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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 低殺傷兵器  作者: 橋本 直
第三十二章 『革命家』の語る『恥ずべき国・東和共和国』

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第135話 意外なる店

「ここですよ、旦那。店構えからして良い感じでしょ?」


 北川はそう言うとありふれた何処にでもある商店街のこれもまたありふれた真新しい焼鳥屋を指さした。


 そこには『月島屋』と言う看板が出ていた。


「焼鳥屋が昼からやっているのか……この好景気だというのに。世の中酔狂な人間もいるものだ」


 桐野は無関心層に北川に案内されるままに縄暖簾をくぐった。


「いらっしゃい!」


 和服の女将が笑顔で北川達を迎えた。その姿に見とれながら二人は一番奥にあった二人掛けのテーブル席に着いた。


 昼間だけパートに来ている中年の女の店員が北川の所にやって来た。


「とりあえずビールと……」


 そう言うと北川は桐野の顔色を伺った。


「日本酒を冷で頼む」


 北川と桐野の注文をそれぞれ聞くとパートの不愛想な女店員はそのままカウンターの向こうへと消えていった。


「じゃあ、あてはなんにするかねえ……なんだよ。焼鳥屋だって言うのに焼鳥は夜しか出さねえのか……じゃあ、鶏のから揚げと鶏の刺身でもつまみますか。旦那は?」


 北川は昼用のメニューを手に取るとそうつぶやいた。


「俺は何でもいい。鶏のから揚げを二人前頼めばいいだろう。甲武の人造肉よりはるかにマシだ」


 桐野は無関心そうに言って店員が出してきたお通しに箸を伸ばした。


「それにしても旦那……今回の仕事で俺達のコンビもしばらくは解消って訳ですね」


 北川はしんみりとそうつぶやいた。


「貴様の地球行きの話か?貴様には世話になったな、礼を言っておこう」


 桐野は珍しくそのプライドの高そうな表情を崩して笑みを浮かべた。


「桐野の旦那からそんな言葉が聞けるとは思ってなかったですよ。こりゃあ雪でも降りそうだな」


 北川は皮肉を込めた調子でそう言った。


「次に来る俺と組む人物は『廃帝』の娘だと聞いているからな……色々気兼ねなく話せるお前の方がやりやすかったのは事実だ。俺は生きている女には関心が無い。女は死んだ女に限る」


 桐野はそう言って店内を眺めた。ありふれた郊外の焼鳥屋の店内の風景がそこに広がっていた。


「そうですね。『廃帝』陛下の娘さん……リョウ・カラとか言いましたか?あの人も旦那と同じ不死人らしい。なんでも遼帝国の『法術武装隊』の隊長をしてた御仁だとか……これまでみたいにだんなが自由に辻斬りをするわけにもいかなくなる訳だ。これまでの様に辻斬りをしては死んだ女を犯す楽しみもできなくなる」


 北川は声を潜めながらそう言って笑った。


「とりあえず、ビールと日本酒です」


 酒を運んで来たのは意外にも女将の方だった。彼女を見る北川の視線にいやらしい表情が浮かぶ。


「ありがとうさん。女将さん、きれいですね」


 北川は人懐っこい笑顔を浮かべて妖艶な和服の女将にそう言った。


「そんなことを言っても何も出ませんよ」


 女将はそう言ってビールと日本酒をテーブルに置いてそのまま立ち去った。



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