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不本意ですけど、好敵手

さて・・・・目の前が地獄絵図状態です。


成人式が終わって、午後5時から同じ小中学校の同窓会が開かれた某お座敷。

比較的低価格の店でよかったが、いくらなんでも酒で身を持ち崩し過ぎだお前らっ!!


きゃらきゃらとほほ笑む少女たち。

何故か3人でコーラス中のバカ3人男・・・しかも無意味にうまい。

既に寝落ちで7人が脱落・・・その内1人は吐き気でトイレだ。


おいおいおいおい・・・まともな奴が少なすぎる。

そして現在・・・・私は、事情聴取を受けていた。なぜだっ!!!


私の座席周囲3方向全てが友人?に囲まれています。


「で・・・どこまでいったの?」


「どこってここ居酒屋ですが?」


「ボケはいらん、もういい大人なんだから」


いい大人が下世話な猥談しかけてくんなとそう切れそうになるのをぐっとこらえる。

私の前にはウーロン茶が入ったコップのみだ・・さきほど食べたから揚げはおいしかったと現実逃避する。


「付き合ってんでしょ、有希に聞いた」


ネタはあがってんだ、さっさと吐けという意味だろう。ネタ元を睨めば思いっきり目線が逸らされました。


「そうですか・・・・・でいい加減わたし帰りたいなぁ」


下戸が酒場で楽しめると思うなよとイライラがとんでもないです。

遺伝でアルコールが摂取出来ない。レベル的に言うと梅酒の梅で体が真っ赤になるレベルの下戸だ。

そんな私が先ほど僅かに口にしたアルコールが乾杯のシャンパン。

先ほどから気持ち悪さがとまらない。

今日は朝から着物の着付けを受けて、成人式にも出席した。

とにかく体力が限界の中にアルコール・・・そしてこの無体な尋問。


限界でえーーーーーーーす。


「あのねぇ」


「いつからなの?ねぇ・・もしかして中学からとか言わないわよねえ」


横というより後ろからそう聞いてきたのは、遠い昔に私をトイレに何度も呼び出した少女だった子だ。

スラリと長い脚、綺麗に化粧したらしい姿はとても大人っぽく見えて、多分オシャレしたらしい薄手のワンピース。

女子力総動員っすね。


「違います。」


「そうよねぇ、あんた先輩と付き合ってたし」


そうさらりと言われてしまった・・・胸に走る痛みについ目の前のまだ残っていたシャンパンを喉に流し込んだのがいけなかった。

なんだろう、腹が熱い。


「そうそう、あの頃あんたって先輩べったりでさぁ・・マジ部活中にいちゃいちゃでさ」


「見てるこっちがうらやましかったよ」


「先輩もさ、ぜんぜんこっちに気を使ってくれなかったし。りーおんだっけ?」


「覚えてるー、梨桜の事そう呼んでたよねぇ」


痛いいたいいたい。それでもそれを一切表に出さずに、私は全てのみこんだ。


「わるかったわね」


「そーれーよーりー、やっと手に入れた男はどうなの?」


そう切り出した目の前の幼馴染に苛立つがそれを笑顔で牽制する。

 

「なんにも、普通」


「普通って・・・幼馴染なんだし大抵の事は済ましてんで」


「あっそれって新作よね、あんたこそ今の彼氏に貢がれてんの?」


目の前の少女の首にはブランドもののネックレス。


「ちがーーーう、これはお母さんからの成人式のお祝いでもらったのよ、彼氏とはこの間別れました・・・」


話を逸らそうとしても無駄らしい。


「やっぱりあんただって狙ってたんでしょう」


冷たい声が後ろからかけられる。


「いいわよねぇ、医大生とお付き合い・・・しかも幼馴染で親御さんとも仲がいいでしょう?ほんと幼馴染なんてズルいわよ」


そう言った少女に私は言い返そうとしたのに、それが出来なかった。

くらりと世界が回ったからだ・・・やばい。マジで・・・。

耳がまるでプールで水が入った見たいになってる、聞き取りづらい声がかけられ、ウーロン茶を渡された。

飲もうとした私の手は全く動かず、ウーロン茶をこぼした。

周囲が慌てて拭いてくれたけど、わずかに着ていたセーターが被害にあった。


冷たい感触はある。


「ごめん・・・・酔ったぽい」


そう言えばみんなが心配そうに私を見る。

座敷席だから、少しだけ休ませてと言って何とか、ふらふらと立ち上がる。

ダウンしている人間の集まる一角へと向かうと後ろから声がかかる。


「おい、りお?」


なんでこのタイミングで声をかける好敵手・・・今一番聞きたくなかった声。

来んな・・このバカ。

そう言いたかったけど・・・それも出来ず、肩にかかった大きな手を受け入れた。


「おい、お前自分で言っておいて・・・水飲める?」


心配気に見つめる目が近い。とてつもなく近い。


「むり・・・」


「お前って変な所で間が抜けてるなぁ・・」


うるさいよ、好敵手。

そのまま、私はそっと人の少ない場所へと連れて行かれた。

不本意ながら座椅子に全体重をあずける事になった私は、ぼんやりとしてると何故か、前にひざまずく彼氏様兼好敵手。


近いっす・・マジで。

半径1mに居ないでください。超怖いですよ、ほんとに。

現在お酒のせいで絶賛無防備中です。そして熱い・・体中がまるで発熱してるようになってるし息が苦しい。


「大丈夫か?」


「・・・たぶん・・・」


「吐き気は?ちょっと貸せよ」


左手の手首。橈骨の上の静脈で脈を計る姿は堂に入ってる。

ムカつく・・・酒のせいだと思うけど・・・このバカがかっこいいと思える自分が居た。


「いちゃついてんなーーーー」「見せつけちゃって」「きゃーー流石お医者さまっ」


野次馬がうざい。その中に感じる嫌な感じのある視線。


ヤバい・・・なぁ。

ちょっと泣きそう・・・。


なんでかな、不本意だ。











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