第11話
サッと見回した限り五人の見た目は、吾郷学園じゃない制服のどこにでもいそうな男女一人ずつ、男の警官が一人、あれはたぶんメイド服だろう黒い長髪で丸眼鏡の女が一人、そして濃い紫色のスーツを着ているホストっぽい男が一人だな。
こいつらが着物を着ていたら本当に禅芭高校の聖域で宙擦りを倒した時と似ている状況なのだが、まあ違うものはしょうがない。
それよりも俺には確かめておく事がある。
『おい、葛城ノ剣』
『何だ?』
『この筆は、お前の仲間で良いんだよな?』
『ずいぶんと昔に使い手が見つかり聖域を出た後の事はわからないが、我と同類であるのは間違いない』
『それじゃあ、あいつらの中にお前の同類はいるか?』
『ふむ……、はっきりとは言えんが、おそらくあやつらは人だな』
『そうか、わかった』
『一応言っておくぞ。油断するなよ?』
『俺は秋臣が傷つくのを許す気はない』
『くくく、期待している。それではな』
俺がキッパリと宣言すると、葛城ノ剣は奥底へ戻っていった。
ただ、可笑しそうな呆れたような含みのある笑いは何なのか今すぐ問いただしたいが、状況的にやめておく。
「僕は吾郷学園のものです。あなた達はこの人に関係があるみたいですね? 話を聞きたいのでそのまま待機してもらえませんか?」
「「「「「…………」」」」」
五人はお互いに視線を交わして何かを確認しているらしい。
さて、どう来ると思っていたら丸眼鏡のメイドが一歩前に出た。
「はじめまして、私はメイドのフレアと申します」
「どうも、僕は鶴見 秋臣です。フレアさん、あなたが五人の代表と考えても?」
「知っています。はい。それで構いません」
「それなら先ほどの僕の質問に答えてください」
「私達の返答は……、これです‼︎」
フレア……、たぶんメイドをしている時の名前か?
そのフレアが叫びながら両手を振った瞬間、キラキラと太陽光を反射する網目が俺に向かってきた。
俺はとっさに倒れている紋綴りのベルトをつかみ、そのまま大きく跳び五人の囲みを抜ける。
そして空中で俺と紋綴りがいた場所を見ると、路面がサイコロ状に刻まれていた。
おそらくピアノ線みたいな強い糸だろうと分析しつつ着地した後に、紋綴りを路面へ投げ捨てる。
「ぐ……、き、さ、ま……」
「一応言っておくと、あなたを守ったのはあなたの証言が必要だからです。それよりもフレアさんでしたよね?」
「そうです。何か?」
「この人は仲間なのでは?」
「身体がバラバラにされても本体さえ無事なら、その内復活しますので」
他の四人もフレアの発言を否定しない事から、こいつらはずいぶん冷めた関係らしい。
「…………なるほど、いろいろと気になる事はありますが、とりあえずもう一度言っておきます。じきに吾郷学園の聖が到着するので、このまま素直に拘束させてもらえないですか?」
「それはどうでしょう?」
「その言い方、何か策があるみたいですね」
「私達に有利な状況を作れる算段が無ければ、こうして姿を現しませんよ。彼方、此方」
フレアがどこにでもいそうな制服姿の学生男女二人に呼びかけたら、その二人は向かい合い自分と相手の両掌を重ね合わせた。
「「ループ」」
二人が全く同じようにつぶやくと、二人を中心に空間の波のようなもの起こり広がっていく。
木刀で斬り裂くか葛城ノ剣の光で消し飛ばそうかとも思ったものの、特に殺気を感じなかったためどういう現象が起こるのか成り行きを見守っていたら、すぐに空間の波が俺を通り抜け消えた。
「……うん? 何も起きませ……」
空間の波を浴びた後でも感覚に変化がないため、何の意味があったのか考えながら周りに視線を走らせると五人の向こう側に秋臣の後ろ姿が見えその向こうにも五人の姿がある。
まさかと思い俺が後ろに振り返ると、そこには五人の後ろ姿がありその向こうにも後ろを振り向いている秋臣の姿が見える。
「これは……」
「彼方と此方が作り出した閉じられた世界へようこそ」
どうやら俺はあの二人の異能力によって一定範囲内に閉じ込められたみたいで、逆に言えばおそらくこの空間の外から中へは入って来れないと考えた方が良さそうだ。
「く、くく、くはは……」
「何がおかしいのですか?」
「あ、すみません。前に似たような状況になった事があったので、つい笑ってしまいました。決してあなた達を笑ったわけではありませんので気にしないでください」
俺が禅芭高校の聖域で茶器達の作り出した異能力を発動できない空間に入れられた事を思い出し俺はつくづく似たような状況に出くわすようだと笑ってしまったら、五人ともがピリつき始め、特にこの空間を生み出した学生二人はムッとした表情になっている。
「…………フレアの姉御、もう我慢しなくて良いよな?」
「フレアさん、私もシンヤに同意だ。そろそろ、攻めさせてもらうぞ」
「わかりました。これより鶴見 秋臣の抹殺指令を遂行します。彼方と此方は自分達を守る事と空間の維持を最優先に」
「「うん」」
五人はやる気をみなぎらせているわけだが、こいつらと戦うには紋綴りの身体が邪魔だと判断したため紋綴りの身体を抱えてから加速し学生二人の前に立った。
「「「な⁉︎」」」
「「え?」」
「先ほどのフレアさんの言い方からすると、あなた達二人は自分達を守る事もできるみたいですね。それならこの人の身体も守ってください」
「「あ、はい……?」」
「お願いします。よっと」
「こ、の、や、ろう……」
「強がるのは戦える状態になってからにしてください」
二人の足もとに紋綴りの本体である筆と身体を置くと、再び加速して元の位置に戻る。
「さて、それじゃあ始めましょう」
「…………どういうつもりですか?」
「何がです?」
「紋綴りを返して私達に恩を売ったつもりですか?」
「いえ、単にその人が邪魔だっただけです」
「その余裕、後悔させてあげます」
紋綴りを含めた六人が殺気立つ中、軽く腰を落として俺も戦闘態勢に入るとフレアと警官とシンヤが俺に襲いかかってきた。
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