鐘をならすのはあなたです。
大みそかの夜。
メールが届いた、誰であろう好敵手さまからだ。
≪sub:今暇か?。 初詣行くか?≫
わぁお、随分と簡潔で分かりやすいお誘いでこと。
クリスマス事件からたった1週間ですが、何事もなかったようにしてくれたのが、嬉しいやら悔しいやら。
「どうする・・・」
ここでもし、寒いという理由で断れば私は、敵前逃亡をしたという事にならないだろうか?
12月31日、現在11時49分を指している時計とにらめっこ。
クリスマスデートでちょっとした失敗をしたおかげで逃げ腰の私に随分と挑発的です。
《sub:re:今暇か?。 寒いから・・近場でいい。公園の方なら行く》
内の近くの神社にならとそうメールを返して、1分後・・・。
ピーンポーン。
「早っ!!どんだけですか好敵手。はいはーい」
慌てて玄関に向かってみれば、既に母が扉を開けていてコートを来た好敵手が私を待っていた。
「梨桜、あんたたちお参りに行くの?」
「いや・・・」
「近場の所ですから、おばさん」
「そうなの?でも・・心配だから、お参りしたらできるだけ早く帰ってきなさい」
夜だからダメとはならないのが、幼馴染マジック。
「へーい・・・じゃあ」
「ちょっと梨桜、それじゃ寒いでしょ。はいこれ」
そう言って母がダウンのコートを渡してくれるので私は素直にそれを着て、ブーツに足を突っ込んだ。
「じゃあ、一緒に煩悩落としてきまーーーす。」
「おい・・・じゃあおばさん行ってきます。」
扉が閉まると外は、静寂の闇。
ヤバい、かもと自覚するまで20秒かかった。
ーーーーー
先を歩く好敵手を前に私は、あまりの寒さに息を手に吹きかけていた。
「無理・・・寒すぎ・・・・・」
「手袋は?」
「そんなも女々しいもの置いてきたわ」
「なんでそこを男らしくするんだよ、忘れただけだろ?」
アホという言葉とともに先を行く幼馴染に私はただ笑った。
「煩悩落とせよ、お医者さまっ!」
「は?」
「かわいい看護師さんに鼻の下伸ばすようなお医者さんに誰も命はあずけないって事」
「は?何時伸ばしたんだよ・・・ほら手」
何処の少女マンガな展開ですか、好敵手。
いや手をね出されてもね、無理っす・・・・恥ずかしいというか、素面かい。
「・・・・いえ大丈夫です」
無難に応えておいて、そのまま先に行く好敵手に私は、そっと息を吐いた。この間の《事故》をなかった事にしたいかったけど、なかなか難しいものだ。
「お前・・・かわいくねぇ」
可愛かったら病院を勧めるよ、好敵手殿。
「そうですね、・・あとかわいくない次いでにちょっと教えてほしいんだけど・・・」
「うん?」
「今日おばさんは?」
「夜勤・・・他の人の代わりだって・・父さん居るけど今仕事に追われてる」
「さすがっ仕事の鬼っ!!」
幼い頃から、仕事熱心な両親に挟まれてこいつはどれだけ寂しかっただろう。
結局、私がこいつの為に出来た事は少ない。
看護師のお母さんと仕事に夢中の父親。
幼馴染として、比較的仲が良く習い事も重なる事が多かったこの好敵手が私の家に預けられる事が多くなったのは小学生に上がってしばらく経ってからだった。
そして、この好敵手はどうも意地っ張りで見栄っ張りで寂しがり屋の子どもだった。
「今年は、風邪ひいてない?」
「お前と違って自分の体調管理はしっかり出来てる」
「・・・・ケンカなら買うよ?」
「うるさいっ!喘息持ちがっ!!」
「うわーーーーー医者としてどうなのそのセリフっ!!世の中の喘息持ちにケンカ売るなら私が代表として買ってやるっ」
「なんでお前が代表なんだよっ・・・去年は、サンキュ」
「きゃーーー、煩悩が消えると素直になっちゃうのか・・・どうしようちょっとかわいいかも」
「うるせぇ!!」
去年の今頃、私はこの幼馴染を看病していたりした。
あれ・・・もしかしてアレが原因でこんな事になったのだろうかと昨年の自分達を思い出しながら、月もないくらい道を二人で歩く。
くだらない言い合いをしながら。




