第11話
システィーゾが生徒会室の扉を叩きズバンッと勢い良く開けて入るのを、俺と鈴 麗華は少し離れた場所から見ていた。
「……行きたくないわ」
「そうですね。……あ」
生徒会室からビリビリとした雰囲気を感じていると、生徒会第一書記の奈綱 羅魏が生徒会室の扉から顔を出して見回し、俺と鈴 麗華を見つけると小走りで近づいてくる。
「おい、あれはどういう事だ?」
「ええっと……、システィーゾが勝手にやる気になった結果ですね……」
「……鈴 麗華?」
「私に言われても困るわ」
奈綱 羅魏は鈴 麗華をにらんでいたので、とりあえずフォローをしておく。
「鈴先輩が、システィーゾへきちんと説明したうえであの状態になっているのでにらまないでください。どうやらシスティーゾは、僕という例外が任務に参加できるなら自分も参加できるはずという考えで生徒会へ突撃したみたいです」
「そういう事か……」
俺の説明を聞いた奈綱 羅魏はこめかみを押さえて小さくうなった。
前の世界にも男装の麗人を何人か見たが、奈綱 羅魏も動作の一つ一つが妙に様になっているな。
「事情はわかった。一応の確認だが、あいつが任務へ参加する事になった時は鈴 麗華も参加するという事で良いんだな?」
「全く気は進まないけれど、そういう事になるわね。……というかシスティーゾは任務に参加できるの?」
「龍造寺の判断次第だ。とりあえずここで私達だけで話しててもしょうがないから中へ入るぞ」
奈綱 羅魏の後に続き俺と鈴 麗華も扉をくぐると、すぐに生徒会長の龍造寺が笑いかけてきた。
「やあ、鶴見君、鈴君」
「どうも」
「お邪魔するわ」
「で、俺が参加する任務の内容は何だ?」
「システィーゾ……」
生徒会室にいる全員の呆れた視線を受けても少しも揺らがないのはすごいな。
ここまで我を通せるのも才能なのかもしれない。
「うーん……、システィーゾ君、本当に任務をやりたいのかい?」
「鶴見がやれて俺にやれない理由はない。参加させろ」
「おそらくシスティーゾ君が想像してるような荒事はそうそうないけど、それでも良いかな?」
「何? どういう事だ?」
「生徒会で対応する任務は、あくまで学生レベルという事さ。本当に深刻な事件事故の解決に動くのは、そこにいる鈴君が所属している学園上層部直属の実行部隊である聖だよ」
システィーゾが鈴 麗華を見て何かを考えている。
「まあ、良い。始めはそんなものだな。いずれ聖に入れば良いだけだ。鈴 麗華、後でどんなふうに選ばれたか教えろ」
「それが人にものを頼む態度かと言いたくなるけど、聖の大原則を教えてあげる」
「ほう、何だ?」
「強くなければ何も守れないし敵を倒せないから、ただひたすらに強く実力がある事。単純だけど、私や鶴見君に負ける程度だったら絶対に選ばれないわ」
「……上等だ」
鈴 麗華に煽られたシスティーゾの身体から火の粉が吹き出てくる。
パチンッ‼︎
龍造寺が指を鳴らすとシスティーゾの身体から出ていた火の粉が消えた。
しかもシスティーゾが、また炎を出そうとしてるのに出せなくなっている。
あの俺の視界に走ったノイズもよくわからないが、これも龍造寺の能力なのか?
…………いや、第二書記の荒幡 桜や他の奴の能力の可能性もあるな。
俺が誰の能力なのか見極めようとしていると、システィーゾは龍造寺へ今にも飛びかかりそうになっていた。
「どういうつもりだ?」
「やる気があるのは良い事だけど、感情が高ぶった程度で能力が漏れ出すのは能力の制御が下手としか言えないね」
「……だから何だ?」
「その程度で聖や生徒会の任務を目指されても困るんだよ」
「ケンカを売ってるのか?」
「事実を言ってるだけさ」
ガッ‼︎
龍造寺から厳しい指摘を受けたシスティーゾは対面していた龍造寺に殴りかかったが、あっさりと受け止められた。
周りの奴らが驚きも慌てもしてないという事は、至近距離から不意打ちされても完璧に対応できるというのが生徒会役員では当たり前という事か。
「システィーゾ君の能力の強さは聖級だと言って良い。でも、その他はまだまだだ。見習いという形で良いなら生徒会に受け入れよう。どうする?」
システィーゾは龍造寺に言われた事をいろいろ考えているようだ。
基本的にプライドの高いシスティーゾが見習いという立場を認めるとは思えないが、なぜか二、三回俺を見た後、龍造寺に受け止められている手を弾いて自由にしてから席に戻る。
「……良いだろう。見習いだろうが何だろうがなってやる。だが、お前らが言うほどのものじゃなかった時は消しとばす」
「あっはっは、生徒会役員は伊達じゃないよ。だけど、うん、その時は好きにすれば良いよ。さて、話がまとまったところで任務の説明に入る。鶴見君、鈴君、座ってくれ」
◆◆◆◆◆
龍造寺から任務の説明を受けた俺達は現場まで移動するため、学園の駐車場に来ていた。
「この車で移動するのか」
「前の任務で乗ったものとは違いますね」
「それが本当なら任務に合わせてるみたいだな」
「今回は目立つ必要があるから、この小型バスで移動するんだ。鶴君、シス君、乗り物酔いは大丈夫?」
いつのまにか俺達の後ろにいた生徒会会計の斗々皿 詩縞が、俺達の会話に入ってくる。
「僕は特に問題ありません」
「良いね。シス君はどう?」
「……次にその呼び方をしたら殺す」
「あれ? ……ああ、シス君呼びはダメか。それなら……システィ君でいこう」
斗々皿 詩縞は自己完結をしてうんうんとうなずいているが、システィーゾのこめかみには青筋が浮かんでいた。
こんなんで大丈夫なのか?
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