第3話
「「「「「…………」」」」」
突然の事態に俺は驚いて絶句していたが、同じ生徒会であるはずの龍造寺達も、斗々皿が殴り飛ばされたのを見て唖然としていた。
さすがに殴り飛ばして窓から落とすという行為が、日常化しているわけではなくて内心でホッと息を吐く。
「奈綱ちゃーん、これはひどいんじゃないの?」
自力で登ってきたらしい斗々皿が窓枠に腰掛け、自分を殴り飛ばしたものを鋭い視線で見ている。
…………チッ、あの気持ち悪い感じが離れているのに伝わってくるが、斗々皿を殴った相手は斗々皿の気持ち悪い気配で俺以上にイラついていた。
「斗々皿、私は前から言っていたぞ。私がいる場所でそれをするなと」
「あっはっは、俺が奈綱ちゃんの命令に従うと思ってるなら哀れとしか言えないよ?」
「貴様……、私を愚弄する気か?」
「うーん、どうだろうね? 奈綱ちゃんが気にするならそうなんじゃない?」
「ははは……、上等だ。殴り殺してやる」
「あれあれ? やる気になっちゃった? そっかー、それなら俺もやろうかな」
どういうわけか斗々皿と、生徒会第一書記の奈綱 羅魏が構えた。
合う合わないは人間関係で当然出てくる問題だが、ほぼほぼ全力で相手を倒そうとするのは異常だぞ。
「二人とも、そこまでにしてくれ」
斗々皿と奈綱の充満していた戦意が、龍造寺の一言で霧散し二人は何事もなかったかのように元の位置に戻る。
ほお、生徒会という組織の長になるだけの実力があるわけか。
「鶴見君、話の腰を追ってしまったね。すまない」
「いえ、僕も突然動いてすみませんでした」
「よし、それじゃあ、説明を再開しても良いかな?」
「はい、お願いします」
「わかった。斗々皿、余計な事はせずに、きちんとした説明を頼むよ」
「はいはいと。鶴君、こっちへ座って」
斗々皿がソファを軽く叩き俺に座るよう言ってきたので、俺は木刀を消しソファへ戻る。
◆◆◆◆◆
その後は、さすがにまずいと思ったのか斗々皿は不快な干渉をしてこず、淡々と書類の説明を進めていく。
これができるなら始めからしろって感じだな。
俺は斗々皿の狙いがわからず悩んでいると、斗々皿が何か言いたげに俺を見ていた。
「…………」
「何か?」
「鶴君、俺達はまだ未成年だから、お金に関わる事は親の了承がいるんだ。連絡は取れそうかな?」
斗々皿が親という単語を言ったら俺の身体の奥底がズキンと痛み、苦い感情がブワッと膨れ上がってくる。
これは俺の痛みじゃなくて秋臣の痛みで、感情の乱れも秋臣のものだ。
秋臣、頼りないかもしれないが俺がいるから落ち着け。
奥底で眠りながらも乱れる秋臣に呼びかけて鎮めつつ、斗々皿に聞く。
「その了承は絶対にいるんですか?」
「そうだね」
「……そうですか。それなら報酬は辞退します」
「え?」
「あの人達とは縁が切れているので、僕からあの人達へ連絡を入れるのは不可能です」
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