表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/150

第二十七話:とどのつまり


「彼らは私の友人ですが、よろしいでしょうか」


 伯爵は申し訳なさそうに子爵に許しを問いかける。


「あなた達は……」


 驚く子爵にヴィストリカは口を開いて自己紹介をした。


「俺はヴィストリカ・マッケン 伯爵の直属のクラン騎士の鉄拳の団長だ」


 それに倣ってクラリッサも挨拶をする。


「そして右に同じく副団長を務めているクラリッサ・メルと申します」


 人気のギルドに客人達も気づいていたが、失礼のないように声を潜めて話し出した。


「やっぱり、そうだったのね」


「すごいわね」


 伯爵が一目置かれているのはギルド直属のものを抱えていることもあった。


「いや〜、それは頼もしい限りですね」


 言外に羨ましいとサマエルは下心を持ちながら伯爵を褒めちぎる。


「ふふ、毎日が大変ですよ。 それよりも何だか皆さん浮かない様子ですね? 何かあったのですか?」


 伯爵は周囲を窺う様子にサマエルは慌てて取り繕うとする。


「いえ、何もございませんよ」


「ほ〜、しらばっくれるのか」


 嘘を突き通そうとするサマエルにリントは睨み付ける。


「貴様…お前達何をしている その者を捕らえろ」


 サマエルは使用人達に命令するが、そのことに伯爵は異議を唱える。


「少し待ってください、私は今来たばかりなので訳を知りません」


「訳も何も……」


 反論しようとするサマエルに釘を刺す。


「私は今、彼に聞いているのです」


「……っ 失礼しました」


 伯爵はリントに視線を移した。そして話の経緯をリントから聞いた。


「それが本当なら由々しき犯罪です」


「っ……伯爵、その子供の世迷言は全くのでたらめです」


「ほう、なぜでたらめと? 査問官に見て貰えば話は早いはず、今からでも使いを出して手配してきましょうか」


「お、お待ちください そんなことしなくても」


「実はですね、ここにきたのはある方の願いから来ているのですよ」


 伯爵が持っていた筒状をサマエルに渡し文章を読むと、子爵は愕然とする。そこにはーー


(これは、査問状の召喚)


 それとーー


 マルドゥーク学園長


 この学園都市のトップである人物の名前が記されていることにサマエルは青白くなる。


「伯爵…この条件とは」


 ヴィーノは微笑みサマエルに説明する。


「条件は彼が決めることです」


 サマエルは唖然としてリントを見つめた。絶望する表情にリントは面白そうに笑った。


「さてと、どうしたものかね あんたにとって一番嫌なことって何だ?」


「ひい」


 子爵は引きつる声を出した。


「金とかしか大事なものはないだろうな、俺はな自分の家族を一番傷つくのは死んでも嫌なんだよ」


 リントの殺気立つ覇気にサマエルは体を震わせ後ずさる。彼の放つオーラにヴィストリカは目を見開く。


「おいおい、あれで学生かよ 将来が末恐ろしいな」


 思わず言うヴィストリカにクラリッサはわずかにうなづき同意する。


「ええ、そうですね」




 〇〇



 時は数日前に戻り、ギルドの方で団長に付き合っていたら伯爵から緊急の要請が入り、すぐに参上した。


「すまないな、休暇中に」


「いえ、伯爵直々の緊急要請なので」


「おう、ヒック それで何があったんだ?」


 クラリッサは主人の前でしゃっくりをするなとヴィストリカに小言を言いたかったが。


「実はね、一人の学生が監禁されているみたいなんだ情報が入ったんだ」


「! それはまた、どこに?!」


「問題の首謀者は突き止めている だがそれが問題なのだ 同じ貴族らしい」


「その情報は」


「この情報を持ってきたのは学園長です」


「!!」


「それは」


 間違いがあればクランが咎められる恐れもあるが、 確かな情報元にひとまず安心し、学園長と伯爵の交友関係を知っているクラリッサは悩む必要がなくなった。


 伯爵は手を顎に添えて眉を潜めた。


「問題はその家にどう乗り込むか、それで明日パーティーが開かれるみたいだから別の救助隊がそこを狙って救出する見たいなんだ」


「なるほど」


「そこで私たちが来て、彼らを捕らえる感じですかね?」


「捕らえるのは語弊があるな…最悪、拘束する形になるだろう、学園長から他にもある」


 手紙の内容を聞いたクラリッサはそれを聞いて、憤慨した表情をする。血の繋がらなくても同然のもの達を人質に捉えて正気でいられるほどお人好しな人物がいたら奇跡だろう。自分だったら完膚なきまで再起不能にしている。


 だから目の前で彼が感情が昂っているのをクラリッサ達はどのように彼が沙汰を下しても黙って見つめることしかできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ