勝負再び
お久しぶりです。
ほんと身の回りが忙しいのと変化がありまくりでどうしてか・・こんな事に。
この物語も後少しです。
これからもよろしくお願いします。
ボーリングのピンが思いっきり音をたてててはじけ飛ぶ。
これで3回目のスペアだ。
「よっしゃーーーー」
「っ・・お前今日容赦ねぇな」
ライバルの言葉にVサインで応えてやる。デートって楽しいよね。
スコアは自己最高の140を超えた。そしてライバルは未だ120をギリギリというラインである。
勝利まであと6投。負けないかも。
「なぁ・・さっき見えたぞ」
「なにが?」
「・・・・ピンク」
さてと現在の私の服装をご説明しよう。
春らしいパステルカラーのブラウスは、淡いシトラスグリーン。それに合わせた濃いグリーンのドットのスカート。レースが縁どられたかなり姫系を目指したコーデだ。
しかもだ、今までやったことのない白いレースの髪飾り付きです・・・このコーデを考えたのは私の友人だ。
ボーイッシュ系や大人っぽい感じの服を選ぶことが多い私は、こんな服を持っていない。
昨日の大学帰りに大きなショッピングモールにて着せ替え人形になった代償だ。
スカートは買ってもらった。
お金がないと言った私に対する友人の仕返しだ。
後日その分はドーナッツとケーキを作って大学に持っていくことで埋め合わせとなるらしい。
さて・・正解は?
正解っ・・パンツです。
「どこ見てんの、変態なのっ!」
「はー?お前がそんなスカートで来るからだろうが・・見せられるこっちの気にもなれ」
「っ悪かったなっ!!」
持っていたボーリングのボールを投げなかった私、超偉い。
「なぁ・・賭けをしないか?」
それは突然の申し出だった。
賭け・・この圧倒的なまでの有利な状況でのらないなんて男じゃない、女が廃る。
「のるっ!」
「OK・・じゃ勝った方が負けた方に一つだけ命令できるってのどう?」
「命令・・・そのあんまりお金ないけど、私」
例えば金銭的な面での要求は難しいと先に手を打った。
「わかった・・」
「あっ後・・変なのは嫌だから」
「変なの?」
いや、言わないよ。いわせねぇよ。察しろ。エロい事はさせないからなっ!!
「いいからっ!じゃどうぞっ!」
20近くの点差だ。後6投あったところで・・・そう考えた私のバカ。
結果・・・は。
「うそでしょ・・148・・・159ってこんな事ってあるのっ!」
そう・・あれからの6投。いやあいつは8投だ。だってスペアの後にストライクが4連続って・・・何のいじめなの。
「実力」
「うそよっ!っていうかズルしたでしょ!!」
「実力だっての!ほらさっさと準備しろ」
既に精算ボタンをおしてしまった私の横には嬉しげに笑う男が居る。
私はこの幼馴染にまた負けたのだ。
そして・・・さっきから怖くて聞けない事がある。
命令ってなにっ!!恐怖です・・お母さん。
私と好敵手はそのままボーリング場を後にした。
ーーーー
私達のその後は、いつも通りだった。
あの後はゲーセンでガンシューティングとホッケーにリズムゲーム・・その後に本屋で互いに趣味の本を漁って。
そういつも通りでしたよ・・・。
ただ帰り道が問題なだけで。駅の近くというのはまぁ、そういうホテルが多いというのは、みなさんご存じですよね。いや表通りにはないよ。ただちょっと足を進めれば大人の人が必要なお店がいっぱいなだけ。
「あの・・その・・まさか・・」
「命令してもいいんだろう?」
いやーーーーーーこの最低変態野郎っ!
そう罵倒したいのを押さえたのは、何故って?そりゃこないだの友人たちの言葉が私を苦しめるからだ。
所詮男なのだ。・・・・こいつも。
目の前の看板には休憩とお泊りの二つの値段が書かれていて、カップルが入っていく。
あの・・、まだ夕方の7時ですよ、お兄さん、お姉さん。
回れ右をしたい。
「お前が欲しい」
耳があつい。つい視線を逸らし・・見つめる先には映画館の看板を見つけた。
「・・聞いてるか?」
「・・・う・・ん」
そうまっすぐに見つめる事・・30秒。
あいつが私を見て静かにため息を吐いたのはさらにその10秒後だった。
「映画・・見てぇの?」
「うんっ!」
満面の笑みで言った私をこいつがどんな目で見ていたかといえば・・・ちょっとだけ困ったようなそして少しだけ安心したような顔をしてたんだ。
あぁ、こいつもやっぱり不安だったんだ。
そうわかった。わかってしまうのだ・・やっぱり好敵手だ。
私とこいつは。
そうして二人でレイトショーのチケットを買うまで楽しくゲームセンターで遊びまくる事になった。
映画はホラー。最近流行りのパニックホラーでしかもちょっとお高い3Dだ。
内容は面白かったけど・・それよりも気になったのはずっと繋がれたままの手で・・最後の最後映画が終わった後に数十名しかいない其処で隠れてキスをしたとだけ言っておく。
ごめん・・。
そう言えないから、私はその気持ちを込めて。
ただ温かいキスをした。




