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大道と書いて・・なんと。

お久しぶりです。

12月に転職しました。

うん、忙しさに拍車をかける自分が信じられないのですが、とにかくもうそろそろ終わらせようと更新を進めます。

どうぞよろしくお願いします。

一般向けに解放された更衣室だったけど結構しっかりと管理されたロッカールームとシャワールームがあるそこは、今の私にとってとてつもなくありがたい場所だった。

タオルは多めに持ってきていたし、軽く汗を流すだけで、すっきりした。着替えはもしもの事も考えて2組多めに持ってきてたし、ただ一つ不満なのは、シャワールームには、ドライヤーがなかった事だけ。

髪は濡れたままで出て行くしかなかったが、それでも汗まみれの身体を綺麗に出来た事はとても嬉しかったのだ。


そうさっきまでは。


「お前ッバカじゃねえの!!」


更衣室から出た私を見た好敵手の最初の一言がそれだ。うん・・いきなり罵倒されるような事をした記憶がないのだから、ここは怒っていいわよね。


「ちょっ」


「髪ぐらい乾かして来い。しかもなんだよその服」


現在私が来ているのは、高校時代に買った男物のウェアだ。デザインがシンプルでしかも着やすいので好んで着ているものなのだが、ものすっごい怒った顔の目の前の男に私は戸惑うばかりだった。


「えっ・・私のだけど」


「はっ?それって男用のだぞ」


「うん・・デザインが気に入ってて・・でも女性向けのものがなかったからコレを買ったの」


「・・・ふーん・・ちょっとこっち向け」


後ろを向けと言われたので、それに従えばタオルが降って来て、そのまま髪が乱暴に拭かれた。


「ちょっ痛っいた・・ちょっとハゲるわっ!!」


「ハゲろよ。ほらちゃんと乾かせ・・・」


しばらくの攻防の末、やっと満足いったらしい好敵手が離れたくれた。癖毛の私になんて暴挙をするんだとあわてて体を離し髪を手櫛で整える。

なんとかなった私が顔を上げれば、何故か嬉しそうな顔の好敵手と目があった。

うん・・これはまずい。


「罰ゲームなににする?」


「ズルくない?だってそっちは趣味だけど私は久しぶりなんだけど」


そう言い訳をしてみても相手はどこ吹く風と視線を四方に飛ばしていた。

この男本当にムカつく。そう思いながら私は宿の方へと足を向けた。流石に疲れたから休みたかったのだ。


「どこ行くんだよ」


「どこって、ちょっと疲れたから宿で休みたいの。それにこのジャージじゃ外歩きには向かないし」


私にも流石に羞恥心はある。流石に観光地の真っただ中をジャージで歩く程乙女を捨ててはいないのだ。着て来たワンピースに一度着替えてから散策したいのだ。

そう伝えてれば目の前の男はどこか嫌な笑みを浮かべて私の手を握った。

固い手は私よりも幾分冷たい。


「ダーメ。お前はそのままな。ここの奥にさ池があるらしいんだ。そこでボート乗るぞ」


「ちょっと嫌だってばっ!!」


抵抗虚しくどんどん進んでいく男に引っ張られるままに私は池まで行く事になった。


ーー

きゅーごん。ポチャ。きゅーごん。ボチャン。


不思議な音をたてながらボートは進む。

ちょっとこれってどういうプレイなのよ。周囲には私たちと同じような・・うん語弊がありました。すみません。

可愛らしくいちゃつく男女が何人もボート遊びに夢中だ。互いが互いに自分達しか見えてないからかまぁ、まだマシなのだが。ついさっき見たボート管理の男性が私たちを見て固まったのを見ている身としては心がとても痛いものだ。

ですよね。ジャージで風呂上りな私たちがこんなボートに乗ろうっていうのが可笑しいんですよね。わかってますから、そんな顔で見ないでください。自覚済みです。


「もっとゆっくり漕いでよ。水が飛ぶから」


「いやだって、あっちに行きたいって言ったのお前だろ。後どっかのだれかさんが重いからゆっくりは無理」


「・・・」


このままボートから落とせないからしら。どうせシャワーで髪は濡れてるし落ちてもバレない

真剣に悩みながら、帰りのボートの漕ぎ手がいないのはつらいと思いとどまる。

さっきまでのテニスで痺れるような痛みが全身を襲うが、心地よい光と水と緑に疲れが癒されて行く気がする。


「なぁ・・あれってコイだよな」


「えっどこ?!」


水面近くには大きなコイの姿が映されていて、美しい模様を誇るように優雅に泳ぐ。


「ほらっ・・」


「すごっ・・綺麗・・・ってきゃっっ」


変な声が出たのはこいつのせいだ。耳にかかる息に慌てて逃げれば、思いっきりボートが揺れた。

その瞬間に抱き寄せられた。

温かいその感触に一瞬だけ固まった私は、バクバクと動く心臓を宥めるのに必死だ。

熱いっ・・・痛い。どこかからひゅーと口笛が聞こえた。

うん、どこの誰だ。池の水を飲ませてやるとイライラしながら、それでも今は動けないと揺れるボートが静まるのを待った。

数秒が10分ぐらいに感じたけどなんとか離れた私は、横で真っ赤になってる幼馴染を見る事が出来た。


「あんたねぇ・・ボートの片側に2人で寄ったらそりゃボートも傾くでしょうが」


「わりぃ・・でもお前が」


「うるさいっっていうかセクハラだからね」


なにテンプレートをしてるんだか。そう思いながら、やっとボートを進めた。

もちろん帰りは私が漕いでだ。うん・・・こうなりますよね。

従業員さんが目を真ん丸にして驚いていたのを私は必死で見ないようにした。









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