第13話
閉じられた空間を脱出した俺の耳に戦闘音が入ってきたのだが、明らかにおかしい。
なぜなら一ヶ所や二ヶ所ではなくあらゆる方向から聞こえてくるからだ。
俺はすぐさま近くで一番高い建物の屋上まで外壁の凹凸を足場に跳び上がって周りを見ると、あちこちで火災や黒い煙が立ち昇っている。
「…………チッ、これだけの異常事態に気づけなかったのか」
『あの二人が作り出した空間の影響だろうな。まさに中と外を断絶させる閉じた空間だったと言える』
「一応聞くが、お前の同類の気配はどうだ?」
『今のところはないと言っておく』
「この異常事態で確証のある情報なしか……」
『これから、どう動くつもりだ?』
「基本は学園に戻る。だが途中で襲われている一般人がいたら助けるし、見つけた怪しい奴は片っ端からぶちのめす」
『まあ、取れる選択肢はそのぐらいしかないな。健闘を祈る』
その言葉を最後にした葛城ノ剣は奥底へ沈んでいったため、俺は屋上から飛び降り移動を再開した。
◆◆◆◆◆
俺の移動手段は徒歩で建物壁や屋上を飛び跳ねているんだが、一区画も移動しない内に戦闘と出くわしたのは運が良い。
なぜなら異能力を乱発させて暴れている奴を抑え込もうとしている異能力者の警官達がいたからだ。
一瞬敵の警官だった烏丸の事が頭をよぎったが少しでもこの異常事態の情報を得るために、俺は邪魔な暴れている奴の顔面を蹴り飛ばして警官達の前に立った。
「な……」
あ、さすがに突然すぎたみたいで警官達が唖然としているが、今は緊急事態ゆえに見逃してもらおう。
「あ、すみません。僕は吾郷学園の生徒の鶴見 秋臣と言います」
「き、君が鶴見 秋臣……」
俺が秋臣の名前を口にしたら警官達が驚愕した顔になった。
「あれ? 僕の事を知っているんですか?」
「器物級でありながら精霊級を圧倒する実力者として我々のような治安維持を担当しているもの達の間で知れ渡っています」
「そうですか。よっと」
「ガペッ」
俺に蹴り飛ばされた奴が起き上がり異能力を発動させようとしたから、一気に間合いを潰して顎を掌底で打ち抜く。
当然、暴れていた奴は意識を失い膝から崩れ落ちたわけだが妙だ。
暴れていた奴を拘束している警官達を見ながら思わずつぶやいてしまう。
「奇襲でかなり強く蹴り飛ばしたから起きてこれるはずがないんですが……」
「その点は私達も不思議に思っていて、感知分析班から精神干渉か操作をされているようだと」
「なるほど、きちんと一撃で意識を刈り取る必要か動けなくさせないとダメというわけですか。ちなみに吾郷学園の方は、どうなっているかわかります?」
「…………かなり大規模な襲撃を受けているようです。」
「わかりました。道中で目についた暴れている奴は気絶させておくので、後始末は任せますね」
「了解しました。よろしくお願いします」
その場にいた警官達から敬礼をされたので見よう見まねの敬礼を返した後、俺は吾郷学園へ向けて足を進める。
◆◆◆◆◆
街中を飛び跳ねながら進む事二十分ほどで建物の屋上から吾郷学園を見渡せる場所までやってこれた。
俺にしては時間がかかったが、襲われている一般人を助けて避難させつつ暴れている奴を片付けていたら仕方がないな。
まあ、それはそれとして今までの過程よりも目の前の事に集中する。
サッと見回した限り、あの警官が言った通りの大規模な襲撃があったのは、街中よりもさらに激しい戦闘音や爆発音に黒煙が起きているから間違いないようだ。
ただ現状だと吾郷学園の敷地全体が黒鳥夜 綺寂の異能力だろう影に覆われているから、敷地内に攻め込まれる最悪の事態にはなっていないらしい。
敵の目的が何なのかはわからないが、とにかく今俺のするべきなのは最速で敵を殲滅する事。
俺は敵の位置を確認するために全力で周囲の気配を探っていく。
すると、確かに吾郷学園側の人間と敵側が戦っているところもあったものの、少なくない場所で聖同士が戦っているのも感知できた。
「…………葛城ノ剣」
『お前の感覚を通して認識した。さっきも言ったが今のところ我の同胞の存在は感じない。それ故に、この聖の同士討ちを引き起こしているのは敵の異能力者だろうな』
「聖の何人かが自分の意思で裏切った可能性を今は置いておくとして、問題はその原因の異能力者がどこにいるのかと、その異能力者を倒して聖が元に戻るのかだな」
『倒してみないと何とも言えんな』
「そうだよな……」
『最悪、聖が元に戻らなくともお前が全ての敵を倒せば良いだけだ』
「そう考えておくしかないか。わかった。これから本気で鎮圧に回る。何か気づいた事があれば教えてくれ」
『うむ、良いだろう』
俺は頬を軽く叩き気持ちを切り替えてから屋上から飛び降り戦いへ身を投じた。
◆◆◆◆◆
まず俺が向かったのは最も激しい戦いが起きている正門前付近を見通せる建物の屋上だ。
何でここに来たかと言えば、こういう誰かに干渉して騒ぎを引き起こす奴はその騒ぎを一番近くで眺めていたのではないかという予想を立てたためで、全く根拠はない。
そんなわけで、とりあえず状況を確かめようとジッと見ていたら一つの目立つ集団が目に入った。
その集団の見た目は子供連れの四人家族で、なぜか操られている可能性が高い聖や敵に狙われているため正気の聖達によって正門前で守られている。
おそらく守っている側の聖達は、どうにか守りながら時間を作りその家族を吾郷学園内へ避難させようとしているものの、学園内は学園内で何か別の緊急事態が起きているらしく吾郷学園を覆っている影に入り口が開く様子はない。
もしかしたらあの家族が敵の可能性もあるため中へ通すのをためらっているのかもしれないため、俺は屋上からかなり強めの殺気を放つ。
すると、正門前を守っている聖も襲っている聖も敵も、その家族も全員が俺を見た。
…………なるほどなるほど。
俺は一つの確信を得て屋上から飛び降り着地して近くの敵や襲っている聖を倒しながら叫ぶ。
「その家族を正門前から話してください‼︎ 敵の可能性が高いです‼︎」
「本当か⁉︎」
「少なくとも僕の殺気を浴びて気配を乱さなかったその父親と母親と女の子は普通じゃないです‼︎ それと僕の殺気に対してイラついたその男の子が、たぶん主犯だと思います‼︎」
「セイッ‼︎」
俺の言葉に反応した聖の一人はその男の子に攻撃を加えたが、その家族に見える奴らは男の子を守るように大きく跳んで正門前から離れたところに着地した。
「そこまでの身体能力があるのに一般人を装う意味なんてそうはないですし、何より明らかに他の三人は無表情になりお前を守っています。敵で確定ですね」
「グ、グギィ、忌々じい奴め‼︎ もう少じで、中べ入れだものを‼︎」
どう見ても普通の男の子の顔がクシャとしわくちゃになり、さらにその口から濁った老人の声が出てきたら驚くしかない。
「ぞもぞもあいつらが時間を稼げないのが悪いのだ‼︎ 役立だずどもめ‼︎」
「自分の無能を棚に上げるのは良くないですよ?」
「何じゃどっ⁉︎」
「あなたがもっと静かに素早く学園内へ入れたら、それで済んでいた話では?」
「黙れ黙れ‼︎ ごうなっだがらにば、ごの場のものどもを全で操っで学園内べ攻め込んでぐれるわ‼︎」
「あ?」
見た目が子供の奴の口から操るという発言が出た瞬間、俺は秋臣を守れなかった時の事を思い出し殺気を溢れさせてしまう。
「びっ‼︎ な、何じゃ⁉︎ おま、が‼︎」
「もう、しゃべるな」
「が、ぐ、うげ、がぶ……」
そして他の三人に守られていだが加速して顔をつかみ引き離し、こいつの意識に向かって全力で殺気を集中させる。
本気でぶちのめそうとは思ったが、万が一身体は本物の子供で意識だけ憑依しているパターンを思いつき意識だけを殺す事にした。
その結果……。
「よし、この身体からこの人の意識が無くなったら襲っていた聖も家族も動きを止めましたね。僕は少し離れるので敵の鎮圧をお願いします」
「あ、ああ、わかった」
◆◆◆◆◆
俺は遠くに現れた乱れた気配のもとへ走り、その建物の地下室の中を覗くと一人の老人が膝をつき呼吸を必死に整えていた。
「がは……、は、は、は、はあ……、あぞごまでの化物だっだが……、ぐぞっ、あやづに伝えねばまずい。ごのままでは計画が……」
「ぜひ、その計画の内容を聞かせてもらえますか?」
「び、な、なぜ、貴様がごごに⁉︎」
「あなたの気配を感じて追ってきただけですけど?」
「化物が‼︎ だが、ごごで貴様を操れれば良い話だ‼︎ わじの真言をぐら、げぺ……」
口を手で塞ぎ真言とやらを発動させようとしたから、加速して隙だらけの腹に拳を叩んだ。
そして青い顔で今にも気絶しそうな老人の髪の毛を左手でつかみ顔を上げさせると、右拳を見せつける。
「あなたみたいな異能力者はぶちのめすと決めてるんですよ」
「ま……で……」
「あなたみたいなのは痛めつけてるのに何のためらいもないので助かります。それでは、覚悟しろ」
老人の髪の毛を離して床に倒れる前に両拳で十数発胴体と顔を殴り老人をズタボロにする。
一応、床でピクピク痙攣しつつかろうじて息をしているのを確認した後、俺は老人を担ぎ学園へ戻っていった。
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