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時に指は・・。

1年があっという間ですよね。

・・まだもし読んでいただけているのなら、どうぞよろしくお願いします。

変態に襲われないように必死に画策した私の作戦はある意味では成功した。

うーん。


「そう成功はしたのよ・・・」


例え寝ているバカを起こせなくて足が痺れて動けなくても。

畳みの上でぷるぷると震えている私を見つけて仲居さんがものすごく生ぬるい目を向けてくれても。

今現在、空いた膳を下げられた後に、すでに隣の部屋に何故か二つの布団が並べられていても。


「そう・・これは成功したの。でもっ!!いい加減起きろっ!!」


耳を引っ張ろうが怒鳴ろうが一切合切反応がないぞ。

つい脈を測り、眼の下を確認したり急性アルコール中毒にならないか心配したけどそういう感じでもない。

そして見つけた目の下の隈。

・・・こいつ。気づかなかったけど、無理をしてたのか。

そりゃそうだろう。

後3ヶ月後には東京で一人暮らしをするために資金調達のためバイトをギリギリまで入れて、医大生の中でも成績上位を保つためにそれなりに研究レポートやいろんな実験レポートもあるだろうし、苦労もしてるはずでそれでも私のために旅行を計画してくれたのだろう。

無茶だなぁと思いながら、その肩をゆするが反応はなく、軽く叩いてみる。


「寝るなら布団ー」


「あーうー」


赤ちゃんかっという唸り声をあげた熊をどうしたらいいのか。

途方にくれそうになりながら、現状を打破できそうな人を見つめる。その願いが通じたのか、彼女はそっと振り向いてくれた。


「あのー大丈夫ですか?」


「ダイジョウブでないデス」


気を遣ってくれてできるだけ見て見ぬフリをしてくれていた仲居さんがやっと私にそう話しかけてくれた。

うん・・・今はもう、恥じなんてどうでもいい。


「お手伝いしましょうか?」


「はいっ!・・・・足が・・・もう」


少しでも動ければ両脚を痛みに似たしびれが走ってとてもじゃないけど歩けそうにもない。

動くだけでももう無理だ。


「お客さまっ・・あちらにお布団に」


そう声を掛けられても膝の上の熊は唸る。

そう唸っているのだ。


「一度降ろしましょうか」


「お願いします。・・せーの」


人間の頭は結構重いが、それでも痛みの元をなんとか取り除くのに30秒。

痛む足をなんとか救出しました。

今私は、もしかしたらエコノミー症候群になりかけかもしれない。


「ありがとうございました。」


「うー」


「お客様ー、よろしければあちらへのどうぞ」


唸るクマは、半目。

よし、起きたっ!そう思って慌てて、立ち上がろうとした時には遅かった。

痺れきった足は思いもよらずに私の動きを止めた。うん・・・かっこよく言ってみたけどしっかり足をくじいて転びました。

どったーんという音と共に私の視界は畳だけです。


「つーーーーー」


「お客様っ!大丈夫ですかっ!」


ダイジョウブではないです。完璧に足をくじいたのとなによりも羞恥で顔があげられません。


「なにしてんだよ」


嫌にはっきりと声が聞こえた。いや誰のせいでとそう言い返そうとすれば、何か嫌な予感がした。

すーと開いた感覚。

うん・・・私今、ゆかたです。


「おーい、見えてんぞ」


「見んなボケーーーーーーーーーーっ!!」


完全にはだけた浴衣を慌てて掻きあわせて隠すが、完全に見られた。

うん・・一応浴衣の下には、下着はしっかりと身に着けていたが、下着はばっちり見られました。

どこのエロマンガだ。

恥ずかしさと腹立たしさで真っ赤になったが、苦笑を浮かべてこちらにやって来てくれる仲居さんに助けられながら、浴衣を直し、私は何とか服装を整える。

はい、もうどうでもいい。羞恥が怒りに変わるまで秒もかからない。


「あっちで、寝てろ!」


「酔い醒ましに風呂」


「溺れるからっ辞めろ!さっさと行けっ!」


「へーい、で指わ?」


「はえ?指?」


「指は突き指してねぇの?」


「ない。問題ないっ!」


「ほんとか?見せてみろよ・・・」


「酔っ払いに見せる指はない!さっさと寝ろこのアホ」


「お前なぁ・・いいから見せろよ」


さっきまで子供みたいに寝てた男と同じには見えない真剣な顔でそう迫られるとつい、私は差し出された手に自身の手を渡していた。

仲居さんが気を利かせて出て行く間に指の無事を確認したらしくそっと手を返された。


「指は大丈夫だろうけど・・足やったな?」


「やったってねー・・誰のせいよ、だれの」


情けなさがやってくる。

ほんと・・なんでこんなの好きになってんだろう。


「救急用品は、俺のバックに入ってる。氷はないが、確か備え付けの冷蔵庫にペットボトル入れてたよな。それで患部を冷やせばいいか」


既に手当の算段が付き始め、すっかり酔いの覚めたらしい男は動き出していた。

数分もしないうちに見事な手当が成された。

うん・・完璧だ。

テーピングもかなり念入りにつけられていて、ペットボトル3本に囲まれた自身の足が見える。


「お前・・・やっぱ足太いよな」


「死ね!!」


「だから手はだすなよっ!突き指したらどうすんだ!!」


「もうピアニストでもなんでもない」


そう叫びながら、グーパンでこいつの頭を狙うが、どうもうまく避けられる。


「バカっ!それでも大事にしろっ!!」


「余計な」


もう一度頭を狙った腕が、パシンッと受け止められてしまった。

コレが、男と女の差だろうか。

おもいっきり掴まれた腕は、あいつの手にある。


「ちょっ離せ!」


「いい加減痛いわっ!こっちが」


「痛くしてんのっ!」


「腕も手もお前の音が詰まってんだよっ」


大事にしろっと言って掴んだ腕をあいつは自身の口に持っていった。

そう・・・持っていたんですっよ!


そのまま・・濡れた感触が手首に走った瞬間私は腕から肩首・・・とにかく全身が熱くなった。





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