第12話
再び俺対フレア達の戦端が開かれたわけだが、とりあえず注目するべきなのはフレア以外のホストみたいな服装のシンヤと警官の異能力だろう。
おそらくフレアの異能力である強靭な糸と相性の良いものだとは思うが、今のところは見た目以外の情報しかないから何とも言えない。
俺は軽く腰を落としたまま迎撃の姿勢をとっていると、警官が腰から拳銃を抜き出して俺に向けて構えちゅうちょなく撃ってきた。
いろいろと選択肢はある中で、俺はとりあえず身体を前に倒しながら弾道からそれつつ跳び警官の前に立つ。
「「え?」」
「な……、がはっ‼︎」
そして突然接近され棒立ちになっている警官の腹を蹴って吹き飛ばす。
フレアとシンヤは警官が地面へ転がる音で正気に戻り俺に向けて異能力を使おうとしてきたが、その時には俺は二人の後ろへ回り込んでいた。
完全に俺を見失い動けなくなっているこの二人の後頭部を殴ろうと思い拳を動かそうとした瞬間、警官から強い視線を感じたため二歩下がったら俺のいた場所を銃弾が通り過ぎていく。
この発砲音がしていないのに銃弾が飛んできた不可解さに警官を見たら、その間に殴ろうとしていたフレアとシンヤに距離を取られてしまうがどうでも良い。
「…………間違いなく発砲音はしなかったですし、そもそも今のあなたは拳銃を構えていません。それなのに僕を狙った弾丸が通り過ぎた」
「ふー……、ふー……」
「そこまで息が乱れていたら異能力の複雑な発動は難しいはず。たぶんできるとしたら、すでにあるものへ何か簡単な指令を出す事。例えば……」
俺が思いついた事を言おうとしたら、また警官から強い視線を感じたので前に大きく一歩跳ぶと俺のいた場所を弾丸が通過した。
「自分がにらんだところへ飛んでいけとかでしょうか。これだったらあなたの視線を強く感じた理由も、一度目の弾道から大きく離れたこの場所を再び弾丸が通り過ぎた理由も納得できます。そんなに外れてないと思いますが、どうですか?」
「ふー……、ふー……、ふっ‼︎」
警官はこれが答えだと言わんばかりに呼吸を整えた後、俺に向けて発砲してきた。
ふむ、これでこの警官の異能力についてさらにわかったな。
弾込めしていないのにまた撃ってきたという事は、どうやらこの警官は警察から支給されている実物の拳銃に異能力で生み出した銃弾を装填して撃ってきているようだ。
もしかしたらまだ切り札があるかもしれないが、俺はこれぐらいならどれだけ撃たれても何の問題もないと判断して戻ってきた一度目の五発と今回の五発の計十発を全て木刀で打ち砕いた。
「「な……」」
「「え?」」
「「は?」」
「…………うーん、あなた達の僕への評価がよくわからないですね。僕を倒すためには少なくともあなた達六人がかりじゃないと確実性がないと判断したはずなのに、どうして僕が銃弾を粉砕した程度で驚いているんです?」
「「「「「「…………」」」」」」
「そろそろ僕からも攻めます。後悔しないよう全力を出してください」
「な、舐めるな‼︎ フレア‼︎」
「ええ、わかってるわ‼︎」
シンヤに呼ばれたフレアは両手を何度も動かし糸で今までで一番大きな網を作っていく。
そしてその網の大きさが建物を覆えるほどになってきた時、シンヤも両手を動かし掌からほとばしる何かの液体を吹き付けた。
シンヤの行動の意味がわからず凝視していたら強いアルコール臭が俺の嗅覚を貫く。
悪臭に慣れている俺でも嗅ぎ慣れていないものはきついなと鼻を押さえて若干涙目になっている俺を尻目に、シンヤは懐からライターを取り出し着火させた。
「くらいなさいっ‼︎」
「燃えろっ‼︎」
路面を斬り裂ける糸でできた燃える網か。
普通の奴ならこのままバラバラになって燃やされるんだろうし、どうにか燃える網を避けようとしても警官が銃口を向けて狙っているから体勢を崩したところを撃ち抜かれるだけ。
しかし、俺には関係ないので加速しながら建物の壁を足場にして跳び、迫ってくる巨大な燃える網を飛び越えて警官の前に立ち眼前に木刀を突きつける。
「僕の速さを見たのに、そんな隙だらけの攻撃をしてくる意味がわかりません」
「へ?」
「おやすみなさい」
「がひゅ……」
「「烏丸⁉︎」」
烏丸という名前の警官に数発木刀を叩き込み気絶させてから叫ぶフレアとシンヤを見ると、二人は自分達の周囲を糸とアルコールで覆った。
ようやく俺の速さに対する認識を改めたようだが、まあ、それも無意味だな。
俺は音と色のない世界へ入り糸とアルコールを細切れにして霧散させ、警官の烏丸と同じく木刀を数発ずつ打ち込んだ。
元の位置に戻ってから音と色のない世界を解くと、何が起きたのかまるで理解できてないフレアとシンヤが崩れ落ちる。
その様子を俺は特に何も思わず見ていたのが、二人が路面に倒れた後でその前に倒した烏丸へ目を向けた時、ある疑問が頭をよぎった。
それは、この三人の役割は本当に俺を倒すものなのかという事だ。
確かに三人の異能力の相性は良くて精霊級の一人、二人くらいなら倒せてもおかしくない強さだが、俺を相手にするにはどう考えても弱い。
しかも紋綴りは、ある時から俺が驚異的な戦闘力を発揮しだしたとも言っていた。
紋綴りが知っていたならフレア達も知っていたはずだ。
自分達の異能力に自信を持っていたとも考えられるが、抹殺指令を受けていたならもっと念入りに戦力を投入してもおかしくない。
そしてふと、この閉じられた空間を維持している彼方と此方の二人へ見たら三人が倒されたのに驚きもしておらず、何というか覚悟を決めた顔をしていた。
それと二人の足もとに転がっていたはずの紋綴りは起き上がっていて、その顔にも驚きや焦りもない。
俺とフレア達三人の戦力差、紋綴りの発言、そして紋綴りと彼方と此方の表情の全てを考えて一つの結論が出たため、俺は紋綴り達へ問いかける。
「もしかしてですが僕は誘い出されていて、あなた達の目的は僕の抹殺ではなくこの空間に閉じ込めた状況での時間稼ぎですか?」
「…………さすがに気づかれたか」
「あっさり白状するんですね」
「彼方と此方の空間から自力で脱出するのは至難の業で、さらに俺がこの二人を強化すれば鉄壁だ」
紋綴りは言い終わると同時に彼方と此方の手の甲や首に本体である筆を走らせ紋様を描いていった。
なるほど、確かに閉じられた空間の圧迫感が増したな。
「ここまでして時間稼ぎする理由は何です?」
「それに答えると思うか?」
「いえ、聞いてみただけです」
俺は紋綴りへ軽く返答した後、閉じられた空間と外との境界の前へ移動して木刀を構えた。
確実に葛城ノ剣の光を使えば突破できるとは思うが、なんとなくこれ以上手札を切るべきじゃないという判断から木刀へ意識を集中させる。
「何をする気だ? まさか、その木刀で空間の境を斬り裂くつもりか?」
「そうですよ」
「「無理、今の僕達の空間は誰にも破れない」」
「くはは、本当に僕への理解がいまいち浅いですね」
「何だと?」
「見ていればわかりますよ」
紋綴りは俺の返答が不満なのかまだ何か叫んでいたが、俺は無視をして音と色のない世界へ入りぼんやりとしているが確かに目の前にある空間の境を頭の中で確かな形を作っていく。
そして、ある瞬間頭の中で作り上げた形が目の前の空間の境へ適応され形を持っているように見えた。
よし、これなら何の問題もない。
俺がいっさい力まず、いつものように最高の斬撃を繰り出した結果……。
「バカな……」
「「うそ……」」
音と色のない世界から戻った時には、俺に斬られた部分から閉じられた空間は霧散して遠くまで見通せる普通の街中の風景になっていた。
「ふう、無事に斬れましたね。それでは失礼します」
「ま、待て‼︎」
俺は紋綴りの叫び声を聞きながら加速して走り出す。
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