第14話
こいつは……秋臣の知っている奴だな。
氷を操る精霊級の名前は鈴 麗華。
システィーゾと同じ海外からの留学生で秋臣の1学年先輩で特記するべき事を1つあげるなら、学園上層部直属の実行部隊である「聖」に選ばれるほどの実力者という点か。
秋臣の知識によると、本来なら実技の授業の補助に聖のメンバーがなる事はない。
そのありえない存在が、すぐさま俺とシスティーゾの間に割って入ったという事は、どうやら始めから俺とシスティーゾは監視されていたらしい。
「どういうつもりだ? 鈴 麗華。なぜ、俺の邪魔をする? 返答によっては消し炭にするぞ」
「そちらの鶴見君は察しがついてるみたいだから率直に言うと、君達2人は要警戒対象として監視されているのよ」
「監視だと……?」
「主にシスティーゾ、あなたが鶴見君に襲いかかり、あの激しい決闘の再現をしないかの監視ね」
「くだらん」
「精霊級の私闘は厳禁よ。周りの被害を考えなさい」
なるほど、だいたい予想通りの内容だな。
俺は木刀を消した後、落ち着いた声でシスティーゾに話しかけた。
「システィーゾ、次に流々原先生から許可が出るまで待ってくれませんか?」
「なんだと?」
「鈴先輩、闘技場で戦うなら問題ないんですよね?」
「うんうん、物分かりが良いし頭の回転も速くて助かるわ。その通りよ」
「ありがとうございます。どうですか? システィーゾ」
「……チッ、良いだろう。首を洗って待っていろ」
イラついた表情のシスティーゾが離れていく。
気になるのはシスティーゾの足跡が焦げ付いて黒く地面に残っている事。
明らかに能力の影響なのは確かだが……。
「私達、精霊級の着ている服は魔導級が総力をあげて作った物だから大丈夫よ」
「え?」
「システィーゾの能力で彼の服が燃えないのか気になったんでしょ?」
「はい……」
「耐火性、耐熱性を極限まで上げてる素材でできてるから問題ないわ」
「そうなんですか」
「それでも戦意っていう熱は消せないから私が後でシスティーゾと戦わないといけないんだけどね」
「それは……」
「力がある者ほど、きちんと制御する責任があるわ。ましてや欲求不満で能力を暴発させたりしたら笑えない」
厳しい目をシスティーゾの背中に向ける鈴 麗華から冷気を感じる。
「えっと、先輩も冷気が漏れてると思いますが……」
「あ……、内緒よ?」
「もちろんです」
少し気まずげな鈴 麗華は、しっかりと俺に口止めした後、システィーゾを追っていった。
二人の戦いを見たいが、見たら俺も歯止めが利かなくなりそうなので俺は木刀を出して素振りを始める。
やはり俺は戦闘狂なのだろうか……?
その日は実技の授業が終わった後も改めて自分について考えていたが、けっきょく寝る直前になっても結論が出なかったので考えるのをやめた。
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