第19話
辺りがシーンと静まり返る。
ここは挑発めいた事を言っておくか。
前世でも、そうだったが先に相手のペースを崩した方が勝ちやすい。
「すいません。手が滑りました」
さて、どういう流れになるかな?
状況を見ていると、俺がお茶をぶつけた男が遠目からでもわかるくらい顔を真っ赤にしながら俺の方を向いた。
怒り心頭という感じだな。
「てめえ、死ぬ覚悟はできてるんだろうな!?」
「死ぬ覚悟? そんな今の状況に関係ない事はする必要はないと思いますが?」
「上等じゃねえか!! 死ね!!」
男が地面を殴りつけると、俺に向かって地面から大きな岩の刺が何本も生えてくる。
岩を使うという事は精霊級で間違いないが…………、どう考えてもシスティーゾほどではないな。
出現させた黒い木刀で切り捨てた岩の刺がボロボロと崩れていくのを見て、俺は確信する。
「あなた、まったく能力を使いこなせてないですね。特に安定性が悪すぎます」
「何をしやがった…………?」
「見たまんま切り捨てただけですよ。本来の岩ならもっと硬いはずなのに、システィーゾの炎の方がよっぽど切りにくかったですね」
「システィーゾ……? あ、あいつ、決闘でシスティーゾに勝った鶴見か!!」
岩を操る男の仲間の1人が叫ぶと残りの2人は、あからさまに慌てだした。
……学園の外にまで俺とシスティーゾの事が知られているのか。
前世の世界でもあったが、こういう目立つ事が起きると別の騒動を呼び寄せやすいんだよな。
あの決闘の時は、この世界に来てすぐだったからしょうがないとして、もう少し勝ち方や戦いの内容を考えるべきだったな。
まあ、やってしまったからには後に引けん。
秋臣の身体を絶対に守る。
「おい、まずいぞ。どうする……?」
このまま、どこかに行ってくれれば騒ぎが大きくならずに済むんだが……。
「は、こいつがあのシスティーゾに勝った? 寝言は寝て言え!! 精霊級の俺が勝つに決まってるだろ!!」
「そ、そうだ!! 負けるわけがねえ!!」
「ぶっ潰してやる!!」
3人が完全に開き直って戦闘態勢になった。
普通に戦えば勝てるが、これ以上俺の戦っている姿を見られたくはないな。
…………よし、ここは押し付けるか。
そう決めた俺が戦闘の続行を示すように構えると、男達3人は足もとから氷に包まれていき動けなくなる。
「あなた達、そこまでよ!! この場は吾郷学園の鈴 麗華が預かります!!」
俺を監視していただろう鈴 麗華が介入してきた事で狙い通り幕引きとなった。
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