第28話
『ごふ……』
『うぐ‼︎ 秋臣⁉︎ おい、秋臣⁉︎』
『かはっ、あ、主人……』
秋臣の脇腹をえぐられたため、その痛みが俺と葛城ノ剣にも伝わってきた。
しかし、そんな痛みはどうでも良いから無視をして秋臣の状態を確認していく。
『……くそ‼︎』
『おい、主人のケガはどうなんだ⁉︎』
『完全に内臓もえぐられてやがる。どう考えても重傷だ……』
『なぜだ……? なぜ、あのタイミングでここまで的確に迎撃された⁉︎ 完璧にあの二人の視覚と異能力を封じたはずだぞ⁉︎』
『ああ、俺もそう思う。だが、はっきりとした理由はわからない‼︎』
俺と葛城ノ剣が悔しさから荒れていたら、コツコツと足音が近づいてくるのを認識する。
この状況で近づいてくるのなんて、あいつしかいないだろ。
秋臣もそれに気づき震えながら視線を向けると、憎たらしいくらい落ち着いた表情の異能力図鑑が立っていた。
『なるほどなるほど、他者の異能力を消す光か。切り札と言って過不足のない力だな。おそらく、紋綴りを倒したのもそれのおかげなのだろう』
『ゴボッ、どうして……』
『秋臣、しゃべるな⁉︎』
『ゲホ、ゲホッ‼︎ 何で、攻撃を……』
『ふむ、迎撃されたのが理解できないようだな。無理もない。こちらの手の内を自ら明かす義理もないのだが、ここまでの健闘を讃えて開示するとしよう』
『…………異能力図鑑』
『このくらいの気の緩みは構わんさ。さて、なぜ君が才歪に迎撃されたのか、それは我輩の二つの異能力に原因がある。具体的に言えば大地と通信の異能力だな』
俺は異能力図鑑の言った異能力名から想像がついてしまった。
秋臣も同じようで弱々しく歯を食いしばっている。
『その様子では理解したようだが、あえて説明しよう。まず、君が放った光により我輩達の視界と異能力は潰されたのは確かだ。しかし、潰され方に差があった事で君は今の状況になっている』
つくづく自分で理解している事を敵に説明されるのは腹が立つものだな。
『強い光を直視した我輩と才歪の目はもう数分使い物にならない。だが、異能力に関しては光が消えた瞬間は再使用可能となっている。そこで視覚に頼らない感知方法として選んだ大地の異能力を発動した後、君の足音の振動を地面越しに感じて迎撃する方向とタイミングを通信の異能力で才歪へ伝えたというわけだ』
『…………突然だっだがら反応が遅れだわ』
『うむ、それに我輩もこの大地の異能力を使いこなせているわけではないため、感知精度はそれほど高くない。才歪の突きが直撃せず君が重傷ですんでいるのは、そのせいだ。今まで使わずにこれた手札まで切らせ、我輩達に後手を踏ませている君の戦闘力を素直に賞賛するよ』
『…………でも、ここまで』
『そう、こうして話している間に視界も回復した。幕引きだ』
異能力図鑑が掌を向け光線を放つ姿勢となり、才歪も全力の伸びる突きを繰り出す構えとなる。
クソッ‼︎ クソッ‼︎
仮に異能力図鑑の光線を葛城ノ剣の光で消しても才歪の突きをくらってしまうし、かと言って今の秋臣に才歪の突きを避けるだけの力は残されてない。
さっき秋臣が生き残れたのは単なる偶然だとして今はどうする⁉︎
このままじゃ秋臣を守れない‼︎
どうすれば良い⁉︎
『我輩達をここまで苦戦させた存在を消すのは、いささか物悲しくはあるが我輩の目的の前には無意味。我輩達の前から消えろ』
『てめえらが』
『あなた達が』
『消えろ‼︎』
『消えなさい‼︎』
何もできないまま異能力図鑑の掌の発光が強まり光線が放たれようとした瞬間、膨大な赤と青の光が秋臣の視界を埋め尽くし、秋臣の身体がゴプンと粘り気のある液体に沈んだのを感じた時、秋臣の意識が落ちるとともに俺と葛城ノ剣の意識もなくなった。
◆◆◆◆◆
『…………ん‼︎ …………君‼︎ …………こえる⁉︎』
誰かの呼びかける声が聞こえる……。
誰だ……?
秋臣はどうなった……?
秋臣……、秋臣⁉︎
俺が意識を覚醒させ周りを見ると、俺は秋臣の奥底にいた。
…………俺がここにいるなら、まだ秋臣は死んでいないという事で、秋臣が表に出ている状態のはず。
全く状況がつかめないため急いで秋臣の状態を確認しつつ外の様子を探る。
秋臣が覚醒してないためか外の状況を探りづらくはある……が、何とか気配と声を認識できた。
『鶴見君、聞こえる⁉︎ そのまま眠ってはダメよ‼︎ 起きて‼︎』
『…………この気配と声は流々原先生だな。それに黒鳥夜 綺寂の気配も感じる? どういう状況だ?』
『麗華、システィーゾ君、鶴見君の学園長室への移動を成功して流子の治療を受けさせているわ。まだ微かだけど息をしているから最悪ではないの…………って、聞いてる?』
ああ、あの濃い液体に沈んだ感覚は影に沈んだものか。
どうやら俺達は黒鳥夜 綺寂の影を通って学園長室へ戻されたらしい。
俺は秋臣の安全を確保できた事に気が抜けそうになった。
しかし、すぐに黒鳥夜 綺寂がシスティーゾと鈴麗華の名前を言っていたのを思い出し、外の気配をできるだけ正確に探ってみる。
その瞬間、俺達から離れた場所でシスティーゾと鈴麗華の気配が爆発的に広がった。
◆◆◆◆◆
「チッ、いねえな。外したか?」
「そうね。どうやってかはわからないけれど、私の氷とシスティーゾ君の炎は避けられたみたい」
「あいつら、どこに行った?」
「わからないわ。あの隠蔽の異能力で隠れてるんじゃない?」
『麗華、システィーゾ君、鶴見君の学園長室への移動を成功して流子の治療を受けさせているわ。まだ微かだけど息をしているから最悪ではないの…………って、聞いてる?』
「だっだら、あぶり出せば良いよな?」
「ええ、広範囲を無差別に殲滅すれば良いわ」
「言っておくが、加減するなよ?」
「それは私のセリフね。システィーゾ君こそ中途半端な事はしないで」
俺と鈴は鶴見にとどめを刺そうとしたあいつらへの奇襲は失敗したと理解したが、いっさい動揺をせずそのまま次の攻撃を放った。
ちなみに攻撃内容は鶴見がやられそうになった怒りや戦いに加われなかった自分へのイラつき何かを全て込め、俺は炎を、鈴は氷を、全身全霊で周りの被害を考えずぶちまける事だ。
「…………おい、鈴。手応えはあったか?」
「ないわ。この状況で私達の攻撃から逃れられるという事は、どこかその辺で姿と気配を隠しているとかじゃなさそうね」
鈴が周りを見ながらつぶやいた意見は俺も同感だな。
俺と鈴を中心に吾郷学園以外の辺り一面の建築物が崩壊消滅している状況で、俺達の攻撃を避けられる方法があるなら逆に教えてほしいと少し考えていると、俺達の影が震えた。
『あなた達、さすがにやり過ぎよ。戦いが終わった後の復興にどれだけ時間と予算がかかるかわかったものじゃないわ』
「学園長、申し訳ありません。ですが、ここで手を抜くのは違うと思うので」
「おい、あんたはあいつらの居場所わかるか?」
「システィーゾ君、言葉使い‼︎」
『麗華、私も必要だとわかっているから被害額には目をつぶるわ。今は目の前の相手に集中しなさい。それであの二人の居場所だけど下よ』
「地下か?」
『そう、隠蔽のせいなのかはっきりとした位置まではつかめないけど、いるわ』
「確か鶴見君と戦っている時の最後に発動させた異能力が大地と通信でしたね。……地中を通って学園に侵入するつもりでしょうか?」
「どうでも良い。鈴、今度こそあぶり出すぞ」
「わかったわ」
『待ちなさい。二人が地下を攻撃するのは大規模な崩落を招くから、追い出し役は私よ。あなた達は出てきた後をお願いね』
「了解しました」
「良いだろう」
学園長との会話が終わると俺達の影や瓦礫の影が広がった。
そして次の瞬間、俺達からは少し離れた場所が大きく盛り上がっていきボゴンと大きな塊が空中へ弾き出される。
あれは……岩と土の塊か?
まあ良い、鈴を見たら頷き返してきたから、俺達は炎と氷を全力で塊へぶち込んだ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
また「面白かった!」、「続きが気になる、読みたい!」、「今後どうなるのっ……!」と思ったら後書きの下の方にある入力欄からのいいね・感想・★での評価・イチオシレビューもお待ちしています。




