第14話
かなり場が動いて戦っているのは、会長、副会長、庶務だ。
今のところ生徒会側が全勝をしているから順調か。
会長達が戦っている相手もそこまで脅威は感じないから、このまま会長達は問題なく勝てると判断した俺はある方向へ走り出す。
「ちょっ、鶴見君⁉︎」
「おい、鶴見‼︎」
後ろから鈴 麗華とシスティーゾの声をかけられるが、俺は立ち止まらずさらに加速し前へ跳び黒い木刀を出現させて握る。
そして高速で飛んできたものを叩き落とす。
着地して地面に落ちたものを確認すると消しゴムくらいの金属の塊だった。
「狙撃か。狙いは……龍造寺だな」
俺は飛んできた方向と俺の後ろにいる奴らの位置関係を考えて結論を出したが、疑問なのは狙撃を会長達と戦ってる奴らも驚いている事。
狙撃手はあいつらの仲間じゃないのか?
…………いや、捕まえればわかるか。
「会長、狙撃手のもとへ向かいます‼︎」
状況説明と俺がこれからやる事を宣言して、俺はまた走り出した。
◆◆◆◆◆
この狙撃手は、かなりの実力者だな。
俺が狙撃手のもとへ走り出してから何度も迎撃の狙撃を叩き落とした感想は、これだ。
なぜなら、それなりの距離を移動したのに狙撃手の姿が見えない事。
曲射や弾道を重ねられる事。
金属塊の大きさも変えられ、掌大の金属塊でも高速で飛ばせる事。
以上の事を考えると龍造寺を狙った奴は、キロ単位の射程を持ち、弾道を意図的に操作しても対象を正確に狙える技術があり、何より狙撃時に殺気がほとんど出ないという狙撃手として一流としか言えない奴だ。
◆◆◆◆◆
はっきりと殺気を感じられるようになったから、そろそろ姿が見えてもおかしくないんだが…………お、いたな。
俺の前方に何をするわけでもなく、ただ立っている奴がいた。
俺は、そいつから少し離れたところで止まると木刀を構える。
「吾郷学園の生徒会のものです。話を聞きたいので大人しく投降してもらえませんか?」
「…………」
「聞こえてますか?」
フードと帽子の影に隠れて顔が見えない奴に呼びかけてみても何の反応もしない。
一歩近づく、反応なし。
もう一歩近づいても、やっぱり反応はない。
だが、さらに一歩近づいた時、そいつは両手を俺へ伸ばすと狙撃手の周りに金属塊が生まれて次々と発射される。
まあ、動作と発射の瞬間が見れるなら、特に問題はないため全て叩き落とした。
狙撃手は動揺して二、三歩下がる。
「もう一度言います。話を聞きたいので投降してくれませんか?」
「…………断る」
ボソッと聞こえた声は女性だった。
いや、それよりも断るという事は何か奥の手があるのか?
俺は狙撃手の動きを冷静に見るため急がず一歩ずつ近づいていく。
……うん? 何か狙撃手がピリッとした気配になったな。
ああ、俺が歩いて近づくのをなめられてると感じたのか。
それなら望み通り速さで攻めよう。
俺は狙撃手が手を伸ばした瞬間に跳んで残り三歩分まで近づくと、そこからさらに狙撃手の右側へ跳ぶ。
突然の急な動きに反応できてない狙撃手は俺を探しているようだったから、狙撃手の首に木刀の先を触れさせた。
「木刀で首を触られたという事は、本物の刀なら死んでますね」
「な……」
「最後の忠告です。投稿してくれませんか? 仮に僕を倒したとしても、僕に時間をかけたせいで会長達はあなたを迎撃するだけの準備を整えているでしょう。もう、狙撃はできません」
「…………」
狙撃手の口もとから歯をくいしばる音が聞こえる。
……龍造寺にどんな感情があれば、ここまで激しい反応になるんだ?
いや、俺が気にする事じゃないな。
今は狙撃手を捕縛に専念するため拘束しようとしたが、それよりも早く狙撃手は自分の周りに金属塊を出現させたため離れた。
「あなたの能力は僕に効果が薄いと理解できませんか?」
「…………るな」
「何か言いました?」
「わた…………るな」
「いったいどうしたんですか?」
「私と健の邪魔をするな‼︎」
「うわっと」
さっきまでの精密な狙撃と違い、何一つ制御せず、いきなりの雑に俺の方へ放ってくる。
……うん? 健?
俺は金属塊の乱射を避けたり叩き落としたりして、もう一度接近を試みたものの、乱射が続くほど狙撃手の意図してない金属塊同士の衝突が起き、どんどん弾道が複雑化していく。
……やっぱり状況によっては精密な点の攻撃よりも雑な面の攻撃の方が厄介な場合もあるな。
パチンッ‼︎
俺が金属塊の回避に少し苦戦していると、何回か聞いた指を弾く音が聞こえ金属塊が消えた。
「は、はは、あははは、来たな‼︎ 健‼︎」
「うーん……、君のやり方は理解してるつもりだけど、さすがに時と場合を考えてくれ。阿良奈」
走って追いついてきた奴らの中にいる龍造寺を見て一気にテンションを上げる狙撃手と、やけに和やかな感じの龍造寺が対称的だが、しかも他の生徒会役員は、あの狙撃手を刺々しい目で見てるから関係性がわからない。
本当にどういう関係なんだ?
とりあえず聞けそうな奴……、荒幡に聞いてみるか。
「荒幡さん、質問良いですか?」
「あの人の名前は佐木疋 阿良奈。会長を殺そうとしている婚約者です」
「え? 婚約者なのに相手を殺そうとしてるんですか?」
「龍造寺家は殺される程度の実力なら殺されて当然だという考えみたいですね。名門には一般常識から外れた考えや慣習が残っているものです。鶴見家でも、そのはずですが?」
荒幡の言葉をきっかけにして秋臣の辛い記憶がフラッシュバックし、俺は秋臣を痛めつけていた奴らへ殺意を抱いてしまった。
当然、殺気もあふれ出して周りにいた奴らは俺からいっせいに距離を取り戦闘態勢になるが、龍造寺と狙撃手はそのままだ。
「…………ふう、すみません。取り乱しました」
「へえ……、へえへえ‼︎ 君が噂の鶴見 秋臣だよね⁉︎」
「ええ、そうですが……」
「私は佐木疋 阿良奈。よろしく」
「どうも。よろしくお願いします。…………噂というのは?」
「名門を追放されたはずなのに、ある日突然精霊級を撃破する異常な戦闘力を発揮した奴って、あちこちで言われてるよ」
「そうですか……」
「実績があって目立つのは良いんだけど、君の場合は怪しさが先に立つ悪目立ちだからね。いろいろと気をつけた方が良い」
「丁寧な忠告ありがとうございます」
「特に……、君の古巣には油断しない事だ」
ほお、秋臣を守るのを最優先にしているため考えないようにしてきたが、まさか向こうから干渉があるかもしれないとは。
これは一度じっくり秋臣と話し合わないといけないな。
今晩にでも秋臣と会ってみるか。
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