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取引はキス込みです。

さて、私の直談判が上手くいったのか?

えぇ、行きませんでした。・・・そうまさかの一泊34000円です。

自分の経済能力の無さを実感したのは久しぶりだし大学生は、貧乏なものだという常識をあの男に言いつのってやりたい。

さすがは教授の紹介ですよね。紹介ならいくらなのか聞いてみたい気もするがちょっと怖い気もする。

それによってはあいつにいくらかお金を返した方がと懐を確認するぐらいにはこの旅館は立派なのだ。


「お前・・・なんちゅう顔してんだよ」


「どんな顔よ・・・っていうか、自分だけズルい。」


湯上りさっぱり男めっ。

私はもうライフゲージがゼロだぞ、命の洗濯は今こそ必要であると声を大にしてやる。

すっぴんで許されるのは、20代まででよろしく。

一度シャワーを浴びた後とはいえ、流石に私も温泉に入りたいのだ。


「いや、お前が勝手に出ていったんだぞ?それよりお前も入って来いよ、やっぱ結構いい感じだし」


「そうでしょうとも。一泊34000円だものね。」


「そうなの?・・俺教授からの紹介だから正規値段よりマジに安くされてるんだ・・」


どこかぼんやりとそう応える好敵手に私は呆れた。普通紹介とはいえ行く旅館の値段ぐらい調べるのが普通だろうにと・・・さすがは御坊ちゃまだ。

とにかく今は、お風呂で考えようと準備していた着替えと浴衣を持った私は、いち早く湯殿へ走ったのだった。


結局大きな湯殿は最高で・・とにかく素晴らしかった。

ヒノキ湯船は香り高くかけ流しの温泉は白で・・・とにかく最高だ。なによりも少しアルカリ性らしく湯殿がにごっこているのがまたいい。しばらくするとお肌がすべすべになっていたりと・・・、もう大満足です。

全部が全部よくなっちゃいそうになるくらい気持ちいいのだ。ズルいなぁ。

でもこれとそれとは別なのです。


ーーーー


「う・・うま」


「んーーーーーーまぁ」


口に広がる上品な出汁の香。ほろりとくずれる白魚の身。

うん・・・日本人でよかった。

いつもの3倍以上かけてお風呂に入った私の前には懐石料理が並んでいた。

なんていうか・・・やばい。

日本食の極みを見てしまったというぐらいに豪華だ。

34000円には含まれているのだろうがなんというかもう、最高です。


かつおだしの香りや新鮮な魚介の刺身にと豪華な食事が並ぶ中そっと嫌いなものを避けるアホが居た。

子供かお前は・・。無駄に綺麗なはし使いが余計苛立つ。


「いい加減にセリぐらい食べられるようになりなさいよ・・」


「マジで無理だから・・・こんな臭くて苦いのは食い物じゃない」


確か小学校の頃から嫌いだったなぁ。親子丼にのってるのを見て嫌そうにしながら避けていた記憶がよみがえった。

こんな所も幼馴染の弊害というべきか、子供っぽい所をギャップには感じない。


「この香りがおいしいのに」


とにかく勿体ないと避けられたセリは私が食べる事になった。

美味しい。高い鰹節はやはり香りもよく、セリがよりおいしい。 

日本人に生まれてよかったそう感激しながら、私はそう至福を味わった。

・・久しぶりに着た浴衣は濃い藍色で、日本人によく似合う。そう・・あいつにもだ。

自慢でもなんでもないが、私は、胸が・・・それなりにある。

うん。一般のひとに比べるとだ。

だからだろうか、あいつの視線が妙に胸にいってる気がするのは・・それとも私の自意識過剰なのか。

食事中にはあまり考えたくはないが、それでも、もしあいつが私を・・食べるという事になったら。

ヤバい。


うん・・ヤバいな。

食われるのはまずい。だってこのまま別れたら、もう絶対・・こいつと一緒に居られない。

そういう奴だし、元彼です。なんて死んでも言いたくない。


ならどうする?


もちろん!

私は、考えている。

こいつに食われない方法を。


「はいっ!どうぞ」


私が差し出したのは、うん。

もちろん!皆様大好きなこれ!黄金色の命の水・・・古代エジプト人が発明したお酒、その名も“ビール”。

そして現代ではなんとノンアルコールまである進化していくお酒。


「なぁ、なんでそんな楽しそうなんだ?」


「なにが?」


「いや、お前って分かりやすいなぁって」


「うるさいっ!んっちょんまっ」


いきなり引っ張られた瞬間、持っていたビールビンを守ろうとした時には既に遅かった。

温かい唇が私の額に触れたのは。


はい。まさかの再びのデコちゅー。

うん、それはそれは嬉しそうに笑いやがってむかつくを通りこして呆れるぞ?


「あんたねぇ~」


「飲んでもいいからキスして?」


「はい??」


何て言った?


「だからキスだよ」


どこがだよ。いやなにそのできないだろうという目は・・。

なめてんなぁ。この野郎。

・・・乙女の貞操と唇?

天秤になんてかけなくてもわかるだろう。


「いいけど・・・キス一回につきビール一杯」


「はぁ?」


「いいよね」


否定なんてさせない。女は度胸ですよ。

別に唇って言われてないし・・・デコチューにはデコチューだ。


そうだ。


「取引成立ね?」

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