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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 低殺傷兵器  作者: 橋本 直
第十七章 考えを切り替えての行動開始

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第87話 とりあえず昼飯でも

「なんだ聞いていたのか……悪趣味だな」


 カウラは不満そうにそうつぶやいた。 


『陰口を言おうとしていた奴に言われたくねえよ!それよりオメエの方が心配だ。銃撃戦しか能の無い『ラスト・バタリオン』には情報収集能力なんて期待するだけ無駄だからな』 


 そう言うとしばらく雑音が響いた。そしてすぐに車のコントロールパネルの画面に映像が映った。そこではかなめとアメリアが並んで寿司を食っている場面が映し出された。多分端末の一つをカメラのつもりでテーブルの端にでも置いているらしい。


「そちらも今昼飯か。それに寿司か……回転寿司とは考えたな。確かに今の時間になってしまうと個人の食べ物屋は休業時間だからな。その点回転寿司は常に開いてるから時間を気にする必要が無い」


 ちらちらと前方と画面の両方に気を配りながらカウラはそう言った。 


『まあしかたねえだろ?今の時間は開いている店が限られるんだから』 


 満面の笑みで金ならあるかなめはトロを頬張っていた。それを見ながら時々画面を見つめつつ、浪費癖で金欠のアメリアはかっぱ巻きを続けて口に運んでいた。


「そうだな。カルビナ、寿司でいいか?」


 カウラはかなめ達に触発されたようにそう言った。 


「できれば安いところが良いんすけど……給料の大半を国に仕送りしているもので……」


 いつもの控えめなラーナに戻る姿が滑稽で誠は思わず噴出した。


「じゃあ……この近くならハンバーガーの店があったろ?」


 カウラは慣れた手つきで車のギアをシフトダウンするとそのまま横道に車を乗り入れた。 


「チェーン店ですか?」


 ラーナはうれしそうな顔でそう尋ねた。


「確かそうだよな」 


 カウラのいう通りなので誠はそう言ってうなずいた。


「ならそこで良いっすよ……神前曹長もその方がいいっすよね?」 


 カウラは誠がうなずくのを見ると笑みを浮かべてアクセルを吹かした。年中アニメグッズの購入で金欠の誠にもその方が助かるのは事実だった。


「そう言えば……西園寺はラーナの意見に特に反論しなかったな。それとなにやらラーナの端末にアクセスしていたみたいだが……何か掴んだのか?」 


 そんなカウラの質問にウニを頬張りながらタレ目のかなめは大きくうなずいた。


『当たり前だろ?アタシを誰だと思ってるんだよ。そんな作業でも並行してやっていなきゃなんでこんな奴と……』 


 ウニを頬張るかなめの隣でかっぱ巻きを食べていたアメリアが顔を上げた。


『かなめちゃんひどい!こんな奴なんて!』 


 アメリアの声だけが端末に響く。思わず誠も苦笑しながらラーナを見てみた。彼女はと言えば相変わらず自分の端末を叩いて作業を続けていた。


「で……結果は?」 


 カウラはそう言って画面には一切目をやらずハンドルを切った。


『焦るなっての。そんなに簡単に行くわけ無いだろ?とりあえずラーナのデータは正確だったってことはよく分かったよ』 


 かなめはウニの次は大トロの皿を取った。


「あんがとうございます」 


 ラーナはついでのように答えた。それが気に入らないと言うようにかなめはかっぱ巻きを口の放り込んだ。


『アタシも豊川の街をこうして回るのは初めてだが……まあ予想以上に複雑だわ、この国も』 


 かなめは貴族制国家で強固な身分制度が障害となって様々な社会問題が起きている『大正ロマンの国』甲武国の出身なので東和共和国の事情にはそれほど精通していなかった。


「実のところ本当の意味で東和が大国になったのは先の大戦のあとの復興景気以降だからな。それを考えて見ればこういう地方都市の矛盾と言うものも見えてくる」 


 カウラは複雑な表情を浮かべてそう言うと静かにうなずいた。


『難しいこと言うじゃねえか。まあそんなことはどうでもいいとして……今回の事件。誰が犯人でもおかしくない気がしてきたよ。特に旧市街の新たに越してきたアパート住人と旧住人の軋轢は昔から酷いもんだったらしいや。それが今回の法術の存在の発表。火に油を注いだようなもんだ』 


 そう言いながら再びかなめは回転するベルトから高そうな軍艦巻きを手に取った。


「以前は市民団体やら市役所の担当窓口やらが仲介に入ってなんとか騒ぎにはならないでいたらしいが……すでに何軒かの訴訟が起きてる。ほとんどが法術がらみだ。アタシ等が法術師を探して歩くと言い出すかも知れない以上、豊川署の連中が会議から締め出した理由は読めてきたよ』


 かなめは難しそうな表情を浮かべてウニの軍艦巻きを平らげた。


「恐らく法術師をめぐるトラブルの話題が会議でも取りざたされるだろうからな。うちが法術師なんてものを世の中に発表する機会が無ければよかったと言うお決まりの愚痴も叩けなくなるだろうからな」 


 納得したようにカウラはうなずいた。誠はすぐにラーナに目を向けた。誠もラーナも法術適正のある法術師である。恐らく同じように部屋を探したりアパートに暮らしたりすれば同じように差別や嫌がらせを受けることはすぐに想像が付いた。そしてそんな世の中にした法術の存在の顕現化を行なったのは他でもない『近藤事件』での誠の法術による敵巡洋艦の撃沈だった。


「西園寺。そこらへんは後で話す」 


 誠の動揺がカウラに見透かされていたようでカウラはすばやく話を変えると端末を消した。


「気にするな……と言っても無理か」 


 そう言うとカウラはハンバーガーショップの駐車場に車を入れた。そしてそのまま車をドライブスルーの場所に移動させる。


「食べていかないんですか?」


 訪ねてくる誠にカウラは疲れたような笑みを浮かべるだけだった。


「そう……だったな。カルビナはどうする」 


 駐車場にハンドルを切ろうとしたときに助手席のラーナが思わずカウラの左手を押さえた。 



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