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雪が降れば決戦です。

1月も終わりのその日、まさかの大雪が都心をおそった。

交通網を直撃した十数年振りの大雪にライフラインさえ危ぶまれたが何とか無事だった。


そして私はというと・・・。


「孝之・・・なんで居るの?」


都内某医大に通うこいつがなぜこんな時間にここにいる。

マンションのエントランス前で私がみたのは、雪にまみれてぐったりした幼馴染の姿だった。


「おふくろから頼まれて今まで雪かきしてたんだよ」


お、流石。目の前のマンション前の大きな道路もそして地下駐車場の入口もしっかり雪かき済みだ。


「やるな、お主。褒めてつかわそう・・・」


そう遠回しに礼を言って見る。孝之以外にも何人かの大人もそこらでまだ雪かきを続けていた。


「・・・ほかには?」


「うん?」


「褒美は?」


さて・・・なんだろうな。言われてから渡す褒美ってっさ。


「・・・」


「お前のためにやってやった」


ダウトッ!!そう言ってやりたかったがしょうがない。周囲にはまだ大人の目もあるし・・・私はエントランスで雪を落とし始めた好敵手の元へと向かった。


「ココア・・作ってやんよ」


「・・・それバレンタインの代わりとか言うならいらねぇよ」


おおお!こいつわかってるっ!!

私の計画は発動2秒で打破された。そうまだ2週間は余裕があるが私にとってバレンタインとは、もんのすごく面倒な行事の一つだ。

日本製菓会社の陰謀なのに・・・・。友人たちは私の料理の腕を知ってるからか毎年どうもリクエストが届きそれに従わないとお怒りのメールが来るのだ。


だから、手ごろな好敵手様には毎年のごとく女友達のおこぼれを渡していた。


「・・・っち!」


「お前なぁ、俺お前の」


バカっ!こんなとこで言わせるかと慌てて口を手で覆う。


「わかってるよ・・・その代り、家の冷蔵庫にあるクーベルチョコを勝手に食べるなよ」


製菓用のクーベルチョコは普通のチョコよりもお値段が高いが、その分艶出しの作業がいらないのだ。

とにかく私の友人は私をケーキ職人にしたいらしい。


「了解・・・楽しみにしてる」


本当に嬉しそうに笑うから、ついちょっと照れる。

そりゃあ胃袋はばっちり掴んでるしね、甘すぎないモノを選んで作ってあげてるし・・。


「はいはい・・・で今日大学は?」


「休校」


「はああああ!!ズルいっ!!」


私の大学は休校の連絡なんて掲示板にも出てないのに。

しかも絶対落とせない必須の科目があるから・・講義は出ないとならない。出席日数もしっかり単位に反映する教授なのだ。


「・・・俺が送っててやるか?」


「っ!!絶対いや」


まさか彼氏に送ってもらったなんて、絶対言えないしやらない。

私の友人たちはどうも、私をこいつとくっつけたいと思ってる人たちばかりなのだから。


「でも、まだ降るぞ?」


先ほどから頭上には雪の冠が出来る程雪は降っている。


「・・・・大丈夫よ」


「お前、歩きで駅まで行っても○○線は遅れてる、■●線は止まってるし・・何で行くんだよ」


「えっ・・・うそ」


そう言われてスマホで確認する。・・・終わった、終わりました。私の主要ラインが全て終わってます。・・・自主休校が今決まりました。


「もう・・・いいっす。」


がっくりと肩を落とした私にまるで憐れむよう肩をたたく・・・イライラが。

こうと決まったら、やるべきことは一つだ。


「孝之・・・ちょっと」


「何?」


歩き出した私の後に続く足音。

これが幼馴染の癖です。・・呼ばれたらついて行く。

足元には既に20センチ以上の雪。埋まったブーツの横の真っ白な雪を掴む。

冷たい・・・指が冷たいから痛いに変わる前に・・。


「孝之っ!くらええええええええええ」


全力で投げつけた雪玉があいつの肩と頭に命中したのは数瞬後。

その後20歳の私たちが雪まみれになって体力の底がつくまで雪合戦をしてたことを両親が聞きつけていい加減にしろと怒りにくるのは2時間後の事だ。





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