第31話
『学園長、周りの保護を‼︎』
『これは洒落にならないわ、ね‼︎』
黒鳥夜 綺寂は龍造寺の叫びに反応し、すぐさま自分の影を足で叩くと異能力図鑑と才歪の後方に影の壁が広く出現した。
どうやらシスティーゾと鈴 麗華の攻撃は生半可な防御では受けきれないと判断したらしく、余波による市街地への被害を少なくするのに専念したようだ。
まあ、俺から見ても今回の二人の攻撃は今まで見た広範囲制圧攻撃とは次元が違い、何というか普段の攻撃が普通の川の流れなら今回は津波ぐらいの差がある。
『う、く……』
『学園長⁉︎』
炎と氷が異能力図鑑達に炸裂し強烈な紅と蒼の光がぶちまけられると轟音に強い揺れも発生し、黒鳥夜 綺寂が少しふらついた。
…………俺でも斬るには全身全霊を必要とするほどの影を生み出せる黒鳥夜 綺寂が平然とはできないのか。
あいつらどれだけ強力な一撃を放てるようになったんだ?
『ははは……、これは末恐ろしいなんてものじゃないな』
『武鳴隊長、なぜですか……? 確かに身体を一部でも精霊化した異能力者の一撃は強力なものとなります。しかし、あれは、いくら何でも……』
『それだけシスティーゾと鈴に潜在能力があり、なおかつ鍛錬してきた証拠だろう』
『雷門、風夏、きっと、それだけではありませんよ』
『学園長?』
『システィーゾ君と麗華は、ずっと鶴見君と行動をともにし実力差を見せつけられても本気で勝とうとしていました。そんな二人が追い詰められて心が折れかけていても、鶴見君の名前を出されて限界を超えられないわけがないです』
『おお‼︎ それはそうだな‼︎』
『やはり、貴様か……』
『確かに。ですが、まさか、異能力者の最上位である精霊級の中でもごく限られた一部しか到達できないと言われる、自分の身体を自らの異能力に変化させ爆発的に異能力の出力を引き上げる精霊化へ手をかけるまでとは思いませんでした』
『それだけシスティーゾ君と麗華は鶴見君に勝ちたいと思っている証拠ですね』
『…………』
黒鳥夜 綺寂の説明に聖隊長の武鳴 雷門は大きく感心し、副隊長の入羽 風夏は秋臣をにらんできて、流々原先生は納得しつつ驚き、秋臣は黙り込んでしまった。
入羽 風夏はどうでも良いとして、気になるのは秋臣だな。
『秋臣、どうした?』
『…………いえ、何でもありません』
『明らかに気配がさっきまでと違うぞ。何でもないわけがないだろ』
『その、少し、思う事がありまして……』
『秋臣、お前は表に出てから俺の指示を受けつつ動いた学外の戦いで間違いなく強くなっている。システィーゾと鈴 麗華の事は気にしすぎるな』
『あの……』
『何だ?』
『今の二人と戦ったら勝てますか?』
『うん? そんなの全快同士で戦えば俺が勝つに決まっているだろ』
『即答できるんですね……』
秋臣が俺の返答に困惑したんだが、いったいどうしたんだ?
『まあな。システィーゾと鈴 麗華がどれだけ異能力を強くしても、発動速度が俺の速さを上回ってないなら今までとたいして変わらない』
『それは、そうですが……』
『秋臣、前にも言ったと思うが、俺は秋臣の身体で最速に至っている。だから俺の動きはお前にもできる事だ。この戦いが終わってからじっくり練り上げていけば良い。今は頭の隅にやって気にするな』
『……わかりました。実際のところ、余計な事を考えてる場合じゃないですよね』
俺は秋臣が気を取り直したのを確認して内心ホッとしていたら、再び強烈な二色の光と轟音と揺れが発生した。
秋臣はヒュッと息をのんだが、すぐに気になる事を思いついたらしく流々原先生の方へ顔を向ける。
『あの、異能力図鑑さんと才歪さんは、異能力図鑑さんの空間の異能力で攻撃を防げるんですよね? それに空間移動されて逃げられたらまずいと思うのですが……?』
『いえ、今は攻撃の継続が正解なのよ』
『そう、なん、ですか……?』
『もちろん異能力にも相性差はあるわ。でも、それ以上に異能力の出力の方が重要なの。数段強ければ、強い方が相性差を消し飛ばすのよ。精霊化に手をかけたシスティーゾ君と麗華の攻撃にさらされて自由に動ける事なんてありえないわね』
『つまり、あの攻撃が直撃している場所で異能力図鑑さん達は耐えるしかなくなっている?』
『そういう事。学園長、ここは攻め時では?』
『そうね。ここでさらに押せば、異能力図鑑は私達の確認したい行動をするはず。雷門、風夏、参戦してください』
『了解だ‼︎』
『学園長……、わかりました。行ってまいります』
『『はあっ‼︎』』
黒鳥夜 綺寂の指示を受けた武鳴雷門と入羽 風夏は、全身を精霊化させ学園長室の窓から飛び出てい君、その数瞬後、体感で倍以上に感じる光と轟音と揺れが起こる。
おいおいおい、ここまで激しくなったら気配やなんかも全て乱れて感知したり映し出す事なんてできなくなるぞ……。
『四人ともその調子です。このまま異能力図鑑を追い詰めてください』
『が、学園長、いったいこの先、何が起こるんですか……?』
『おそらくあと数分もしない内にわかると思うので、少しだけ耐えてください』
流々原先生も特に慌てていない。
本当にこいつらの狙いはなんだ?
◆◆◆◆◆
俺と鈴が肉体じゃなくなった手から炎と氷を放ち異能力図鑑と才歪を攻撃していて突然強い気配を感じたから見上げると、異能力図鑑と才歪がいるだろう場所の空中に雷と風の塊があった。
…………あれは聖の隊長と副隊長だよな?
あ? 雷野郎が俺と鈴をチラッと見た後に攻撃の構えをとった。
「チッ、そういう事か。おい、鈴‼︎」
「わかってる。武鳴隊長に攻撃のタイミングを合わせるわ」
「後入りしてきた奴らに命令されるのはムカつくが、あいつらの方がもっと気に入らないからやってやるよ‼︎」
俺と鈴と風女は雷野郎の手が振り下ろされると同時に、それぞれの攻撃を放つ。
カッ、ズズズズズズ‼︎‼︎‼︎
「うおおお‼︎ やばい‼︎ 鈴、下がるぞ‼︎」
「これは本当にまずいわ‼︎ 学園長、すみません‼︎ 被害の軽減をお願いします‼︎」
「そんな事は良いから逃げるんだよ‼︎」
炎と氷と雷と風が集中した結果、とんでもない規模の爆発が絶対に起きるとわかる光と振動が起き始めたため、俺は自分の影を通じて学園長のばあさんへ被害を抑える要請をしている鈴に近づき担ぎ上げ走った。
そして一瞬後に爆発すると確信した俺はできるだけ深い穴を炎で掘りためらいなく飛び込み、穴の底で鈴の生み出した氷に包まれる。
さすがに冷たいが、異能力図鑑達と相打ちで鈴の氷に埋もれた時に比べたら息はできる分マシだな。
そんな事を思いながら俺は鈴の氷の外側に炎を巡らし爆発の衝撃と熱に備えた。
ズズズズズズズズズド…………。
……………………うん? 振動が無くなった?
俺と鈴は氷の中で顔を見合わした後、炎と氷を消して穴から慎重に出ていくが、その途中でほんの少しだが身体の内側から見えないものを引っ張られている感覚を覚える。
「おい、この変な感じは何だ……?」
「わからないけど、原因は想像つくわ」
「チッ、異能力図鑑か。今度は何をしやがった?」
「確かめに行くわよ」
一歩一歩確実に足を進め、俺達四人の攻撃が炸裂するはずだった場所を見渡せる位置まできた。
「あれは、どういう状況だ……?」
「私達の攻撃を吸収している?」
『ようやく確認したい事が見れますね。これで態勢が整います』
数瞬前まで破裂寸前だった光が徐々に縮んでいっている。
あの中心にいるのは間違いなく異能力図鑑だと理解できるものの、やっている内容はわからない。
ただ影を通じて聞こえた学園長のばあさんの声がニヤリと笑っている感じに聞こえるから、俺達にとってもマイナスではないようだ。
…………良いだろう。
絶対に消し飛ばしてやる。
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