第二十話:セス・ラヴァート
ティル視点からセス視点に入ります。
一方ティル達はカルアとミルカに入学することを伝え終わり、十分な休みを取りながら、まだ入学していないが学園生活を満喫していた。
そして学園に通う日がいよいよと迫る頃だった。ティルはふとつぶやいた。
「そういえば最近、リントさんを見ていませんね」
「……うん?、リントとはこの前のあの時に現れた男か」
「うん、最近どこに行っても見かけないな〜って」
ティルとノアは時間が空いているため午前中学園を散歩することが日課となっていた。
学園は1日では回りきれないほど部屋の数がありリオから地図をもらい、日によってどこに回るか決めた。
そして、夕暮れ近くが経った時、何となくだったが彼のことを思い出したのだ。
また出会ったときのようにひょっこりと現れると思っていたのに出会う気配もないので何だか奇妙な胸騒ぎがしたのだ。
(何だろう……何か嫌な予感がする)
そんなことを考え込みながら、曲がり角を曲がろうとした人がいることに気づくのが遅れた。
ノアもティルの腕を引っ張ろうとしたが、気づいた時に遅かった。
(あわっ?!)
「いて」
「もうティル?! 前はちゃんと見ないと」
(うゔ)
年下の女の子に叱られて、ティルは気恥ずかしい気持ちとなったが考え事をしてぶつかったのは自分の過失なので素直に謝った。
「すみません、大丈夫でしたか?」
「はい、僕は何とか」
その時、初めてぶつかった少年の顔を見た。そして、気づく。
「あれ? あなたが確か」
ティルがぶつかった人物はこの前二人組の人攫いから助けてくれた少年だった。その少年もまたティルのことに気づいたようだ。
「君は…確か」
同じことを思ったのだろうティルは頷いた。
「あの時は助けてくれた方ですよね」
「…はい、あの時以来ですね」
「ティル、知り合い?」
蚊帳の外だったノアはティルに聞いた。
「はい、この前 ピンチの時に助けて頂いた方です」
「そうなの? ティルを助けていただいてありがとうございます」
普段はタメ口で話すことが多いノアだが、こうゆう時には礼儀をちゃんと守っている。周りが年上だらけだったのもあるだろうが。
「いえ、僕は大したことは 確かティルくんでしたよね」
「はい、覚えてくれたんですね」
「はは、あんな出会いをしたらなかなか忘れられないですね そういえば、自己紹介がまだでしたねーー僕はセス・ラヴァートと申します」
「彼女はノアと言って、僕のパートナーです」
「そうなんですか! もうパートナーを見つけているなんてよほど相性がいいんですね」
その言葉にノアは嬉しそうな顔をしたのをティルは見てはにかむ。
「学園にいるということは入学できたのですね、おめでとうございます」
セスは嬉しそうに目を細めた。ティルは照れ臭そうにお礼を言った。
「ありがとうございます」
「それなのに……」
「?」
口を閉じたセスにティル達は不思議がる。
「どうしたんですか?」
「いえーー入学できたのに、何だか浮かない顔をしていますね」
いきなり図星をつかれた問いにティルは驚く。
「そんなに顔に出ていましたか?」
「う〜ん」
この時、セスはティルの天然に気づいたが話を進めた。
「考え込むぐらい、何か困りことありませすか」
「あ〜、えっと それは」
他人に話してもいいのかと、ティルは悩んでいると袖を引っ張られる感触に気がついた。
「いいんじゃないの、話して見れば」
ノアに首肯し、その言葉に背中を押されたティルは話すことを決めた。
「実は……」
リントという少年の姿が見えないことに心配していることを伝えた。
「なるほど、それは心配になりますね」
「はい、一度リオ先生に聞いてからの方がいいかと思いまして」
「そうでしたか、それじゃ僕が代わって確かめてきましょうか?」
「えっ」
「寮ならすぐそこですし」
ティルはどうしようか迷ったが、気になっていたので
「それじゃ、お言葉に甘えて よろしくお願いします」
「分かった すぐに伝えますね」
「分かりました」
そしてそこでセスとティル達は一旦別れることになった。
〇〇
それから彼はすぐに寮に赴いた。
学園内には学生が生活するための住まいがあり、男子寮と女子寮がある。共同生活を営むものが多く、トイレや浴場は共同、食事をするのに食堂が提供されている。各部屋ごとにバストイレやキッチンがあり自炊するのも可能である。
男子は主に2人1組の部屋となっている。学生寮はセキュリティがあるので、学生証がないと入ることができない仕組みとなっている。
そこを通り抜けて、ポスト入れで彼が何階の住人か確認して向かった。
リントの部屋はすぐに見つかり、部屋の扉をノックした。すぐに中から返事が返ってきて中から人が現れた。
「あんた誰だ?」
「僕はリントさんの友人で、彼に貸していたものがあったので取りに来たんです」
「ああ、そうか」
リントと一緒の部屋のもう一人の学生だった。
「お邪魔します」
共同って言っても寝室は一人ひと部屋と確保されている。リントの部屋は入って右手にあった。するりと部屋の中に入ったセスは何か彼を見つける手口がないかと物色した。
そして彼の机にあった手紙が気になった。
「これは…」
「あったか〜?」
「はい、ありました」
あまり時間が長いと怪しまれるのでセスはそれを取り、場所を移動してそそくさとセスは退室した。
セスには能力があった。それは人やものの考えや記憶を読み取る能力だった。手紙から思念を感じたセスはすぐに気づいた。
そしてリントがここ数日、あった出来事を見て意外なことを知ったのもまた偶然である。そして嫌な予感を感じたセスは送り主に手紙を送ることにした。
リントの所在を知らないかと。
使用人のマークもといマイケルはセスから受け取った手紙を見て返事を返した。
何も隠すこともなければ饒舌になるか慌てふためくかと思いきや相手も上手で落ち着いていた。
マイケルはリントは病気で今、治療中である、学園にはしばらく休むことを伝えた。セスはすぐに返事を返した。
「ご病気だったとは、お大事に」ということを伝えると彼には必ず伝えると返事が返ってきた。
何回かのやりとりが終わり、セスは嫌な予感が的中した。それは動けないという状態、拘束もしくは監禁されていることは分かった。
セスは約束通り情報を伝えるためにティル達にどう話すか整理した。




