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桜なんて嫌いです。

お久しぶりです。そしてやっとここまで来たと言うべきですか。

シリアスになって行きますがどうぞよろしくお願いします。

風邪を引いて、ちょっとナイーブになった3月。

そして・・・また4月が来ました。


現在、桜の花が咲く小学校の裏手に私達は居た。

つい1年前にここで告白されて、私は見事にそれを無視した。

あれから1年だ。


「綺麗・・・」


桃色の風に包まれた私とこいつ。


「そうだな、なぁ、コレ全部食っていいの?」


「いいよ、ちゃんとお茶も持って来たんだから、ほら」


投げ渡したペットボトルを難なく掴んで、手にしたマフィンをもくもくと食べる姿は、とても二十歳には見えない。

私の手づくりだし、こいつの好みは把握済みだ。

花見に誘われた日には既にさくら色のマフィン(イチゴのジャム入り)を作っていた。

イチゴのジャムまで手製の自信作だ。


「さんきゅ・・お前のそういうとこ好きだわ」


笑みと共にそう言わて、わずかながらにドキリとした。


「そう・・・私ちょっとそこら辺歩いて来るから、・・・」


「なんだよ、せっかくの花見だぞ?」


「花より団子を体現中のあんたに言われたくない。・・・あっちの桜を見に行くから、食べ終わったら迎えに来て」


学校の裏庭にある遊具というには、少し無骨過ぎるジャングルジムに幼馴染が座る。

180を超える男が座ると、滑稽に見えた、昔は、こんなに小さなものだとは知らなかった。

学校裏の桜もなかなかに綺麗なのだが、やはり一番は、校庭と通学路を挟み咲き誇る樹齢50年の桜には敵わない。この間の事もあって気まずいし、二人っきりはちょっと辛いと思って私は、歩みを進めた。


それが、間違いだと知らずに。



私の通っていた小学校には、軽音部が存在した。

毎日朝と昼、放課後とそこに所属すれば、好きな楽器が学校から支給されたが、決して甘いものではなく、学校で一番厳しい音楽の先生が指導者として、子供たちを指揮する事で成り立っていた特別な軽音部だった。

学校行事の際には、必ず活躍する部でもあり、花形とも言われた。校歌は必ず彼等の演奏で歌われる。


他のクラブ活動とはまた違ったもので、中学の軽音学部と似たようなものだったが、それでも全校生徒の憧れの的だったと思う。


そして今の子供たちも熱心に練習をしているのか、まだ春休みであろう学校の校舎から、あまり上手いとは思えないが、可愛らしい音が響いてくる。


曲とは言えないのがなかなかに面白い。


『がんばってるなぁ・・・・あっ外した・・・おいおい誰だ、多分半音ズレてる子居る』


耳を澄ませてその音に意識を向けて目を瞑った。

そう数分はそうしてた。


『もうちょっと頑張れ・・・』


そう心で応援をしたその瞬間、私は、この世で最も聞きたくない声を聞いた。


「なにを黄昏てんの?りーおん」


「えっ・・・」


そう、私を「りーおん」と呼んだ声に目を開ける。

後ろから聞こえた。

確かに・・・砂利を踏む足音がする。


「久ぶりだな、なにしてんの?」


振り返りたくなかった。でも・・でもどうしても・・・。

なにかに負けた私が振りかえれば、見覚えのあるそれでもやはり月日の分大人になった・・・そんな人がいた。


「・・・せ」


「そう、先輩。で何してんの?」


「先輩・・・こそ」


言葉が詰まるのをなんとか抑える。


「俺?俺は、ここの臨時教諭だから」


「臨時教諭?」


「そう、俺の恩師がここの音楽教師だったんだけどね、ちょっと体調を崩されて、音大に通ってる俺に白羽の矢がたったの」


私の前になんでもないという風に笑う先輩がいる。

その現実にとてもじゃないが対処できずにいる、自分。


「お前こそこんなとこで何してんの?不審者だぞ、」


「わ・・私は・・そのお花見を」


「かわんないね、そういう所・・・そう言う事なら、昔馴染みだし見逃そうかな」


「はい・・」


「なんだよ、その反応の薄さ・・・もしかして俺の事忘れた?2年付き合ったのに」


何気なく言われたその言葉が心に突き刺さった。


「っ・・・ちょっと驚いて・・」


「だろうな、俺もびっくり・・・なんか大人になったな」


「それは、お互い様です・・・」


「だな、ちょっと痩せた?」


「女の子にそれ禁句ですよ」


「そうかな?・・・でもま、3年ぶりだし」


「3年?・・6年ぶりじゃなく」


先輩とは、5年いや、6年ぶりの再会の筈だ。それが何故3年なんて数字が出てくるのだろうか。


「ヴォンザードコンクールの会場で、お前が演奏してるの俺が見てたっていったら驚く?」


「・・・ヴォンザード・・・」


「お前が審査員賞を取って、でも表彰式にはでなかったコンクール。一応そのコンクールの最優秀賞だったんだけど、気づかなかった?」


3年前・・・高校2年か確か3年の始めだったと思う。

確かに私は、先生に頼まれてコンクールに3つ参加した。

私の通うピアノ教室は、特殊だったから大手のピアノ教室との実績の差を埋めるためにもとお願いされたから、参加してそれなりの評価をもらっていたと思う。


「すみません。」


「ほんと、急に出て来たダークホースがお前だったから・・・マジで、びっくりしてさ。表彰式で言おうと思ってたんだぞ、」


「えっ?」


「お前のお陰でピアノ始めたってさ。」


なんでもない事のように晴れやかに笑った先輩を桜が飾る。

まるで少女マンガのワンシーン見たいに、先輩の声がより強く耳に響く。


「・・・ピアノを?」


「そう、お前に憧れてさ。くだらない事でイジメられて、バカみたいな事で悩んでたお前に」


「なっ!」


あの頃は、本気で悩んで、本当に困ってたのに。

あんまりな言い様に抗議しようとした時、思いも掛けない言葉が、桜吹雪と共に流れた。


「結構・・・本気で憧れてた」


どういう意味ですか、先輩。








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