毎年、強襲を受けます。
世の大学生のほとんどが頭を悩ませる定期試験。
単位認定のためになんとか合格ラインを確保したい学生たちは、この時期必死に勉学に勤しむ。既に梅雨という日本特有の季節は過ぎ去っていた。
季節は初夏、そう7月だ。
幼馴染とは、相変わらずだ。たまに帰りが一緒になれば、ごはんを食べたり、話したりとそれだけ・・・。
そしてあいつ、高西孝之は、なにを隠そう医大生だ。
高校3年の最後の大みそか、近所の神社へ初詣に向かった帰り道に偶然に出会って何気なく『俺・・・大学決まったから、医大』とぼそりと囁かれた報告。
『自慢かっ!医大生っ!!』そう言ってその背中を殴ったのは、私だ。
あの男は、落ちた時の事も考えて、私にどの大学を受けたのか、その結果は、どうだったのかという事をこの日までずーっと黙っていたのだ。
そういう男なのだ。
どの大学も大体定期試験の時期は変わらない。今頃あいつも定期試験を受けているのだろうと思考が逸れた瞬間、試験の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
これで追試という悪夢が無ければ私に夏が来る。
そう夏だ。
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定期試験の結果が配られて、無事に追試という悪夢を見ることもなく、私は8月を迎えた。
そんな8月の最初の日曜日。
私の家には、インターフォンが鳴り響いた。
「りーおーちゃん!あそびましょうーー!」
二十●世●少年かっ!怖いわ!そんな友達。
私を強襲したのは、小中学校の同級生たちだった。
孝之とまではいかないが、それなりに付き合いの長い幼馴染たちだ。
彼女たちが私の家を強襲した理由は、私と母が浴衣の着付けを出来るからだ。
「ねぇ、今年は、随分気合が入ってませんか?」
3人もの浴衣の着付けを終えれば誰だってぐったりだ。
やっと終わった着付け、母と共に満足な作品となった幼馴染たちはどの子もかわいい。
「で梨桜、あんたは?」
「無理です。走れないじゃないですか・・・」
「なんで走る事が前提なのよ、このお転婆娘っ!」
母からの提案は、一息に切り捨てさせてもらう。周囲から非難の声が上がるがそれらは全て無視だ。
だが私の抵抗は虚しく終わり、よそ行き用のおしゃれワンピに着替えさせられたのは、30分後の事だった。
私の地元では、毎年大きな花火大会が行われる。県外からも見物客が来るほどの大きな花火大会だが、そこは地元なので穴場スポットを知っていたりする。
毎年この日は、空いてる人間が集まって花火を見に行くのだ。
少し早めの時間に家を出て、たくさん出ている出店に入り焼きそば、リンゴ飴、綿あめやフランクフルトを買って穴場スポットで楽しむのがステータスだ。
メンバーは、いつも通りの男女各々4人ずつ。そのうちの一組は、カップル。彼氏彼女持ちが3人。フリーなのは、私と孝之、木村君だけだ。
彼氏彼女持ちの子たちは、パートナーを連れて来ても構わないと言うのを毎回断って、結局は毎年同じ面子になってしまっていた。




