第二十回:誤魔化せない気持ち
翌日になり、朝早く起きたレーネスはエドワードのことが気になり、使用人の者に尋ねると彼の元へと案内してもらった。
(まだ起きていないのなら、看病してあげたいし、これは……そう! 恩返しなだけで)
レーネスは自分の中で色々と言い訳をしながらエドワードのことが気になっていた。
彼のもとに案内されたレーネスは少年の状態を伺う。
ぐっすりと眠っているが、眉間にシワを寄せている姿にあまりいい夢を見ていないのかと心配になった。
レーネスは小さく咳払いをして、周囲に誰もいないことを確認して歌を歌った。少しでも安らかに眠れるようにと。
エドワードは先ほどの悪夢が嘘のそうに消えて、歌声がどこからか聞こえてきた。
(誰の声だ……すごく落ち着く)
そして、眉間のシワが徐々に無くなり、穏やかな顔つきになった。
『良かった……』
彼の寝顔を見ていたら、レーネスは安心したのか目蓋が重くなり意識が遠のいていった。
『少しだけ眠ろうっ………と』
その後リオ、ティル、ノア、セリカ、アイナ、リントの順に起きた。時間は過ぎていきアイナとセリカは寝室にレーネスがいないことに驚いた。
昨日は怖い思いをしたばかりなのにともういなくなってしまったのかと二人は慌てて周りを探し出そうとしたがそれはすぐに解決した。
なぜならリオがやってきて、レーネスのもとに案内された。
「もうあの子ったらどうして何も言わず」
ドアを開けるとアイナは開口一番にレーネスを叱ろうと思っていたが、目の前の光景に目を奪われ言葉を失った。
どうして固まっているのか後ろにいたセリカも同じものを見て、「ま」っと頬を染めた。
「全く、しょうがないんだから」
レーネスはいるのだが穏やかな表情で寝ており、エドワードという少年の手を握り締めていた。
寝ている間に何があったのか分からないが、きっといいことがあったんだろうと思い、先ほどまでの怒りが何処かへと消えた。
「ふふ」
アイナは笑い、気持ちよさそうに眠る二人をゆっくりと寝かせた。
このモルジア諸島の料理は古くから香辛料の国として有名である。
島々にはたくさんの香辛料であるこしょうや、唐辛子、ナツメグなど育てるには亜熱帯の気候は最適である。
他にも香辛料以外の作物が実っており、トマト、とうもろこし、じゃがいも、ピーナッツ、パパイヤ、パイナップル、サツマイモ、キャッサバなどがある。
モルジア諸島の人々には米を主食としている。
ティル達の主食はパンであり、小麦なので新鮮さがあった。粘りが少なく、細長い米はピラフやチャーハンなどに適している。
朝食はこの数日いろんな料理を見たがナシゴレンという料理がティル達は気に入った。朝食に舌鼓を打ち、ティル達はリオから話があることに耳を傾けた。
「昨日、二人の先生から連絡がありまして明日の調査が終わり次第、ミクロ島に着くとのことです」
それを聞いたミクロ島の村長ロッシュ・モーガンは嬉しそうに声をあげた。
「それは大変助かります、学園の先生が三人とは頼もしい限りです」
「ええですが、僕はまだまだ未熟者なので」
手を振ってリオは本当のことを言ったつもりなのだが、それを社交辞令だと思われる。
「ふふ、またまた ご謙遜を」
褒められ慣れていないリオは村長のベタ褒めに引き気味である。
「それではもう少し滞在されるとのことでよろしいでしょうか?」
「は、はい、よろしくお願いします」
リオは丁重にお辞儀をした。
「それと少しお聞きしたいことがあるのですが」
遠慮する村長の物言いにリオはなんだろうと話を聞き入れた。
「はい、なんでしょう」
「妹さんが見つかって喜ばしいことなのですが、あの子供は一体何ものなのでしょうか?」
「あ〜」
リオはそのことに戸惑った。一応レーネスから彼のことを少し聞いていたので治療を優先させたが、少年が海賊の奴隷ということは説明しなければならない。
リオはこれ以上村長に心労をかけるわけにはいかないと彼のことを説明した。
「実は……彼は海賊の奴隷にされていた少年なんです」
その言葉に村長は驚きの表情をした。
「奴隷とはまさかそんなーー?!」
動揺する表情にリオも同意するようにうなづく。
「私も嘘だと思いましたが、本当でした 現に彼は魔力を封じる隷属の首輪をつけられているんです」
「そんなものをつけるとなら」
「はい、一刻も早く首輪を外してやりたいですが、僕の手では……明日先生達が来るのでそれまでも何事も起きなければいいのですが」
「そうですね、彼の事情はわかりました 私たちも出来る限りの彼の介抱をいたしましょう」
村長の優しさにティル達は安堵した。




