表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一度死んだ男は転生し、名門一族を追放された落ちこぼれの少年と共存する 〜俺はこいつが目覚める時まで守り抜くと決意する〜  作者: 白黒キリン
第3章 異世界の男は遠征する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/129

第24話

 とりあえず千亀院(せんきいん) (あかり)の言った事の説明を聞くため、俺達はシスティーゾと(りん) 麗華(れいか)が壊したものとは別の木造の建物に入る。


 建物の外観は普通の三階建て木造建築物だったから特に疑問を持っていなかったが、中に入って驚いた。


 まさか、一階の半分が柱も壁もない大広間になっているとは思わなかったな。


 上座に早蕨(さわらび) 一心斎(いっしんさい)が座り、その対面に俺達、早蕨(さわらび) 一心斎(いっしんさい)の両横には千亀院(せんきいん) (あかり)を始めとした禅芭(ぜんは)高校の有力者が座っていて、残りの奴らは俺達の後ろで好きなように座っている。


 全員の話し合いをする準備が整ったところで、流々原(るるはら)先生は話を切り出す。


「私達にとってよくわからない事が多いので前置きを無くし本題に入らせてもらいます」

「うむ、当然じゃな」

早蕨(さわらび)殿、千亀院(せんきいん)さんが言っていた御神体を倒すとは、どういう意味でしょうか?」

「その質問に答えるには、まずこちらから質問をしなければならん。お前さんは禅芭(ぜんは)高校がもともとは国柱(くにはしら)神社だった事を知っておるようじゃが、国柱(くにはしら)神社でどのような存在を祀っているかを知っておるか?」

「確か……勝負事に関するものだったと記憶しています」

「大筋では間違っておらんが正確ではない。国柱(くにはしら)神社は勝負事に関係する道具や勝負事に使われたものを神として祀っておるんじゃよ」


 勝負事に関係する道具? 勝負事に使われたもの?


 俺と同じ疑問を持った(りん) 麗華(れいか)早蕨(さわらび) 一心斎(いっしんさい)へ問いかける。


「あの、それは武器や防具という事ですか?」

「それらが一番わかりやすいものじゃな。他にも賭け事で使うサイコロや駒、職人達が作った楽器や筆なんぞもある」

「うん? じいさん、何で楽器や筆が勝負事に関係あるんだ?」

「システィーゾ君……」


 (りん) 麗華(れいか)はシスティーゾの口調に眉をひそめるが、早蕨(さわらび) 一心斎(いっしんさい)から雰囲気の変化はない。


「話し合いの最中じゃ、ある程度は無礼講で構わんよ。お主の疑問はもっともと言える。そうさな……、楽器や筆なんかは職人達が我こそ最高という思いから生まれたと言えば伝わるかのう?」

「つまり、職人達の技量を競った結果生まれたものだから、勝負事に関係があるわけですか?」

「そういう事じゃな」

「…………国柱(くにはしら)神社に所蔵されているものが普通なわけがないですよね?」

「うむ、その通り」


 早蕨(さわらび) 一心斎(いっしんさい)流々原(るるはら)先生の確認を聞き、大きくうなずく。


 なるほど、どうやら俺は厄介事が多く眠っているところに来てしまったようだ。


 …………今からでも帰るべきな気がしてきたぞ。


国柱(くにはしら)神社に収蔵されておるものは、いわゆる曰く付きのものでな。持ち主に不幸を呼び寄せるものや、ひたすらにわけのわからない事を伝えてくるものなどもある」

「そんなものは処分しろよ……。なんなら俺が燃やすぞ?」

「ありがたい……と言いたいところじゃが精霊級(エレメンタル)の炎でも無理なんじゃよ」

「…………じいさん、それはどういう意味だ?」


 ケンカを売られたと思ったのか、システィーゾの身体から火の粉が放たれ始める。


「お前さんを馬鹿にしたわけではないんじゃ。そうじゃのう……、存在が固定されておると考えてほしい」

「存在が固定されている?」

「そうじゃ。作成時に職人が込めた執念、使われ続けた時間、使用者から注がれた思いなんかの様々な要因が重なり、普通のものではなくなっておる」

「ああ、そういう事ですか。それなら私の祖国にも取り扱いに細心の注意を必要とし、少しでも間違えると人死が出るものがあります」

「システィーゾ、あなたの国ではどうなんです?」

「知らねえ」

「はい?」

「あるとは思うが興味ねえから知らん」


 俺は(りん) 麗華(れいか)のお国事情を聞き、ふとシスティーゾの国の事を聞き返ってきた答えに唖然としてしまう。


 しかし、戦場で暮らしていた時の自分も生き残る事と戦い抜く事以外はどうでも良かったと思い出して納得した。


「まあ、そういうものですよね」

「コホン、話を続けます。それでは、その御神体というのは?」

「数ある曰く付きなものの中で、特に危険性の高く最も異質なものじゃよ」

「…………詳細を聞いても?」

「そのためにわしらはこの場におる。国柱(くにはしら)神社の御神体の名は『葛城ノ剣(かつらぎのつるぎ)』という神剣じゃ。来歴についてはこの国の歴史とともにあったと言って良い」

「最古の遺物ですか……」

「そうじゃ。そして最大の特徴は剣自体が明確な意思を持っておるのと常に使い手を求めておるの二つじゃな」


 前の世界で古参の傭兵ほど、いろいろ歪んでいた事を思い出して嫌な予感が強くなる。


「まさかとは思いますが御神体を倒すというのは……?」

「剣が意識体を作り出し、自らを使い斬りかかってくる」

「そんな貴重なものを攻撃なんてできません」

「何も問題はない。所蔵されているものは精霊級(エレメンタル)の攻撃でも壊せんと言ったじゃろ? 今までも我が校の歴代最強のもの達が、いくど攻撃を浴びせておるが傷は一つもついておらん」

「その……、勝てた方はいたんですか?」

「察しはついておるんじゃろ? 我らの全敗じゃよ」


 早蕨(さわらび) 一心斎(いっしんさい)の言葉に禅芭(ぜんは)高校の連中の雰囲気が重くなった。


「我らの事は置いておく。問題なのは剣に勝利し使い手となれる存在が現れないために、剣が不穏な気配を放っておる点じゃ」

「…………何が起きるか想像できませんね」

「本来なら我らで解決すべき事じゃが、こうなったからには我らの恥も外聞もどうでも良い。お前さん達に剣の相手を頼みたい」

「あ、頭を上げてください‼︎」

「じいさん、俺達に任せろ」


 話を聞く限り厄介事としか言えないが、こういう厄介事を解決するのも異能力者の役割だから参戦するしかないようだ。


 システィーゾ達もやる気になっているし、剣の意思という戦った事のない相手とやってみるのも悪くないか。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。


また「面白かった!」、「続きが気になる、読みたい!」、「今後どうなるのっ……!」と思ったら後書きの下の方にある入力欄からの感想・★★★★★評価・イチオシレビューもお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 剣という時点で秋臣に丁度お誂え向きなような気もするな。 次回が気になりますので、よろしくお願いします。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ