第127話 『駄目人間』の思惑
「でも……外したら隊長がこのメンツで東都警察に私達を出向させた意味が分からなくなるじゃない。私としても誠ちゃんが外れた方がいいと思うけど……隊長の意向もあるしね」
出向を提案した張本人であるアメリアにはその程度の自覚は有った。
「叔父貴の都合か……そうだけどな」
アメリアのフォローにもただかなめの表情は曇るだけだった。誠の能力は干渉空間展開と領域把握能力の二種が確認されていた。干渉空間を展開し、その中の存在を有る程度意のままに操れる。それは先日の死者を出した事件を見ればかなり危険な能力だった。そして領域把握能力をハッキングして他の隊員の意思を読み取られてしまえば逮捕どころの話ではなくなる。
「今の神前に必要なのは自分の力を使いこなすこと。そしてアタシ等が試されてるのは法術師を使いこなせってことか……相手が誰でも……そう言いてえのは分かるんだけどさ」
再びかなめがこめかみの辺りの長い髪を掻きあげた。沈黙がその場を支配した。
「でもアタシも法術師っすけど?」
ラーナは相変わらずモニターから目を離さずにそうつぶやいた。思い出したようなかなめの表情。そしてアメリアがうれしそうにうなずいた。
「かなめちゃん。ラーナちゃんも捜査から外すつもり?」
アメリアはかなめに向けて肝心の人物を外してどうするんだと責めるようにそう言った。
「こいつは慣れてるから良いんだよ!」
かなめはやけになってそう反論した。
「慣れてるって……この種の法術師が発見されたケースはほとんどねえっすけど。アタシの力も乗っ取られるかもしれないっすよ。まあ、アタシにはそうならない自信はあるっすけど」
そんなラーナの言葉にかなめはさすがに頭に来たようで手を上げかけたものの静かに右の握りこぶしを静かに下ろした。
「ああ、ようやく我慢を覚えたか」
カウラは静かにそう言うと再び画面に目をやった。
「うるせえよ」
カウラに茶化されてかなめは苦笑いを浮かべていた。




