありがとうございました!

ブックマーク、評価などしていだだけると飛び上がるように喜びます!


別作品に『今昔あやかし転生奇譚』という作品があります。妖怪ものが好きな方におすすめです٩( 'ω' )و


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