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勝つまでが勝負です。

あけました。

そしてまた放置。・・・どうか見捨てないでやってください。


「りお」


ぺつこーんっ!!

おおっいい音が鳴りますね、好敵手、流石に中身が詰まってます。

真っ白な思考の中手が勝手に動いて目の前の額をひっぱたいていました。


「いってーーーーーー」


「あっごめん・・・」


「お前っなっ!!マジかよ」


「大丈夫?」


手加減一切なく思いっきり叩いたなぁ、しかも無意識だよ。


「大丈夫なわけ・・・・ぜってー赤くなってる」


そういいながら車のライトを点けてミラーで確認している好敵手に私は、少しだけ安心したのだ。


「だからごめんってば・・・無意識だった」


「お前は無意識で殴るのかっ!」


「うん、」


「はぁーーーーーーーーー」


目の前でふかーーーいため息が吐かれたが気にしない。

だって今そんな状況ではないのだ。


「キッスが初めてじゃなくて悪かったね」


「お前幼稚園の時にしてただろ・・・俺と」


「そうねぇ・・・大樹や祐樹くんともね」


「・・・」


「カウントするのってどこから?」


幼稚園の頃にませガキたちの悪ふざけにのって、スミレ組では何かの勝負に勝つと頬にキスをしてあげるというのが流行した。

そしてその中で、もっとませた悪ガキたちが『キスは、唇にするのがすごい』のだと言って、そりゃあ大変だった。なぜって?男の子同士でもキスをするのだから。


若気のいたりでもかわいいものだよなぁ。たとえその頃の写真のほとんどがキスのシーンがあったとしても。


「・・・あのな」


「変な質問するあんたが悪い。キスぐらい20歳なら経験ない方が少ないわ」


「・・・まぁな」


さてと軽い黒歴史まで思い出したおかげでなんとかスイッチがOFFになったらしい好敵手に安心してそっと外を見ると、月明かりにが照らす海を見たくなった。

だが外は、真冬の海だ。


寒いだろうなぁと思いながらもそれでも気になるものは気になるから、ガチャリとドアを開ければ焦ったような声が掛けられた。


「おっおいっ!!」


「さむっ!!」


「当たり前だろう、しかもそんな薄着のくせに」


イブニングドレスが潮風に揺れ刺すような寒さが肌を襲うが、先ほどまでの雰囲気と空気をなかった事にするには丁度いいはずだ。


「冬の海なってロマンチックですなぁ~」


海浜の公園の駐車場は、その奥が海岸に直接つながっている。

車を降りて、歩き出せば少し高いヒールがコツリコツリと音を立てている。

時刻は9時前だ。それなりの時間でありながら、そこには何組もの恋人たちがこの寒い中に寄り添い合いながら愛を語らっていた。


馬鹿馬鹿しい。


そう冷静に思う自分もいるし、この静寂が支配し波音だけの中に一人という非日常を楽しんでもいる自分もいるのだから・・人間とは不思議だ。



「こらっ」


後ろからそう怒りながらもついて来る好敵手。


ふわりと香るのは潮の香り。

堤防の合間を抜けて、舗装されている場所を抜ければ、目の前に広がる海岸。奥に見える町の光と月明かりが波間に揺れて、確かにここは画になる。

ロマンチストなら選ぶだろう立地条件だ。


「月の光っていうよりもベートーヴェンの月光の方が合う感じよね」


そう言って月を見上げる。今夜は半月というには少し足りないがそれでも綺麗な月が恋人たちを照らしていた。


「待てって」


すぐ後ろから声が聞こえたから、振りかえればバサと勢いよくかぶせられた。

視界が真っ黒です、好敵手。

不意打ちかっ卑怯なっ!!頭を覆うそれを慌てて取り除くとそれが、今夜好敵手が着ていたコートだとわかる。

おうっジェントルっ!!


「風邪ひくだろう」


「きゃーーーーーっジェントル」


「うるせぇなっ!!」


「サンキュ」


ロマンチックな立地条件だろうが、結局はこんなだ。


どうしてだろう・・なんか痛い。

胸のどこかで誰かが泣いてる、思い出したくないのになぁ・・。

温かい手に掴まれた手が震えた。


それを見て慌てて離してくれるこのバカがあと少しで私の傍からいなくなる。


「ねぇ、たかゆき・・・」


「?」


「寒いから帰ろうっ」


「あ・・・あぁ」



好敵手が16年。


恋人が1年。


他人は?


さよならを言いたくない。好敵手の君が好きだよ・・たかゆき。

海と月のはざまでそう心で告げた。


センチメンタルを気取って見たが、1週間後、私は再びピンチを迎える事となる・・・。


新年とは波乱を意味するのだ。










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