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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 低殺傷兵器  作者: 橋本 直
第二十五章 生きている屍人

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第117話 追い詰められた男

 四月から始まる法科大学院の授業に向けて、水島徹は勉強に抜かりが無かった。


 元々今度入学する明法大学より格上と思われているが大学同士の交流が盛んな城北大学の社会学部出身と言うこともあり、時には明法大の法学部のノートを見せてもらったこともあったのでなんとなく雰囲気はつかめているような気がしていた。


 とりあえず初歩的な憲法を中心とした研究書の気になったところにラインを引いていく作業を続けている。そんな彼の隣ではテレビが音も無く光っていた。とりあえず勉強の合間にちらちら見る。それが昔からの水島の勉強法だった。そしてそこに先日の異常な法術を展開して腕が取れるのを目撃した自分の能力の被害者の姿を見て少しばかり筆を休めた。


「死んだのか」 


 あの名前も知らないアメリカ軍の関係者を名乗る少年からその事実を知らされてから二日。それでも実感が沸かなかった。実際、水島にすれば異常な法術の力を制御できずに慌てていた。それまでのパイロキネシストやテレキネシス系の能力者を操るときのような操縦ができない感覚。発動する瞬間のまるで意識をそのまま持って行かれるような感覚がまだ頭から離れない。


 それは本当に初めてで予想ができなかった感覚だった。近くにいたテレキネシス能力者の脳を通じて感じた被害者の感じた驚き。そして突然訪れた激痛とそのまま自然に叫び声と全身の筋肉が硬直していく感覚が頭の中に流れ込んできてしばらく動けなかったことを覚えていた。


「俺も立派な人殺しか……法律家になる資格は有るのかね、俺に」


 水島は自問自答を繰り返した。


 あれは人の能力を使ったとは言え殺したのは確かに水島である。その罪の意識が水島を苛んだ。


「あんなことになるとは思わなかったんだ……あんな力が有るなんて知らなかったんだ……」


 水島は言い訳がましくそう言うと参考書を閉じた。そして座椅子を寝転ぶ位置に変えると天井を見上げた。


 真新しい天井にはすでにいくつかシミが浮いていてこのアパートが手抜き工事で出来たありあわせのものだということを水島に思い知らせた。


「俺の能力もありあわせのもので十分なのに」


 水島はそんな独り言を吐いた。



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