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恋は熱病といいますが。

お粥騒動がひと段落して、ご飯を作った私は、ぼんやりと目の前の好敵手を見つめていた。

なぜって・・そりゃあ幸せそうにオムライスをむさぼっているからだ。


そこまで好きか・・・。

デミグラスまで用意出来なったので、とにかく冷蔵庫から出されていた食材を細切れにしてケチャップでからめて、卵を上にのせたのだが、お気に召したらしい。

これで二杯目だが食べるペースは変わらない男はどこまでも変わらない私の幼馴染だ。


「うまかった・・さんきゅ」


そういいながら、笑うこの男に私は「おそまつさん」とそう返す。

お皿を流しに置いてから、そっとこちらをうかがい、その手を伸ばしてくる。

額に触れる手は冷たくてとても心地よい。


「ごめん・・・」


そうすまなそうに言うのも変わらない。


「なに?おいしかったならいいってば・・ほら、帰っていいよ」


そう出来るだけ早くこいつを帰らせて、私は平和な自室で休まないといけない。


「いやだ」


駄々っ子かっ!そう返したいのに・・情けない顔の男を見てたら、それが声にならなかった。


孝之(たかゆき)・・・?」


「お前が嫌なら部屋には入んない。でもさ・・ここには居させてよ」


「ちょ」


「お前が心配なの・・・いいだろう?」


こら、どこの子犬だ。

そんな情けない顔しても・・しても・・・。


「はぁ・・・わかったけど・・」


本気で嫌なら、こいつは帰ってくれる。

でも・・やっぱり、私はこれには敵わない。


「了解・・・辛い時は呼んで・・傍にいる」


基本優しいこいつは、ずっと女の子にモテてて、・・私以外にもたくさんの子にこの言葉を言ってきたのだろう。

きっとそうだ。

そばに居ないで、そう強がれない。

まだ、覚悟がない。


「あのねぇ」


「喘息の発作は」


「大丈夫」


断言はする。でももしも発作が起きたら一人じゃ怖いのも事実で、多分それを危惧してこいつはこんな風に言って私を困らせる。

本当に嫌だな、幼馴染って。

ぜーーんぶ知ってるから、強がりが通用しない。


「大丈夫って顔してねぇけどな、後でちょっと様子見たい、いい?」


「うん?まぁ・・・1時間くらいたったら、一回起きるから、好きに過ごして・・・」


「了解。部屋行く時はノックするから・・お休み」


頬に流れる髪が撫でられた。

優しい手も声も。恋人仕様なのだ。

こんな風にされて好きにならないのはおかしいのだろうか・・・二度とこんな事しない。


こんな恋愛はしない。

自室に戻ろうと踵を返して私を呼ぶ声に振り返る。


「おい・・・」


「うん?」


「いるから・・・心配すんなよ」


あぁ、どうしてかな。

初めて・・こいつが彼氏でよかったって思う。

ドキドキと鼓動がうるさくて、熱だけじゃない何かが私をおかしくする。


好きだとか、そんな事。


「うん・・いて」


「何甘えてんの?」


「・・まぁ・・彼女だし・・」


絶対言わない。言えないけど。


「そうだな・・・じゃあ・・これぐらいならいいよな」


「何が?・・・んんっ」


重なった唇。

オムライス味のキス・・まるで子供だ。


やわらかくて、冷たい。


「熱いな・・もう一回」


何がもう一回だとか、風邪がうつるとか言ってやりたいことがたくさんあるけど・・・。

全部全部・・・熱のせいにして。


「うん・・・」


「っ」


力強い腕に抱きしめられても・・・ただ私は受け入れた。


たった一人の・・・ライバル。


君が好きです。

















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