第23話
すぐに俺と千亀院 燈の戦いは再開されたわけだが、この髪の毛を使った千亀院 燈の戦法はかなり厄介だった。
まず髪の毛を攻撃に使う事で単純に手数が増えているし、俺が髪の毛の攻撃を意識しすぎたら千亀院 燈は手足で攻撃してきて、逆に千亀院 燈自身へと意識を向ければ死角から髪の毛の束による打撃や、俺に絡みついて拘束しようとしてくる。
増やした選択肢を強引に押し付けてくる戦法を打ち破るのは、俺も強引にいけば何とでもなる。
…………ただ、それをするのは気が進まない。
現状だと回避はできているから、とりあえず避けながら別の方法を考えるか。
「おい、鶴見‼︎」
「何、ですか? シス、ティーゾ」
「いつまでそうやって避けるつもりだ⁉︎ お前なら、いつでも勝てるだろ⁉︎ さっさと勝負を決めろ‼︎」
「いや、です」
「ああ? どういうつもりだ⁉︎」
「千亀院、さんの、戦法、を、正面から、破る、方法を、考え、中です」
俺が千亀院 燈の攻撃を避けながらシスティーゾへ返答していると、千亀院 燈は俺から距離を取った。
「どうしました?」
「…………」
千亀院 燈は何かを考えながらシスティーゾを見た後、俺に視線を戻す。
どう考えても、さっきの俺とシスティーゾの会話が原因だよな?
「ええと……、これで終わりですか?」
「見せて」
「見せる? 何をでしょう?」
「私にいつでも勝てるという、その方法を見せて」
…………波打っている髪の毛の動きが力強く大きくなる。
異能力は自分の精神状態に左右されるところもあるから、迷いなしの本気という事だろう。
確認のため流々原先生へ目を向けると、流々原先生は軽くうなずき返してくれた。
何も問題ないならやっても良いか。
「それでは、これから見せますが、その前に千亀院さんに聞きたい事があります」
「何?」
「僕の心技体での攻撃の内、どれを体感したいですか?」
「え?」
「僕の身体能力なら千亀院さんの懐に一瞬で入れます。僕の技量なら何だろうと斬れます。そして僕の威圧は本当に相手の精神を押し潰します。どれを体感したいですか?」
「…………」
千亀院 燈は、どう答えて良いのかわからないらしく黙ってしまう。
その様子から、実際に見てもらう方が早いと判断した俺は位置を調整し、千亀院 燈に見えやすいところでシスティーゾと鈴 麗華の二人と向かい合った。
どうやら俺のやりたい事をわかっているらしく、二人の身体からは、すでに火の粉と吹雪が出ている。
「オラア‼︎」
「凍りつきなさい‼︎」
「……千亀院さんに見せるだけなのに殺意が強すぎません?」
「何事も全力で挑むべきだろうが‼︎」
「そういう事ね‼︎」
「まあ、良いですけど」
無駄にやる気を出したシスティーゾと鈴 麗華は、炎の弾丸や氷の槍を撃ち込んできたり、火炎放射や氷の壁で面制圧をしてきたりと、なかなかに本格的な攻撃をしてきた。
しかも、片方が面制圧で俺の動きを制限して、もう片方が強力な攻撃を放ってくるという、かなり実戦的な連携もしてくるから、俺もそれなりに本気で対応する事になる。
つまり、システィーゾの炎と鈴 麗華の氷を全て斬り捨てて、最速で近づき、二人のそばでかなり強めの威圧を放ち昏倒させた。
「く、そが……」
「う……」
「と、まあ、こんな感じです。千亀院さん、どうでした?」
「予想外だった……」
「何がでしょう?」
俺がシスティーゾと鈴 麗華を受け止めながら聞くと、千亀院 燈は……、いや、千亀院 燈以外もか。
流々原先生以外の禅芭高校の連中が唖然としていた。
「あなたは強いと感じていたけど、ここまでとは思わなかった。私とは桁が違う……」
「ええと、ここで終わります?」
「私とあなたの差を確認する良い機会なのに、それを逃すもったいない事はしない」
「そうですか」
「鶴見君、鈴さんとシスティーゾ君は私に任せて相手をしてあげて」
「わかりました。お願いします、流々原先生」
システィーゾと鈴 麗華を流々原先生へ預けてから、俺は再び千亀院 燈の前に立った。
「それで僕の心技体の内、どれを体感するか決めました?」
「決めてない。がむしゃらにやるだけ」
さっき以上に千亀院 燈の髪の毛が力強く動いてるから、やる気満々らしい。
「それなら、いつでも良いです。それとも僕から攻めた方が?」
「ふへへ、そんなの決まってる‼︎」
叫んだ次の瞬間には千亀院 燈の蹴りが俺の顔に当たる寸前だった。
やっぱり、この相手の意識の隙を突く技量はすごいなと感心しつつ、集中して色と音のない世界に入り、そのまま千亀院 燈の後ろへ回り込み首に木刀を触れさせる。
「これで僕の勝ちです」
「え……?」
「まだ、やりますか?」
「当たり前‼︎」
今度は髪の毛を動かし俺の視界を遮ってきた。
本来なら、この無数の蛇に襲われるような攻撃を防ぐのは難しいのだろうが、集中して色と音のない世界に入れば何の問題もない。
千亀院 燈の髪の毛をかいくぐりながら横まで行き木刀を喉に触れさせた。
「二度目の僕の勝ちです」
「ふへ……?」
俺がもともといた場所と今いる場所を目をパチパチさせつつ交互に何度も見直している千亀院 燈の仕草と表情から信じられないという思いが見て取れた。
「千亀院さん、あなたは自分がやっている戦い方と似たものを、他の誰かにやられた事がないんですね」
「…………ないわ。だって、これは私が一人で作り上げたんだもの」
「その才能と努力はすごいと思います。ですが、重要な事実をわかってません」
「重要な事実?」
「予想外の事態は割と起きるという事です」
「例えば自分と似た事をできる人が目の前に現れるみたいな?」
「そうです。他にも精霊級に勝てる器物級がありますね」
「あ……」
千亀院 燈を含めた禅芭高校の連中が、俺を驚愕の目で見てくる。
俺が秋臣の身体に入ってからやった事を、ある程度知っているんだろうが、どうやらこれに関してはあまり信じていなかったようだな。
「あのっ‼︎」
「は、はい」
突然、千亀院 燈が木刀をつかんで俺にグイッと迫ってきた。
「私と武闘祭に出て‼︎」
「はい?」
「鶴見君となら今度こそ御神体に勝てると思うの‼︎ だから、お願い‼︎」
「ええと……」
どういう事だという考えで頭が一杯になり返答できない。
流々原先生もよくわからないっていう顔で、禅芭高校の連中はその手があったかという顔をしている。
これは……もしかして、何かに巻き込まれるところか?
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