第2話
クソ野郎が消えた後、奥底から目覚めた俺は部屋を飛び出し走った。
目的地はもちろんクソ野郎が言っていた武闘祭の終着点なんだが、そこへ行くまで段階を踏まねばならず、俺の目の前に最初の関門が見えてくる。
俺達が歩いてきた禅芭高校の正門から、それなりに歩いた場所に国柱神社の本殿があり、さらにその本殿の横を抜けて奥に進むとしめ縄を張られた黒い鳥居が、その第一関門だ。
当然、重要な場所なため警備のものが二人立っている。
「な、何奴⁉︎」
「待て、あのものは吾郷学園のもののはずだ。忠告するぞ‼︎ ここは禅芭高校のものも武闘祭の時しか通る事を許されていない‼︎ どういうつもりか知らないが即刻立ち去れ‼︎」
まあ、そう言ってくるのは当たり前だが、俺には関係ないからいっさい減速せず、そのまま向かっていく。
「本当に、どういうつもりだ……? 仕方がない。おい、緊急事態の笛を鳴らせ‼︎」
「わかった‼︎」
ピィィィィィィィィーー‼︎
…………禅芭高校の敷地内にいる奴らの視線を感じる。
しかも近くにいた奴がすでに向かって来ているせいなのか辺りの空気が一気にピリついてきているが、本当にどうでも良い。
とは言え邪魔は少ないに越した事はないから、俺は迷わず速度を一瞬最高速まで上げて警備員二人の前へ行き、二人の顎を掌底で撃ち抜いた。
二人の警備員が気絶したのを確認した周りの気配を探る。
さっきよりは近づいているが、それでも今すぐ俺の目の前に現れるわけじゃないな。
邪魔者がいないと判断した俺は黒い鳥居を通り抜け…………ようとしたができなかった。
身体が光の壁にぶつかり、これ以上進めない。
ならば鳥居の脇を通れば良いと思ったが、少し歩いた範囲では全て光の壁に遮られて抜けられなかった。
「チッ、小細工をしやがって……」
「そこまでだ‼︎」
声が聞こえて振り向くと戦闘体勢なっている警備員や生徒達が並んでいだが、どうでも良いため俺は再び抜けられる場所があるかどうか探っていく。
「無駄だ‼︎ 神聖な場を荒らす貴様のような存在は、その鳥居が起点の境界を越えられない‼︎」
鳥居が境界か……。
なるほどな、つまり鳥居を壊せばこの境界はなくなるって事だ‼︎
俺は木刀を構えて集中し色と音の世界へ入る。
…………あのクソ野郎へのイラつきと怒りからか普段よりも集中が甘くなっている気もする。
しかし、物体を斬り捨てるならこの程度でも問題ない。
俺は鳥居の二つの柱を木刀で斬り元の感覚に戻った数瞬後、鳥居が横にズレて大きな音と土煙を出しながら倒れる。
「「「「「な……」」」」」
よしよし、光の壁は消えているから、やっぱり黒い鳥居が起点だったみたいだな。
あのクソ野郎へのイラつきと怒りが少しだけ落ち着いた俺は先へ進もうとしたものの、また邪魔される。
今度は追いついてきた千亀院 燈を始めとした禅芭高校の有力者が俺の前に回り込んで立ち塞がった。
俺は少しでも早くクソ野郎のところへ行くか、この先でこいつらに邪魔される事を考えてここで潰しておくべきかを一瞬悩んでしまう。
しかし、その一瞬が千亀院 燈達の準備を整えさせてしまい後悔する。
「陣形、中殺し展開‼︎」
千亀院 燈の宣言とともに他の奴らが俺を囲み、俺の周りに結界を張って閉じ込めた。
…………ああ、それだけじゃないな。
息苦しさと普段の数倍の重さを身体に感じる。
徹底的に結界の中にいるものを弱らせて外から遠距離攻撃で攻めるか、確かに中殺しの名に相応しい戦法だ。
「放て‼︎」
ただし俺にはあまり意味がなく、俺は結界の外から迫ってくる全ての遠距離攻撃をいつものように斬り捨てた。
「「「「「は…………?」」」」」
千亀院 燈達は驚いており、その顔から何で動けるという強い疑問と困惑を感じ取れる。
前の世界の戦場での何日も続く不眠不休の戦いに比べたら何の問題もない、と説明したところで理解できないだろうから無視して結界を木刀で斬り裂き外へ出た。
さて、こいつらを無視するかどうか改めて考えるか。
こいつらの他にも、この場へ近づいてきている奴らもいるから、こいつらに時間をかけるほど足止めが増える。
よし、俺の目的はあのクソ野郎だけだから無視しよう。
方針を決めた俺は千亀院 燈達の間を走り抜け鳥居の向こう側に足を踏み入れた。
◆◆◆◆◆
鳥居が境界となっていただけあり、超えた瞬間に空気が変わる。
正直なところ千亀院 燈達が追いかけてくるかと思っていた。
しかし、俺が進んで行っても何の反応もないため不思議に思い振り返ると、千亀院 燈達は青い顔をして俺を見ているだけだった。
なるほど、千亀院 燈達が俺の行動に対して怒りじゃなく、まずいという恐怖や焦りを思わせる何があるらしい。
まあ、秋臣と俺がいた奥底まで来れるクソ野郎の領域だから何が起こってもおかしくないと思い直した時に、そいつは落ちてくる。
ズドーーンッ‼︎
チラッと見えた影の大きさから人外だなと判断し構えて待っていると、土煙から出てきたのは身の丈が秋臣の四倍はありそうな牛の頭部を持つ巨人だった。
『ヴアアアアアアアッ‼︎』
牛の巨人は俺を見るなり、雄叫びを上げながら持っていた身長と同じぐらいの金棒を振り下ろそうとしてくる。
デカい身体のわりになかなかの速さだったが、所詮はなかなか程度で俺の敵じゃない。
俺は牛の巨人の振り下ろしが始まる前に股の間へ跳び込み、すれ違いざまに両膝を斬る。
そして落ちてくる牛の巨人の身体を細切れして離れる。
うん? 断面から血が出てこないな。
どうやらまともな生物ではないようだという俺の考えは、牛の巨人の肉片がドロッと溶けて液体になった事で的を得ているとわかった。
「この液体……絵の具か? 何で絵の具が…………そうだった」
早蕨 一心斎の説明で、国柱神社の収蔵品には筆があると言っていたのを思い出す。
「お前は筆だな?」
『あははは‼︎ 正解だよ‼︎ ご褒美に私の作品群を見せてあげるよ‼︎』
筆と思われる声が響くと、地面や樹々の間に空から様々な化け物が現れた。
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