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第二十一話:作戦

ティルの視点が続きます。

 ティルとノアが夕食を食べた後、セスは家にやってきてリントが危機的状況にいることを説明した。


 そして三人で話しあい、ひとまずリオに伝えることにした。


 この学園には学生寮の他に職員寮がある。職員寮にいるリオのもとにやってきた三人に驚いていたが、彼は中に入れた。


 リオの部屋は本や紙の束で埋め尽くされていていかにも彼らしい部屋である。冒険家の小父の影響もあり、いろんな本を収集していたのだとティルはどんな本があるのかと見てみたい気持ちもあるが、今は急を要する。


「すみません、夜遅くにきてしまって」


 ティル達はアポもなくいきなりきたことを謝った。


「いえっ…何かあったんですか?」


「はい、それが ある人物を探し始めたのがきっかけ何ですが…」


「ある人物?」


「リオ先生はリントさんって覚えていますか? この前、見学であった時の…」

「ああ、覚えていますよ リント・ファルンくんですよね」


「はい、きっかけは最近見かけないなと思い、どうしているのかと心配している時にセスさんと出会って」


 リオはティルの隣にいる初めての人物を見た。


「始めまして、セス・ラヴァートと申します」


「こちらこそ、私は冒険科の非常勤を勤めているリオ・フィンナッシュと申します」


「それで、この人がある手がかりを掴んでリントさんが危険だと分かったんです」


「リントさんが危険?! それはどういう」


 セスはティルとノアにも話してなかったのでここで説明した。


「それは僕の能力(スキル)も使いました」



「能力?」



 リオはティルとノアに説明する。


「能力とは生まれつき持っている特殊な才能ということです」


「それはすごいですね」


 セスは話を進めた。


「それで、ある手紙を発見して念視をしたんです。念視というのは思考や記憶などを読み取ることができるんです。動けないという状態からリントさんが監禁されているかもしれません」


「そんなーー!」


 リオはあまりリントと面識はなかったが、知り合った生徒がそんな危険にあっているのなら助けなければと奮起する。


「分かりました、 今から学園長室に行きます」


 リオは三人を連れて、学園長の秘書に取次、面会を希望するとすぐに入ることができた。


「すみません、夜分遅くにきてしまって」


「いやいや、ご飯を食べ終わってまどろんでいたところじゃ、それでどうしたのかの?」


 学園長はテーブルの上で手を組んだ。リオは早速リントという生徒が行方不明になり、もしくは監禁されていることを伝えた。


「リント・ファルンくん、確か彼は中々の魔法の使い手で、捕まるへまはしないはずだが」


「リントくんはどうやら、弱みを握られているようです。家族を人質にとられているようで……彼の能力で判明しました」


「ほう、彼の……」


 リオはセスに視線を送ると学園長もセスも見た。


「他にも分かったことはあるかね」


「はい、リント君が監禁したのある家の使用人みたいで」


 セスはある名前を告げた。


「彼はフッド子爵家の使用人みたいです」


「フッド子爵、確か息子が学園に通っていたな」


「それもどうやら関係あるみたいです」


「人質もとられ、監禁されて、ギルドは動かせない …でもせめて、リントくんの救出できれば」


 リオの苦悶の表情ににティル達も同じ気持ちだった。そしてセスはおもむろに口を開く。


「学園長、僕にある考えがあります」


「ほう、それはどんな考えかね」


「フッド子爵は息子を溺愛して、パーティーを頻繁にしているみたいです。そのパーティーに潜入するのはどうでしょうか?」


 ずっと黙っていた疑問に思いティルは口を開く。


「それは……僕とノアに彼との面識はないですが」


 それは幼なじみのカリーナの家にいて招待状がなければ追い出されることもティルは知っていた。


 セスはうなづき話を進める。


「だから、彼にとって興味がある人物と堂々と入ればいいんです」


「一体、誰ですか?」


「ナイトクラスのエレナ・マリオットさんです」


 ティルはどこかで聞いた名前に思い出す。


「その名前って確か?」


 次にリオは話を続ける。


「はい、この前オウガ君の暴走を止めた女子生徒です。今すぐお願いしに行きたいところですが、エレナさんが引き受けてくれるか」


「それは私からもお願いしよう」


 秘書に頼み、エレナには翌朝来ることを伝えた。そして、事情を説明された彼女は協力に前向きだった。



〇〇


 

 少し時間は遡る。


 ヘンリー・フッドは気絶したリントが独房に運ばれたことを聞いてから、自分の思い通りになったことを喜んでいた。


 そして檻の中で拘束されたリントの目の前に現れ、話しかけた。


「やあ、気分はどうだい?」


「……お前、誰だ?」


 意識が定かではないリントはヘンリーに問いかけた。


「あれれ? 僕のこと忘れたの? あの時一回ぶつかったけどな」


 虚な目をしたリントに面白そうに笑いかける。


「ふふ、マークの薬が効いているようだね まあ、しばらくはそこでじっとしていてよ」


 ヘンリーはそういいリントの元を去る。そこにはヘンリー以外の者もいた。


「オウガくん、行こうか」


「ああ…」


 ヘンリーと契約を交わしたオウガ・ローウェンは拘束されたリントに目を細めたが、何も言わず踵を返した。


 そして、翌日ヘンリーに朗報が届く。恋い慕うエレナにパーティーに行ってみたいと言われ、喜んで彼女を招待する。


 そのことを両親に伝えると嬉しそうに笑顔で話すので愛息子を喜ばせるために奮発して盛大にすることが決まった。


 そしてティル達もまた準備が整いつつあった。


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