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一度死んだ男は転生し、名門一族を追放された落ちこぼれの少年と共存する 〜俺はこいつが目覚める時まで守り抜くと決意する〜  作者: 白黒キリン
第1章 異世界の男は転生する

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第17話

 学生通りの散策を始めて数分たち、俺の頭の中は1つの思いで占められていた。


 それは……、「場違いな感じがして落ち着かない」だ。


 間違いなく今後、俺がこの学生通りに来る事は、秋臣(あきおみ)と同じく片手で数えられるくらいだろう。


 まあ、秋臣(あきおみ)と俺では、ここに来たいと思わない理由に違いはあるな。


 秋臣(あきおみ)の場合は単純に騒がしい場所や人ごみを苦手としているからで、俺の場合は前の世界での生活レベルが底辺だったため、きれいな場所は貴族なんかの上流階級の領域に紛れ込んだ気がして違和感が激しいから近づきたくも長居したくもない。


「まあ、なんの偶然かわからないが、この世界に来たからには慣れないといけないんだろうな……」


 俺は小さくつぶやきながら足を動かす。


 眼に映る道行く人達の表情は、どこまでも自然で明るい。


 中には雑貨屋で真剣な表情で品物を選ぶ男や、彼氏と思われる男からもらった小さな箱の中身を見て嬉しそうに泣いている女性もいるが、基本的にはみんな明るく晴れやかだ。


 ……前の世界で俺の剣は、この表情を生み出せていたのだろうか?


 俺は何かを変えようとしてたわけではない。


 ただ放り込まれた戦場で、向かってくる目の前の相手を斬り捨てていただけ。

 

 もし、あの場で死なずに生き残れたら……、いや、たぶん何も変わらないな。


 むしろ、死んだ後に秋臣(あきおみ)と出会いこの世界に来たからこそ、こういう考えが浮かぶのだろう。


 前の世界でも、この世界でも「死ぬ目に会えば人は変わる」と言うが、まさにその通り。


 俺はそんなとりとめもない事を考えながら学生通りをブラブラ歩いていく。


◆◆◆◆◆


 30分ほど歩くと学生通りの中ほどにやってきた。


 この辺りは比較的飲食店が多いため、学生通りの入り口付近よりも多くの匂いを感じる。


 ふむ、ソースの焼ける匂い、焼きたてのパンの匂い、コーヒーの香ばしい匂い、それに……甘い匂いもする。


 特に気になったその甘い匂いをたどると、クレープ屋で7人の客が並んでいた。


 ……そこまで空腹でもないが、この世界で初めての買い物をするのも悪くないと思い列の最後尾に並ぶ。


 壁にあるカラフルなメニュー表を見ながら待つ事5分、俺の番が回ってきた。


「いらっしゃいま……」


 クレープの焼き場に立っている丸メガネの女子店員は、俺を見るなり目を大きく見開いて固まった。


 ……この反応の仕方は驚きだな。


 なんで俺を見て驚くのかは知らないが、このまま注文して良いのか?


「あの、注文しても?」

「え、あ、はい!! どうぞ!!」

「あんまりこういうのを食べた事がないので、甘すぎない定番みたいなものはありますか?」

「ええっと……、それでしたらチョコバナナが良いと思います。この店のチョコはビターなので甘いのが苦手な人でも食べやすいですよ」

「なるほど、それじゃあチョコバナナを1つお願いします」

「ご注文ありがとうございます。少々お待ちください」


 女子店員は俺の注文を受けて、鉄板に生地を薄く伸ばしながら焼いていき、生地が焼きあがると細い金属の棒でめくるように持ち上げ、鉄板の横にある台に生地を乗せ広げる。


 そして焼いている間に準備した具材をササっと配置して生地を巻き、最後に紙の器に入れ完成のようだ。


「お待たせしました。どうぞ」

「ありがとうございます」

「またのお越しをお待ちしてます」


 俺はできあがったクレープを受け取り、代金を携帯端末のキャッシュ機能で支払って店を離れる。


 どこか座れるところがないか探しつつ、クレープを一口頬張ると確かにあの女子店員の言う通り甘すぎず食べやすい。


 この世界での初めての買い物が、この手頃な美味いクレープで良かったと思いつつ最後の一口まで味わって食べた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。


また「面白かった!」、「続きが気になる、読みたい!」、「今後どうなるのっ……!」と思ったら後書きの下の方にある入力欄からの感想・★★★★★評価・イチオシレビューもお待ちしています。

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