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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 低殺傷兵器  作者: 橋本 直
第二十三章 容疑者と思われる人々

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第111話 助っ人の手も借りて

 これも量販店で買ったジャケットを羽織ると誠はそのまま廊下に出た。住人に整備班員の占める割合の高い寮は出勤時の騒動の中にあった。廊下を歩いても誠の隣を駆け抜けていく技術下士官が三人もいた。


「僕も急がないと」 


 そう言って誠は階段を駆け下りる。そして途中で洗面所に立ち寄った。


「おはようございます!」 


 突然の大声に眠っていた誠の意識が瞬時に醒める。見てみれば技術部に先日転属してきた甲武帝国出身の技術兵だった。年は確か誠よりも二つくらい上。額のほくろが特徴で時々それをアメリアに弄られているのをよく見かける。


「ああ、おはようございます」 


 誠はどうにも年上に直立不動で敬礼されるのがむず痒くなって、無視してそのまま顔を洗っていた。その間も技術兵は敬礼の姿勢を崩そうとしない。


「すいません。そんなにかしこまられても……」 


 誠はどうやら先日実家の農家を継ぐということで除隊になった整備班員の代わりに来た技術兵の態度に辟易していた。


「我が隊のパイロットに対する当然の礼儀であります!」


 西とは違い東和共和国になじめない甲武国出身の技術下士官に同情しながら誠はその様子を見守っていた。 


「うちじゃあそう言うのは流行りませんよ……西とかを参考にしてください」 


 誠も自分が先輩になっていくのを実感しながらそう注文した。


「了解しました!」 


 大声で叫ぶ技術兵の迫力に閉口しながら、誠はいつものように誠は食堂のドアにたどり着いた。


「遅い!遅い!」 


 カウラが珍しく大きな声で誠に叫ぶ。彼女の隣にはかなめとアメリア、そして都内のアパートから来たらしいラーナの姿もあった。


「緊張感が足りないんじゃないすか?」 


 ラーナのきつい一言に頭を掻きながらカウラ達の座るテーブルに席を確保する。


「結果は出たんですか?」 


 そんな誠の言葉にカウラ達は顔を見合わせた。


「法術適正があって時期的に豊川付近に移住している人物のピックアップはできたんだが……」 


 一冊のファイルをカウラが手にしているのが見える。表には写真と経歴。ぱっと見たところでページ数は二、三十ページという風に見えた。


「でもだいぶ絞り込まれてきたじゃない。ローラー作戦とかをやると思えば労力は雲泥の差よ」 


 アメリアはラーナの調査結果に満足しながらそう言った。


「まあ……確かにそうだ」 


 カウラの表情は冴えなかった。一方のアメリアは納得したような表情を浮かべていた。かなめは今ひとつ納得できないと言うように腕組みをしていた。


「ともかく対象はかなり絞られたんす。後はそれぞれのアストラルパターンを検出。そして符合した人物の行動を追っていけばいいんすよ」


 ラーナは持ち前の楽天的な口調でそう言った。 


「簡単に言うなあ、お前さんは」 


 ラーナの言葉にかなめが眉をひそめた。そして誠も今ひとつ理解できずについ朝食の乗ったトレーを持って珍しそうに自分達を眺めている島田と目があった。


「俺は……とりあえずしばらく無理だから。あの『武悪』は本当に手がかかるわ。甲武も手放すはずだってすぐに分かるくらいだ。しかも隊長のこれまで蓄積した行動パターンデータを見たが……あの人の機動は独特すぎて解析するのに時間がかかるんだわ。面倒くせえ」


 本心では先月の厚生局の法術違法研究が露見した一件のように参加したい気持ちでいっぱいなのだろう。島田は味噌汁の椀を手に持ったまま恨めしそうな視線を誠に向けてくる。 


「島田。いい加減捜査に未練を持つのは止めろよ。テメエは最初からあてにしてねえよ」 


 そんな島田の気持ちをあえて踏みつけるようにかなめはつぶやく。なんとも雰囲気が良くないことで誠も少し状況が読めてきた。



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