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お別れカウントダウン

おひさしぶりです。本当は、もっと早く更新するつもりでしたが、ちょっと色々とありすぎて、できませんでした。

本編が何故かラブコメチックです。どうしてかコメディ要素が薄いですが、お許しください。

次回、必ずやコメを増やします。


響く音・・その全てがあなたの心。

知ってるよ。


そんな風に弾くなよ・・・。

緩やかなリズムに隠れたこいつの心。

好きだって声で言われた方がまだマシなのに。


失敗したかも。

そう後悔しても遅い。


なら・・・指が音に合わせて新に動き出す。

即興だ。

音を重ねる。


アレンジで加えるコーラス。

驚きにこちらを見る好敵手に私は、どうだと笑ってやった。



「俺の好みじゃない」


「あっそう・・・じゃあこういうのどう?」


テンポを200にまで上げて音を代表的な特徴的なメロディーを重ねる。

アンダンテ・・ピアニッシモもフォルテに。フォルテをフォルテシモにして。

強弱を変える。

流れるように・・語るように。


アレンジを変更する。


「いいじゃん」


その言葉と共に・・アレンジから即興のワルツ合戦。

重ねるように・・・離れるように・・・2人の音で新たな「ジュ・トゥ・ヴ」を創る。

本来な5分程度の曲が10分・・・15分と流れて行く。

やはり技巧が好きなあいつのおかげでより難しく細やかなで繊細な曲になって行くのを私が支えてながら、奥ゆかしく・・柔らかに変えて行く。


あなたが欲しい・・欲しいの。

恋人でなく・・ライバルでいい・・お別れは嫌。

一緒にいて・・ずっと傍にいて・・・ずっと私だけのものになって・・・。


思いを全て音に指にのせる。

鍵盤を滑る間指先のタッチがいつもと違う。

こんな風に弾けるようになってたんだと、どこか不思議な感じがした。


いつの間にか、曲が止まった。

いや終わっていたのだ。


ガタンっという音で意識が鍵盤から離れた時。

視界いっぱいに好敵手が居た。


近いっ!!

慌てて逃げようとした私の頭が支えられ、唇を覆う暖かなソレを感じた。

ヤバい・・・逃げられなかった。


「う・・ん」


ヤダってば・・講義の意味で鍵盤を叩く。

数秒で離れた相手を睨めば、切なげな瞳をされた。

本当にしょうがない奴。


「っ・・・苦しいわ」


やっと離れたので、そう叫べば、色気ねぇと非難された。


「サティなんて弾けたんだ・・ちょっとびっくりだわ」


「3年前にリストをネットで聴きまっくてたら、偶然見つけて・・弾いただけ」


「・・・そうですか。」


マジムカツクよこの天才様めっ。イライラのままに一度部屋を見回せば、部屋ドアに張り付く数名と目があった。


気まず―――――――――っっていうか見られたぞっ。

そう理解した瞬間目の前の能天気男を思いっきり殴っていた。

反射だ。


ドカッ!!


「いってーーーーーーーーーーーーー」


防音でよかった思える声量で叫んだ好敵手に私は、無言で扉を指差した。

見ろ、お前が悪いぞという意味を込めて。


「てぇなあ・・・っておい。」


「TPO守れよ、このクズが」


口から出た罵倒と同時に扉が開いた。


「先輩・・・そんな人だったんですね」「梨桜先輩っついに付き合ったんですねっ!裏切りものーーー!」

「ここラブホじゃないですけどーーー」「りっりっちゃんちゅーーーしてた」「おい、きいてねぇんだけどっ孝之っ」「ちゅーーだ」「ダメだよ、大人をからかっちゃ」


片手の数以上の人数に見られた。

イライラしながら、元凶を睨めば、こっちは視線を遠くにして現実逃避してやがった。

苛立ちを込めてもう一度手を上げれば、周囲からの静止が入る。


「うるさーーーーーーーーい!練習に戻れバカ共がーーー」


キレた私の叫びが、防音効果抜群の部屋にとどろいた。


大騒ぎの最中、私を伺うように見つめる好敵手に思いっきりグーパンを決めたのはお約束である。

だって私悪くないもん。


その勢いに場の人間が慌てて止めに入るのは3秒後。

そのまま、男子たちには軽く叩くように、女子には軽く抓る教育的指導の時間があったのもまたお約束である。

変わらない日常。


さっきまでの紅の世界。

愛を囁く音は、全て幻に帰すように。



私の恋は、きっとこれでいい。私はもう二度と恋はしない。


それでいい。

さよならじゃなく、また会おう。


そう言葉に出来る日は、もうすぐ。

柔らかなキスは、きっとそのための願掛け。

キスだけは・・・。


あげるよ。

ニセモノの恋人さん。


だって2度目。


もう二度と泣かない。



後少し。


「先輩っ・・・もっとまじめに弾いて下さいよ」


「えっ?」


騒々しい喧噪の中そう、私達に注文してきたのは、件の剛くんだ。


「えーーー」


「久しぶりに聞かせてください・・・2台のためのピアノのソナタ」


彼の言葉に周囲の子供たちがみんなでそう強請ってくる。


「覚えてる?」


「第一までならなんとかなると思う終楽章は完璧覚えてない」


「だよね、それでいい?」


結局後輩に弱いのが私達だ。

第一はあいつ。私は第二だ、やってやろうじゃん。


いいぜという言葉に私は、もう一度ピアノの椅子を調節し、鍵盤に指を置く。


「じゃ、120でよろしく」


「は?もっと早く」


「ざけんなっ・・あんたの速さでやったら指攣るから・・120が限度」


「へいへい・・んじゃやるぞっ・・・・」


モーツアルトもびっくりのテンポで曲が始るまであと3秒。

さてカウントしましょう。









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