第20話
それにしても、完全にあいつらとの戦いに生徒会連中が参戦したな。
俺がそう考えたのを見抜いたのかは知らないが、生徒会長の龍造寺は俺の方を向いた。
「鶴見君、俺達が参戦しても問題ないだろう?」
「……ええ、すでに会長達は僕と同じ場所にいるので、前に約束した邪魔されたくないならさっさと僕だけで倒すというのはできません」
「うん、ありがとう」
生徒会というのはしっかりとした統率をとれているようで、やる気になった龍造寺に続けとばかりに戦意がみなぎっている。
戦力になる頭数は多い方が良いけど、それを面白く思わない奴もいた。
「チッ、あいつらなんざ俺一人で十分だぞ」
「おいおい、システィ君、君は生徒会に所属したいんだろ? それなら俺達を歓迎するべきだよ」
「貴様……、次にそのふざけた呼び方をしてみろ。消し炭にしてやる‼︎」
「あー、そうだった。そうだった。悪気はないから許してね」
生徒会会計の斗々皿がどう考えても悪気しか無い感じでシスティーゾに絡んでいく。
この斗々皿の相手の越えてほしくない一線の上で反復横跳びをするのは、どういう神経をしてるんだ?
ギリッ‼︎ ギリッ‼︎
俺達が戦場らしくない会話をしていると、硬いもの同士が強い力を受けて擦れる不快な音が聞こえてきた。
音の源は、あいつらの中の一人。
顔を真っ赤にしながら鬼みたいな表情で歯を食いしばっている鶴見家現当主の鶴見 玄坐だ。
「俺を、前にして、よくも、ふざけた態度を」
「知らねえよ。消し飛べ」
ゴウッ‼︎
システィーゾが、全くためらわず炎をあいつらへ放った。
「活っ‼︎」
「は……?」
あいつらは確実にシスティーゾの炎を飲まれたはずだったが、玄坐の気合のこもった声とともに弾き飛ぶ。
ちなみに、その弾き飛ばされたシスティーゾの炎は、すぐに龍造寺がかき消している。
「これで精霊級だと? くだらん。火遊びなら他でやれ。小僧」
「…………あ?」
玄坐に吐き捨てるように言われたシスティーゾの身体から火柱が燃え上がり、その熱量は地面の舗装を溶かすほどだった。
さすがに玄坐もシスティーゾへの警戒度を一気に上げ、他の連中は顔をひきつらせている。
跳び退がった俺でも熱い。
これは周りのものが燃え上がる前にシスティーゾを気絶させるしかないと、木刀を出したら冷たい空気が流れてくるのに気づく。
「鶴見君、私が周りへの延焼を防ぐからシスティーゾを何とかして」
「わかりました」
鈴 麗華が周りにある燃えそうなもの全ての表面を氷で保護していたが、やはり聖に選ばれるほどの精霊級の実力者でも暴走気味のシスティーゾの炎に対抗するのは辛いらしい。
俺は最速で打開するため、木刀を構えて呼吸を整え目を閉じ集中した。
数瞬後目を開けて、世界が色をなくし極端に遅くなっているのを確認してからシスティーゾの方へ加速する。
…………この状態だとシスティーゾの炎の熱さも鈴 麗華の氷の冷たさも感じないんだな。
まあ、これからやる事には都合が良い。
俺はシスティーゾに接近して火柱を何度も切り裂きシスティーゾを露出させ、胸に手を当て全力で突き飛ばした。
「かはっ‼︎」
お、不意打ちをくらったせいで動揺したためか、地面を転がるシスティーゾの身体からは炎が出ていない。
残った炎は龍造寺に任せれば大丈夫だと判断して、俺はシスティーゾに近づいていった。
「システィーゾ、正気に戻りましたか?」
「鶴見、てめえ‼︎」
「あなたが、あの人の挑発にのって我を忘れたからでしょ?」
「うっ……」
「システィーゾ、あなたはここに何のためにいるんですか?」
「何?」
「戦いに来てるんですか? それとも暴れに来てるんですか?」
「た、戦うために決まってるだろ‼︎」
「それならきちんと炎を制御して、ちゃんと戦って勝ちましょう。そうすれば誰にも火遊びなんて言われません」
「…………」
システィーゾはブスッとした表情のまま起き上がり、今まで俺が見た中で一番安定した炎をまとう。
「準備はできたみたいですね」
「ふん……」
「あ、あなたの暴走による延焼を防いでくれたんですから、あとで鈴先輩に謝ってくださいよ」
「…………チッ」
「そこで舌打ちはどうかと思いますが、いきますよ」
「おう」
俺とシスティーゾはあいつらへ向けて走り出した。
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