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本命は君です。

現在、ここはチョコガスが充満しております。お気を付けください。

現在2月13日 夜19時です。


本日朝の8時から開始された、チョコレート作り。

友チョコは、本気が必要です。

朝から生チョコ、トリュフ、ガナッシュ、フォンダンショコラ、ガートショコラ、パンナコッタ、チョコムース。


そして現在、最後にオペラのイメージのケーキをしっかりと仕上げた所だ。


「お・・・終わった。」


最後のしぼりをしっかり終えた後自宅の冷蔵庫を開ければ、どこぞのケーキ屋さん状態だ。

なんだろう・・・・19人分のチョコを用意する自分。

だけど本命はここにはない。


虚しい。


「さてと・・・あいつの作るか」


やっと本命に取り掛かるのだ。何を作ろう・・・本気で悩む。

現在手元には、バーターが180g、残ったパイ生地80g、チョコレートがホワイト50g ブラック120g、焼いてある一口タルト生地が4個。


ラインナップ半端ない。そしてこれから作るのか・・面倒過ぎて嫌なんだけど。

既にオーブンを使うのは嫌だからパイ生地は却下。元々甘いものを好まないあのバカにホワイトは無し。

タルトが一番楽だが、チョコレートタルトを作っても喜ばない。


悩んだ私が作ったのはなんでしょうか?


ーーーー

2月14日 夜20時です。



マンションの階段を上って、インターホンを押す。

数秒もせずに扉は開かれた。


「よっ・・・」


「よって・・・」


寒いっす。マジで。


「・・ご希望の本命です・・・受け取れ」


自宅までの配達サービスまでして、私は持って来たチョコレートを渡した。

中身はオレンジピールをチョコレートでコーティングしたシンプルなチョコだ。


「おう、さんきゅ」


照れてる・・・なんだ。この照れくささ。

こっちまでなんかふわふわしたような感じがして、慌てて持っていた箱を渡した。


「うんじゃ、私はこれで・・っ!!」


逃げろっと脱兎のごとくを目指した私の腕が掴まれたのは、その数瞬後だった。


「まてっ!!」


私は犬かっ!そうツッコミたいが、今はそんなことを言ってられない。

腕を突かれた勢いが強すぎたのだ。そのまま勢いのまま全身が包まれた。あったかい何かに。


「っちょ!」


「まてって・・・」


息が耳と髪に掛かる。なんと少女マンガっ!!思考が空回り中です。

後ろから抱きしめられたこんな状況、初めてだ。


「落ち着け」


そう言われても、こんな慣れない体制でしかもここは、玄関ですよ。とてもじゃないが冷静になれない。


「・・・離してっ!」


「っじゃあ、逃げんなっ!」


そう言われて始めて、私は自分が逃げようと必死になっている事に気づいた。そっと力をぬいて、息を二回吐いた。


「っ・・ごめん」


「おう・・、逃げんなよ、バーカ」


やっと、振り返ったらそう嬉しそうに笑う、好敵手が居た。今までそれこそ10は超える数のチョコをくれてやってるのに。


「・・・なんでそんな嬉しそうなの?」


今まで一度もそんな顔で受け取った事なかったじゃん。まるで適当に。サンキュの一言だけで・・・それでもちょっとだけ中身を気にしてただけだった。

でも今回は違うから・・だから、聞いてしまった。


「・・・お前ってさ、わかんねぇの?」


「なにが?」


「・・・このニブちんっ・・・はじめてもらったんだよ。お前から」


「は?」


いやそれこそ5歳くらいからバレンタインを渡してきた筈なのに、なにを言ってるんだろう?

この幼馴染は。


「本命は、はじめてなんだよ」


やばい・・・本気で。

首も耳も顔も熱いっ!本当に・・・誰だよ、こいつ。


「・・・えっと」


「さんきゅ・・・マジでうれしい」


そう、言われた後に、私の唇が温かいソレに包まれた。

やわらかい。

あつい。


本命なんて、渡さなければよかったとも思う。


好きが痛い。チョコに溶かした本音はきっとこいつに届かない。





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